南アジア世界
007-D-038

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
小嶋 常喜 講師 4 通年 5

授業概要

古代から現在までの南アジア世界の歴史を概観する。第1学期はインダス文明の誕生からナショナリズムの形成までを扱い、複合的社会とされる南アジア世界が歴史的にいかに形成されてきたかを検討する。とりわけ南アジア史の展開にとって重要な内在的諸問題を扱うとともに、隣接する地域世界との交渉の中で南アジアの政治・文化・社会が大きな影響を受けたという点にも着目する。第2学期はナショナリズムの形成から「IT大国」、「新興国」、「BRICs」などと称されてその経済成長が注目を浴びている現在までを扱う。とりわけインドとパキスタンが独立70周年を迎える今年は、植民地社会におけるナショナリズム形成、ポスト植民地社会が抱える諸問題に重点をおくとともに、近年存在感を増す南アジア系移民についても扱う。1・2学期を通じて、最近の南アジア史研究の動向にも注意を払いつつ、特殊な地域とされる南アジアの事例を歴史研究に関わる一般的な諸問題と結びつけながら講義を進めたい。またインド映画や南アジア各地の多様な食生活にも触れながら、南アジア世界の文化的側面についても掘り下げたい。

到達目標

歴史を学ぶことは現在をより良く理解することである。従って歴史的視点から現在の南アジア世界の諸問題を理解することが最も重要な目的である。また南アジア世界の諸問題を固有のものとはぜず、自らが生きる社会の諸問題とも比較・関連させながら理解することも学生諸君に求めたい。

授業計画

1 複合的社会としての南アジア~イントロダクション
2 南アジアの古代文明~インダス文明とその交易ネットワーク
3 「アーリヤ人」とは誰か?~ヴェーダ時代の社会
4 仏教の誕生と南アジア社会
5 仏教美術と金貨にあらわれる古代南アジアの東西交流
6 ヒンドゥー教の成立・拡大とその多様性
7 南アジアの「中世」~封建化か地域国家の形成か?
8 スーフィーと聖者廟~南アジアのイスラーム(1)
9 インド=イスラーム文化~南アジアのイスラーム(2)
10 インド洋海域世界~海からみた南アジア史
11 植民地支配と南アジアの「近代」
12 インド大反乱をめぐる諸問題
13 差異化と分類~植民地社会を記録する
14 文化の流用~チャイ・ヒングリッシュ・クリケット
15 第1学期のまとめ(レポート)
16 植民地エリートとナショナリズムの勃興~南アジアのナショナリズム(1)
17 第一次世界大戦と南アジア
18 M・K・ガンディーの思想と行動~南アジアのナショナリズム(2)
19 ヒンドゥーとムスリムの境界~南アジアのナショナリズム(3)
20 B・R・アンベードカルと不可触民解放運動
21 脱植民地化~独立運動の勝利か、権力移譲か?
22 冷戦と南アジアの国家建設~インドとパキスタン
23 国民国家と国民統合~インド人とは誰か?
24 赤い革命と緑の革命~南アジアのポストコロニアル(1)
25 国境紛争と民族紛争~南アジアのポストコロニアル(2)
26 歴史と記憶~南アジアのポストコロニアル(3)
27 衣食住からみる日印関係
28 移民からみた南アジア史(1)~植民地期まで
29 移民からみた南アジア史(2)~脱植民地化後
30 第2学期のまとめ(学年末試験)

授業方法

講義ごとにレジュメと史資料を配布し、インド映画やドキュメンタリーなどの映像資料を積極的に活用する。必要に応じて数回ミニ・レポートを課し、その場で提出してもらう。

準備学習

高校世界史の南アジアに関連する事項程度は把握しておくことが望ましい。

成績評価の方法

第2学期(学年末試験):50%(授業内容について論述試験)
レポート:20%(授業内容に関連した自主研究(1学期末))
小テスト:30%(その日の授業内容の理解度の確認)
小テストに関しては、年間を通じて数回実施する。
第1学期末のレポートについては、観点・基準・提出方法などを適切な時期に指示する。

参考文献

内藤雅雄・中村平治編『南アジアの歴史』、有斐閣2006年、ISBN=9784641122918