環境・エネルギーの化学
生命・環境・エネルギーの化学―
007-D-048

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
増田 万里 講師 4 通年 2

授業概要

2015年末にCOP21で合意・採択されたパリ協定は、各国が挑戦的なCO2の削減目標を掲げ、低炭素社会実現に向けた歴史的第一歩となった。言い換えると地球温暖化は既に我々が予測した以上に進んでおり予断を許さぬ状況にあることは個人レベルにおいても認識できるほどになっている。今後は、地球環境を維持しながら我々の生活、経済、利便性、安全性を確保すべく、個々の意識改革と科学技術革新・発展が望まれる。化学は物質の構造、物性(性質)、及び反応(変化)の三要素を研究する学問であるが、加えて自然(地球環境)とそこに棲息する生命を認識する学問であることが求められている。本講義では、第1学期で化学の基礎を、次に生体を構成する物質の化学について解説し、さらに生命現象を化学をベースに説明する。第2学期の授業では、環境、エネルギー、脱炭素社会に向けた代替エネルギーについてを第1学期で学んだ化学と生物学の視点から解説する。我々が地球という環境の中に他の生物と同様に「生かされている」ことを再認し、個々の地球環境を守る意識と行動が今必要とされていることを強調したい。

到達目標

まずは、環境問題及びその原因を化学と生物学の視点から理解できるようになり、環境維持のために何をすべきかを意識した生活のできる一個人となる。

授業計画

1 授業の紹介と進め方について、「何故、環境とエネルギーを学ぶために化学と生物がを学ぶのか?」
2 チェルノブイリと福島から我々が学ぶべきこと(放射性物質による環境汚染)
3 化学の基礎I:原子の構造、原子と元素、周期表
4 化学の基礎II:化学結合の説明(イオン結合、共有結合、配位結合、金属結合、水素結合)
5 化学の基礎III:化学式、示性式、構造式、電子式の違い
6 化学の基礎IV:酸と塩基及びpH
7 化学の基礎V:酸化と還元
8 蛋白質の化学I:蛋白質はアミノ酸のポリマー、アミノ酸の構造
9 蛋白質の化学II:蛋白質の高次構造
10 蛋白質の化学III:生体内での蛋白質の役割、蛋白質の異常に起因する疾病(狂牛病、鎌状赤血球貧血症)
11 核酸の化学I:DNAの構造
12 核酸の化学II:蛋白質の生合成、生命の設計図を読む
13 がん研究の動向と治療薬の現状:がん患者にベストマッチする治療を見つけるPrecision Medicineを目指して
14 第1学期まとめ
15 予備日
16 アル ゴア氏「不都合な真実」から学ぶ地球気候変動の現実
17 エコロジーの概念:生態系について、レイチェル カーソン「沈黙の春」
18 日本における公害問題(歴史、概要、環境改善):田中 正造:足尾銅山鉱毒問題に挑んだ環境保全運動先駆者
19 地球環境の化学I:オゾンホールはなぜできる? NASAのデータから今日のオゾン量を見てみよう!
20 地球環境の化学II:酸性雨(原因、解決策)、「晴れた日の酸性雨?」
21 地球環境の化学III:地球温暖化(原因、解決策)、私たちに今何ができるか?
22 地球環境の化学IV:砂漠化と森林破壊(私たちの使っている紙はどこの森林伐採からできたもの?)
23 化学物質の人体への影響I:環境ホルモン、ダイオキシン(ベトナム戦争枯葉作戦の傷跡)
24 化学物質の人体への影響II:環境ホルモン、有機スズ、ビスフェノールA、世代を超えた環境ホルモンの影響をスーパーメダカに学ぶ
25 化学物質の人体への影響III:石綿問題、石綿が体を蝕むメカニズム 石綿小体とは?
26 ゴミ・廃棄物問題(ダイオキシンの発生源)バイオプラスチックの現状:非食化を実現した日本の技術 稲わらのセルロースとカシューナッツの殻からプラスチックができる
27 新エネルギー:太陽光発電(太陽電池・ソーラータワー)、風力発電(風レンズ風車)、海洋温度差発電(ウエハラサイクル)、地熱発電の原理・普及状況・問題点
28 循環型環境社会と再生可能エネルギーへの転換に向けて
29 第2学期まとめ
30 予備日
希望者には環境問題のテーマを与え、授業の一部の時間を使って発表の機会を与える。科学発表や質問への対応の仕方を身につける機会として利用してもらいたい。

授業方法

講義形式。毎回資料を配布し、power pointで作成したスライドやアニメーションなどを使用し、資料の内容を説明する。出席をしなかった学生に、過去の授業の資料は配布しないことを原則とする。欠席の際は前もってメールで相談すること。病気の場合は考慮する。

準備学習

復習が必要な内容については授業中に伝える。基本的に予習よりは復習に重点をおく。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):30%(出席しているものが高得点をとれる試験内容にする)
第2学期(学年末試験):30%(出席しているものが高得点をとれる試験内容にする)
小テスト:10%
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):30%(毎回の授業の最後に簡単なクイズを配布し、その回答提出をもって出席とする。)
出席を点数化し、学期末・学年末試験とともに総合的に成績評価を行う。

参考文献

木下勉、小林秀明、浅賀宏昭『ZEROからの生命科学』改訂2版、南山堂2004
レイチェル カーソン『沈黙の春』62刷改版、新潮文庫2004
アル ゴア『不都合な真実』、ランダムハウス講談社2007

その他

出席を重視する。本講義では、高等学校では「化学」を履修しなかった学生にも理解でき、「化学」を身につけられよう努める。しかしながら、これは出席及び積極的な講義への参加、例えば復習、質問等があってはじめて可能になる。