宗教の現在B
現代日本の宗教事情―
007-D-043

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
加藤 みち子 講師 4 通年 1

授業概要

現代日本の若い人に「宗教」についてどう思いますか、とたずねると、「やばい」「こわい」か「関係ない」という答えがかなり多いように思います。しかしその一方で、それと気づかないうちに宗教に「はまって」しまう人も多いようです。このように両極端に分かれてしまうのは宗教に対して無知であることにも原因があるように思います。この講義では、「宗教とは何か」ということについて、宗教学上の区分にとどめず、機能面から「信仰系」宗教と「文化・習俗系」宗教に分け、宗教が伝統的に果たしてきた役割と、現代社会においてなお「必要」とされる意味について考えていきます。
 具体的には、前期で、現代日本で多くの帰依者を持っている新宗教の特色を社会背景を踏まえて分析し、現代人が何を求めて「宗教」に出会うのかを考えていきます。 そして後期には、伝統宗教の特色を分析し、現代社会における、現代人の宗教的要求に対してどのような役割を果たしているかを考えます。以上の作業を通じで、われわれ日本人にとっての宗教とは何であったか、そして何でありうるかということを、具体的に考えていきたいと思います。

到達目標

①「宗教」とは何か、「宗教」と「カルト」の違いについて正しい理解をもつ。
② 現代日本社会の動向と、新宗教の提供するものの対応関係を理解する。
③ 日本の新・旧宗教の基本的特色を理解し、宗教が人間社会にどのような役割を果たしてきたか、また今後果たしうるかについて意見を持てるようになる。

授業計画

1 イントロダクションとガイダンス― 日本人はなぜ「宗教」がキライか?
2 「宗教」とは何か―「信仰」系宗教と「文化・習俗」系宗教
3 「カルト」と「宗教」を区別する(1)
4 「カルト」と「宗教」を区別する(2)
5 spirituarl,religious,religion―「宗教的なるもの」の諸相
6 「スピリチュアル」系のブーム―宗教とよばれない宗教の流行
7 新宗教と現代社会(1)―経済・社会の動向と新宗教流行の関係
8 新宗教と現代社会(2)―幕末・明治期成立の新宗教の特色
9 新宗教と現代社会(3)―日蓮・法華系新宗教の信者が膨大に存在する理由
10 新宗教と現代社会(4)―「病気治し」と宗教
11 新宗教と現代社会(5)―「世直し」と「終末論」
12 新宗教と現代社会(6)―自己啓発と自己変革を求めて
13 新宗教と現代社会(7)―社会参加する新宗教
14 新宗教と現代社会(8)―なぜキリスト教系新宗教は日本からは発生しないか?
15 「新宗教」の部のまとめと理解度の確認
レポートの書き方及び、公正な研究活動とするための資料の活用法について学ぶ
16 後期イントロダクション―日本における宗教併存は「寛大さ」なのか?
17 伝統宗教(1)自然崇拝?アニミズム?―八百万の神々とは何か?
18 伝統宗教(2)なぜ「オハライ」「オキヨメ」をするのか?―神道行事の意味するもの
19 伝統宗教(3)神道のスピリチュアリティ
20 伝統宗教(4)お釈迦様の誕生日はいつ?―グローバルにみた仏教
21 伝統宗教(5)なぜ日本のお坊さんは酒を飲むのか―戒律の意味と意義
22 伝統宗教(6)ターミナルケアと「看取り」の智慧―仏教の社会的役割
23 伝統宗教(7)仏教のスピリチュアリティ
24 伝統宗教(8)日本人はなぜ「墓参り」をするのか?
25 伝統宗教(9)家族倫理・社会倫理の根底にあるもの―儒教のスピリチュアリティ
26 伝統宗教(10)なぜ人の「たま」を神社でまつるのか?―ヒトガミ信仰をめぐって
27 伝統宗教(11)日本人キリスト教徒1%の壁‐日本文化とキリスト教
28 伝統宗教(12)韓国にはなぜキリスト教徒が多いのか?-東アジアのキリスト教
29 シンクレティズムとは何か―グローバルな視座から
30 理解度の確認・自主研究
ただし、講義の進み具合で順序や内容を変更することもあります。

授業方法

講義形式。毎回リアクションペーパーを課す。

準備学習

事前に次回のテーマについて、以下の点を考えておく(約60分)
① 自分と周囲の人々の「宗教」や「宗教行事」について観察しておく。
② 自分が「宗教」についてどのような考えをもっているか、整理しておく。
③ 「宗教」と現代社会・「宗教」と伝統文化について、疑問点を考えておく。
授業後には配布資料をよく読み、ノートに自分の考えを整理しておく。(約60分)

成績評価の方法

第2学期(学年末試験):40%(授業内容を理解しているかどうか。
論理的な思考・論述ができているかどうか。)
レポート:40%(授業内容を理解しているかどうか。論理的な思考・論述ができているかどうか。)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):20%(授業に積極的に参加しているかどうか。)
本講義では、授業内容をよく理解しているかどうか・授業に自分なりの興味をも積極的に参加しているかどうかにより評価を行う。レポートにはコメントを付けて返却し、試験後には回答を発表する。

教科書

教科書は特に使用しない。授業時に毎回レジュメを配布する。

参考文献

テーマが多岐にわたるので、講義内にて随時紹介する。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

主体的な興味を持った積極的な参加を希望する。