時間・空間・物質の科学
007-D-047

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
菅本 晶夫 講師 4 通年 3

授業概要

物理学の視点から、近代自然科学の画期的な発見をその発見者に寄り添いながら振り返り、その内容をなるだけ分かり易く解説する。画期的な発見として、基本的な力学、電磁気学、相対性理論、量子力学、統計力学及び発展的なゲージ理論、対称性の自発的破れを取り上げる。基本的な発見を感覚器官の働きの理解に適用する。すなわち聴覚、視覚、嗅覚を理解する。それらは神経伝達や脳の働きとも関係するので、化学や生理学の知識も必要となり、自然現象を理解するためには様々な分野が役割を果たすことを理解する。次に発展的な発見の適用例として、微視的世界の素粒子と巨視的世界の宇宙を概観する。これらの世界では最近相次いで新しい発見が得られたので、その幾つかを解説する。

到達目標

基本的な力学、電磁気学、相対性理論、量子力学、統計力学を充分に理解できなくとも、それらを聴覚、視覚、嗅覚等の感覚器官に適用するとその働きが理解できることが分かり、更に最近の素粒子や宇宙における新しい発見の概要が理解できれば、授業の目標に到達したことになる。

授業計画

1 ニュートンによる力学の発見。
2 力学を振動現象に適用する。
3 音とはなにか。
4 聴覚はいかにして音の高さを理解するか。
5 ファラデー他による電磁気学の発見。
6 光とはなにか。電波とはなにか。
7 視覚はいかにして色の違いを見分けるか。
8 視覚はいかにして物の形を見分けるか。
9 アインシュタインによる特殊相対性理論の発見。
10 アインシュタインによる一般相対性理論の発見とひも理論。
11 ハイゼンベルグによる量子力学の発見。
12 ボルツマンによる統計力学の発見。
13 嗅覚はいかにして化学物質を見分けるか。
14 神経はいかにして情報を伝達するか。
15 中間まとめ。
16 ヤン・ミルズと内山によるゲージ理論の発見。
17 ランダウと南部による対称性の自発的破れの発見。
18 素粒子物理の誕生:ローレンスによる加速器の発明と湯川による中間子論の提唱とその実験的検証。
19 中野・西島とゲルマンによる奇妙な粒子の分類則。
20 リーとヤンによる空間反転(パリティ)対称性の破れの予言とその実験的検証。
21 ゲルマンによる基本粒子(クォーク)の予言とその実験的検証。
22 素粒子の世界の標準的理解(標準模型)。
23 ビッグバンをもとにした宇宙膨張の標準的理解。
24 宇宙の年齢(138億年)と宇宙の温度(-270℃)はどのようにして測定するのか。
25 最近の素粒子の世界の発見(その1):小林・益川による物質と反物質の対称性(CP)の破れとその実験的検証。
26 最近の素粒子の世界の発見(その2):ニュートリノ振動の実験的検証。
27 最近の素粒子の世界の発見(その3):質量の起源に関わるヒッグス粒子の発見。
28 最近の宇宙の世界の発見(その1):宇宙背景輻射のゆらぎの観測と暗黒物質・暗黒エネルギー。
29 最近の宇宙の世界の発見(その2):ブラックホールの合体による重力波の観測。
30 総括。

授業方法

講義形式。

準備学習

復習を重視する。授業時間中に講義内容をノートに取って次回までにそのノートを復習し、講義内容を良く理解しておくこと。

成績評価の方法

レポート:70%(中間レポートの評価30%、最終レポートの評価40%。)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):30%(積極的に議論に参加することを歓迎する。)
中間レポートと最終レポートの課題は授業中に出すが難しくない。レポートの評価基準はいかに受講者の個性が表れているかである。平常点としてはクラスの議論に積極的に参加すると高い評価が得られる。