言語と文化A
007-D-010

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
斉木 美知世 講師 4 通年 4

授業概要

言語と文化の関係は多様な観点から考察されてきました。伝統的な日本語研究においても、言語現象に対する説明の拠り所として「日本文化」、「日本人の思考法」、「日本人の国民性」などの概念が持ち出されることがあります。一方で、言語学の世界では、言語自体が思考に影響を与えているという考え方もあり、言語と思考あるいは文化との関係は、興味の尽きないテーマになっています。本授業では、文化・歴史・思考法・国民性などを反映していると言われることのある言語現象等を概観しつつ、言語文化論をめぐる諸問題を考察してゆきます。これにより、「言語」という概念の多面性、およびその反映とも言える研究分野の多様性、言語研究の広がりを実感していただければと思います。

到達目標

諸言語の言語現象等を概観することにより、受講生が、①それぞれの言語を今ある姿に育んできた文化や歴史に対する理解を深めること、②特に日本語および日本文化に関する基礎的知識を確認することを到達目標とします。

授業計画

1 ガイダンス(授業の概要、授業の進め方、一般的注意など)
2 言語と文化の関係① ~導入~
3 言語と文化の関係② ~芭蕉の句から考える~
4 言語と文化の関係③ ~『源氏物語』から考える~
5 「オノマトペ」をめぐって① ~導入~
6 「オノマトペ」をめぐって② ~《ピカピカ光る》は英語で何と言うか?~
7 日本語の語彙をめぐって① ~導入~
8 日本語の語彙をめぐって② ~日本語はどこから来たのか?~
9 日本語の語彙をめぐって③ ~日本語起源論の歴史~
10 英語の語彙をめぐって① ~導入~
11 英語の語彙をめぐって② ~英語はどこから来たのか?~
12 英語の語彙をめぐって③ ~言語と歴史~
13 英語の語彙をめぐって④ ~言語と社会~
14 第1学期総括
15 理解度の確認
16 「態」の表現をめぐって① ~導入~
17 「態」の表現をめぐって② ~コナン・ドイルの受動文~
18 「態」の表現をめぐって③ ~ニ受動とニヨッテ受動~
19 「態」の表現をめぐって④ ~関与受動と排除受動~
20 「複合動詞」をめぐって① ~導入~
21 「複合動詞」をめぐって② ~「君を咲き誇ろう」のどこが悪い?~
22 「複合動詞」をめぐって③ ~三島由紀夫、シェイクスピアなど~
23 「非対格性」をめぐって① ~導入~
24 「非対格性」をめぐって② ~日英語における結果構文~
25 「非対格性」をめぐって③ ~完了の助動詞「つ・ぬ」と「HAVE・BE」~
26 「非対格性」をめぐって④ ~言語と思考~
27 「敬語」をめぐって① ~導入
28 「敬語」をめぐって② ~言語と「国民性」~
29 第2学期総括
30 理解度の確認
上記の予定は、受講生の興味や授業の進捗状況に応じて変更する場合があります。

授業方法

基本的に講義形式で行ないますが、随時、リアクションペーパーを提出していただきます。教科書は使用せず、ハンドアウトや資料などを配布します。

準備学習

予習として、授業の内容に関わる問題を随時出題します。まずは先行研究に頼ることなく、自らの視点・発想で考えてみてください。授業中に提起する諸問題を主体的に考察するために必要な作業となります(約30分)。

成績評価の方法

第2学期(学年末試験):30%
レポート:30%
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):40%
レポート、学年末試験、平常点(出席状況、リアクションペーパーの内容等)をもとに成績評価をします。各項目に対するフィードバックの方法等も含め、詳しくは第1回目授業にて説明しますので、出来る限り出席してください。

参考文献

斉木美知世・鷲尾龍一『日本文法の系譜学 ―国語学史と日本語学史の接点』(開拓社 言語・文化選書32)第1版、開拓社2012年、ISBN=9784758925327
斉木美知世・鷲尾龍一『国語学史の近代と現代 ―研究史の空白を埋める試み』第1版、開拓社2014年、ISBN=9784758922043
その他、授業の進度に合わせて授業時に適宜紹介します。

その他

予備知識は前提としませんが、受講期間中は言語に関わる諸現象・諸問題に関心を向けてください。専攻を問わず、幅広い興味をもつ学生を歓迎します。