社会学(基礎教養科目)
主体・社会参加・技術からみる社会学―
007-D-027

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
柴田 邦臣 講師 4 通年 5

授業概要

 考えてみると、社会ほど不可視なものはないかもしれない。しかし「不可視」であることは、「不要」であることと同義ではない。社会関係への気づきをもってはじめて、私たちは自らの社会を読み解く出発点に立つことができる。おそらくこの授業の履修者で、社会学を専門的に学ぶという人はさほど多くないだろうだろう。共通科目であるこの授業は、まずは社会学の導入として設置されているものであるが、体系的な学びの土台よいうよりは、政治学やそのほかの学問において、社会学的まなざしを生かすための土壌と考えるべきだろう。
 このためこの授業では2つの工夫をおこなう。第一には社会学の基礎知識を学ぶのだが、それを教条的に扱うのではなく、知識そのものは絞り込んで、社会学的な見方・視角というものを中心的に扱いたい。そのため今年は、「主体」の能力を
専門用語はテキストなどで指摘するので、随時参考にしてほしい。次に社会学を、現代の生きる社会の中に再設置するために、極端だが典型的な例を・・・ややショッキングなものを含めて・・・積極的に取り入れていきたいと思う。それらの事例は主として高齢社会や福祉領域の社会的マイノリティや、情報技術に関するものが頻出するだろうが(なぜかは受講していただければすぐにわかるだろう)、基本的な理論や歴史的な経緯なども取り上げ、その共通構造を論じることで、自分たちの日常の関係性を相対化し、その意味を問い直していく術をめざしたい。その過程で、多様な私たちが多様な関係性を尊重して社会に参加していく術(すべ)を構想したいと考えている。

到達目標

社会学の基礎的な知識を身につけつつ、「社会学的な視座」を理解し、各自の専門性に活かすための土壌を育てることが目的である。

授業計画

1 イントロダクション(1):主体と社会のリアリティ
2 イントロダクション(2):主体と社会のリアリティ
3 中間考察1
4 現代日本の社会変化(1):「主体」の揺らぎ
5 現代日本の社会変化(2):超高齢社会の現実
6 現代日本の社会変化(3):テクノロジーの新展開
7 現代日本の社会変化(4):「合理的配慮」と「エンハンスメント」
8 中間考察2
9 社会における主体(1):誕生・生殖・家族の社会学
10 社会における主体(2):教育・雇用・社会化の社会学
11 社会における主体(3):高齢化・死の社会学
12 中間考察3
13 まとめ(1):生きる技法の社会学
14 まとめ(2):続・生きる技法の社会学
15 中間考察3
16 イントロダクション(3):社会と主体のリアリティ
17 イントロダクション(4):社会と主体のリアリティ
18 社会のリアリティ(1):過疎化する被災地から
19 社会のリアリティ(2):露呈する限界集落、地域格差、経済的格差
20 社会のリアリティ(3):過疎化・高齢化・人口減社会
21 中間考察4
22 主体と社会の歴史的経過(1):共同体から古代へ
23 主体と社会の歴史的経過(2):中世と科学
24 主体と社会の歴史的経過(3):近代社会
25 中間考察5
26 現代の主体と社会学(1):字幕メディアから
27 現代の主体と社会学(2):適正化される主体
28 現代の主体と社会学(3):規準社会を生きる
29 まとめ(3):社会参加の”技術”
30 最終考察
社会学の専門概念を30回で学習するのは不可能なので、内容はややダイジェストにならざるを得ない。その分、現代社会の最新の例をいくつも取り入れて、他の学問にはない社会学的な見方にこだわっていきたいと思う。取り上げる事例は日本の状況から、高齢化、障害者福祉、教育、情報化、テクノロジー、能力、インクルージョンといったキーワードが主となるだろうから、履修の際の参考にしてほしい。

授業方法

基本的なスタイルは教壇授業で、プロジェクタでデジタルな素材を提示しながら進めていく。主体的な学びを実践してもらうべく、あえてスライド配布やレジュメ配布はおこなわない。スライドの撮影も原則として認めない。各自で自分のスタイルに従って関心に沿ってノートなどをとってほしい。ただし、アクセシビリティ面の配慮を希望する受講生は、初回授業で申告いただければ全面的に対応する。

準備学習

専門用語や知識についてはダイジェストになってしまうので、テキスト・参考文献での予習復習を強くすすめる。できればテキストは手元に用意して学習に役立ててほしいと思う。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):30%(授業理解に基づいた思考力)
第2学期(学年末試験):30%(授業理解に基づいた思考力)
中間テスト:20%(授業理解に基づいた思考力)
小テスト:20%(授業理解に基づいた思考力)
社会学はテクニカル・タームにこだわる学問ではない。知識のみを問うだけでなく、社会学的な視角に基づいた柔軟な思考力を問いていきたいと思う。

教科書

柴田邦臣・吉田仁美・井上滋樹『字幕とメディアの新展開:多様な人々を包摂する福祉社会と共生のリテラシー』、青弓社2016

参考文献

早坂裕子, 天田城介, 広井良典『社会学のつばさ』、ミネルバ書房
柴田邦臣,吉田寛,服部哲,松本早野香『思い出をつなぐネットワーク:日本社会情報学会・災害情報支援チームの挑戦』、昭和堂

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。