心理学D
他者理解と人間関係の心理学―
007-D-053

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
濱村 良久 講師 4 通年 1

授業概要

この講義では、専門科目の基礎を広く浅く学ぶのではなく、「人間らしく生きていくための教養」としての心理学を目指します。授業の中で、主として日常生活における他者理解や人間関係についての学生の問題提起を取りあげながら、「心理学的なものの見方とは何か」を心理学専攻以外の学生にも理解してもらえるよう、講義を展開しようと思います。従って、紹介する研究も、心理学理論の歴史的発展よりも応用面を重視します。学生が授業において積極的に問題を提起してくれることを望みます。(勿論、心理学科の学生も大歓迎です)。

到達目標

他者理解と人間関係について、心理学的なものの見方、考え方ができるようになること。
人間として成長すること。

授業計画

1 心理学とは何か 簡単な心理学実験を織りまぜながら、「実験や調査によって心を考える」心理学的なものの考え方の世界を紹介します。授業の中で実際に簡単な実験をやり、小さな「発見」の体験をすることで、なぜ実験や調査が必要なのか、どうすれば「心」の実験ができるのかを考えます。また、授業で扱うテーマについてのアンケート、授業についての説明(形式・テスト・レポート・成績評価など)も行います。
2 外界の認知1 私たちは周囲の環境や人々をどのような目で見ているのでしょうか?
3 外界の認知2
4 学習理論1 生まれたばかりの赤ん坊は、さまざまな経験を積んで大人になります。では、その経験の正体とは何でしょう?経験を積むとどこが変わるのでしょう?なぜ変わるのでしょう?
5 学習理論2
6 個人差と人間関係1 性格とは何でしょうか?人間関係において、内気な人と社交的な人は学習理論から見てどう違うのでしょうか?
7 個人差と人間関係2
8 心理テスト1外界や他者の認知には個人差があります。これを調べると、性格テストを作ることができます。
9 心理テスト2心理テスト(質問紙法1、投影法1)の実習と自己分析。
10 他者理解とカウンセリング1 人の心を知ることはできるのでしょうか?でも、私たちは人の心の何を知りたいのでしょうか?なぜ人の心を知りたいのでしょうか?
11 他者理解とカウンセリング2 「君は俺のことを分かってくれる」と言われると嬉しいですね!どのように理解されたとき、人は自分が理解されたと感じるのでしょうか?
12 他者理解とカウンセリング3 (レポートの講評を兼ねて、最終回に回すかもしれません)内側からの理解と人間関係、聴き手の人間的成長の関係について考えます。
13 感情と人間関係1人間関係にとって笑顔はとても大切です。しかし、ネズミは笑いません。笑いはどこからやってきたのでしょうか?
14 感情と人間関係2私たちはなぜ、いつから、恐がるようになったのでしょう?私にも恐怖は克服できるのでしょうか?学習理論から恐怖の形成と克服について考えます。
15 予備日
16 学習と人間関係(ほめ、叱り)1 うまくほめ、うまく叱ることができれば人を動かすことができるかもしれません。学習理論からほめ方、叱り方、上手な人間関係について考えます。
17 学習と人間関係(ほめ、叱り)2
18 対人認知、魅力と恋愛1 恋愛も大切な人間関係です。
19 対人認知、魅力と恋愛2 進化心理学から魅力の男女差を考えます。
20 対人認知、魅力と恋愛3
21 説得と対人行動1 さまざまな説得技法と洗脳技法について紹介します。
22 説得と対人行動2
23 催眠と暗示 催眠技法とその応用について紹介します。
24 親和欲求と友情1 人はどういう時に友達を求めるのでしょうか?どんな友達を求めるのでしょうか?友達を避けるのはどういう時でしょうか?友達の多い少ない、友情の深い浅いはどこから来るのでしょうか?
25 親和欲求と友情2
26 怒りと攻撃欲求 なぜ人は人を傷つけるのでしょうか?攻撃の個人差はどこからくるのでしょうか?攻撃をするように、または抑えるようになれるのでしょうか?学習理論から考えてみます。
27 人間関係の病理1
28 人間関係の病理2
29 夏期レポートの講評および実験結果のフィードバック
30 授業のまとめ
心理学全体を見渡すために、まず認知と学習を取りあげ、人間関係のさまざまな問題につなげていこうと思います。他者理解と自己理解、他者の性格、感情、人間関係の欲求、恋愛、説得、学習(ほめること、叱ること)、人間関係の発達、集団、異常、カウンセリングなど、様々な面から「他者理解と人間関係」を見ていきます。しかし、上記の授業計画はあくまで計画であり、具体的なテーマは4月初めに履修者と相談して決めます。従って、具体的なトピックスは年毎に多少変わります(昨年度も授業計画とはだいぶ変わりました)。一年の終わりに、学生が他者理解と人間関係について自分なりの結論を出すことができれば、そして人間として成長できたと感じることができればベストだと思っています(これはあくまで私の願いなのですが…)。授業選択に際して分からないことがあれば、前年度履修者に相談するか、電子メール(hamamura@nda.ac.jp)で私に直接問い合わせてください。

授業方法

講義中心で行ないますが、できるだけ心理学実験や心理テスト実習も織りまぜていきます。毎回、出席調査を兼ねて質問・意見を書いてもらいます(問題提起のための10分間小レポート)。出された問題提起については次回の授業の冒頭に取りあげます。積極的に問題提起をしてくれることを望みます。質問・意見は上記の電子メールでも受け付けます。知識よりも、体験や自分で考えることを重視したいと思います。初めからあまり出席する気のない学生は、得るところが少ないと思うので、遠慮してください。レポート、テストの負担はやや重い方だと思います(心配な人は心理学D既修の上級生に相談してみて下さい)。

準備学習

次回までに、必ず授業の内容を復習すること(約30分)。

成績評価の方法

第2学期(学年末試験):75%(心理学の知識、論理性)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):5%(質問・意見の鋭さ、論理性)
夏期休暇時に実験レポートを課します。:20%(観察力、論理性)
夏期レポート未提出者は学年末試験の受験資格がありません。

教科書

教科書の代わりに、適宜プリントを配布しますが、その他の部分はしっかりノートを取って下さい。

参考文献

重野純『キーワードコレクション心理学 改訂版』改訂版、新曜社2012年、ISBN=9784788512900
個々の項目をもう少し詳しく知りたい人向けです。

その他

授業、レポート、テスト、その他についての質問は、電子メール(hamamura@nda.ac.jp)でいつでも受け付けます。学生のメールには必ず返事を出しますが、どの授業の質問か分からないことがよくあり、また迷惑メールと判別がつきにくいので、題名に必ず氏名と科目名(心理学D)を入れて下さい。携帯からのメールには返信文字数制限を記入し、パソコンメールからの受信拒否を設定している場合は一時的に解除してください。匿名のメールおよび添付ファイルはウィルス対策のため読まずに削除しますので、注意して下さい。私としては「とにかく人間が好きな人」がたくさん来てくれることを望みます。人間関係が苦手で克服したいと思っている人も大歓迎です。逆に、手っ取り早く多くの心理学的知識を得たい学生(この授業の情報量はやや少な目です)、友情・恋愛・他者理解・説得などの人間関係に興味がない学生(きっと飽きてしまうでしょう)や、基本的に他者を理解することには関心がないという学生(レポートがとても辛いと思います)は、他の先生の心理学を取るのを勧めます。他の先生の心理学もそれぞれに特徴があり、どれもとても面白いと思います。