生活と法
社会生活・個人生活と刑事法―
007-D-032

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
岩下 雅充 講師 2 第1学期 2

授業概要

 いわゆる裁判員制度に代表されるように、専門家でない市民が法(法律)に深く関与する場面は、現代社会において増している。
 もっとも、犯罪と刑罰に関する法(法律)すなわち刑事法は、裁判員裁判で被告人を裁くといった場面に限らず、日常の社会生活・個人生活においても、目に見えるかたちであれ見えないかたちであれ、絶えずはたらいている。
 また、これら刑事法の中には、変化のめまぐるしい現代社会においてあらたに形成されたものが多くあるのとともに、直面する問題の解決や社会の発展に十分に役立っていないものもある。
 この講義では、刑事法に関する基本のことがらを概観したうえで、現代社会において刑事法はどのようにあるべきなのかという問題意識のもとに、わたしたちの社会生活・個人生活に関する各種のテーマをとり上げて具体的に解説・検討する。

到達目標

 刑事法に関する基本の知識を確実に習得したうえで、社会生活・個人生活におけるさまざまな場面と刑事法との密接なかかわりを理解して、刑事法の意義やそのはたらき、あるいはそれらの限界を自分なりに説明できるようになる。さらに、とり上げたテーマに関連する知識をもとに、刑事法におけるもののとらえ方や議論の仕方を学ぶことによって、現代社会にふさわしい刑事法のあり方に関する自身の意見・態度が形成できるようになる。

授業計画

1 はじめに : 市民と法(法律)/民事法・行政法・刑事法といった法(法律)の領域/民事裁判と刑事裁判
2 犯罪と刑罰 : 日本における犯罪の情勢/犯罪と刑罰に関する法(法律)
3 刑事裁判の制度 : 刑事裁判の歴史/刑事手続のながれと刑事手続に関する法(法律)/現代社会と刑事裁判
4 刑事裁判における市民の参加(1) : 裁判員制度の概観
5 刑事裁判における市民の参加(2) : 裁判員裁判をめぐる課題
6 正しい刑事裁判の実現(1) : えん罪の事例/えん罪の原因
7 正しい刑事裁判の実現(2) : えん罪の防止に向けた対策/量刑のあり方
8 犯罪者の処遇 : 再犯の防止と社会復帰に向けたとり組み
9 医療と刑事法(1) : 生命の始期・終期と刑事法
10 医療と刑事法(2) : 医療事故に対する刑事責任の追及
11 子どもの逸脱行動と刑事法 : 少年非行の情勢と少年法の概要/少年事件の手続と非行少年の処遇
12 家族と刑事法 : 家族間暴力=児童虐待やDV(ドメスティック・バイオレンス)など
13 さまざまな場面ではたらく刑事法(1) : 交通事故と刑事法/ストーカーと刑事法
14 さまざまな場面ではたらく刑事法(2) : 規制薬物と刑事法/ギャンブルと刑事法
15 まとめ
 受講者の興味・関心に応じて、計画されている内容の一部を変更することがある。

授業方法

 授業は、原則として講義形式ですすめられる。レジュメや資料を配布して講義する。また、必要に応じて、PowerPointや各種の視聴覚教材も使用する予定である。

準備学習

 授業で配布されたレジュメや資料は、そのつどの指示にしたがって、事前に読んでおくこと。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):80%(詳細は第1回の授業で説明する。)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):20%(詳細は第1回の授業で説明する。)

教科書

 教科書は指定しない。

参考文献

 第1回の授業で紹介する。

その他

 難解さを極力避けた講義の実施につとめているとはいえ、しばしば法律学に固有の考え方を扱うことになるため、聴講する側には、適確に習得した知識をもとに多面的に評価・検討するという知的作業が求められる。そして、期末試験では、この知的作業の能力を試すような問題が出されるため、毎回の授業に出席して習熟することが必要となる。
 もっとも、刑事法にからんだ各種の問題に対する積極的な関心と、問題の解決に向けた刑事法のあるべき姿について考えたいという意欲があれば、受講の前提条件としては十分である。