刑法演習
刑法判例ゼミナール―
011-B-340

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
林 幹人 教授 4 3~4 通年 5

授業概要

比較的最近の重要判例を素材として、研究者教員と実務家教員がジョイントで担当し、当該判例の判断の対象となったのはどのような事案なのか、裁判所はどのような事実関係を重視して当該法的判断をしたのか、その判断の判例としての位置付け・射程距離・評価、学説・理論等の関係等を分析研究することによって、刑法理論とその実務における重要さについて理解を深め、実務的・理論的な法解釈の感覚を修得することを目的とする。

到達目標

判例の検討を通じて、刑法に関する理論、実務の基本を理解し、自分の見解を持ち、自分の言葉で説明できるようになる

授業計画

1 割当て
2 全体でやるもの 横領物の横領
最大判平成15・4・23刑集57巻4号467頁、判タ1134号183頁、判時1829号32頁
3 因果関係
(1)最決平成15・7・16刑集57巻7号950頁(高速道路侵入事件)、判タ1134号183頁、判時1837号159頁
(2)最決平成16・2・17刑集58巻2号169頁(患者不養生事件)、判タ1148号188頁、判時1854号158頁
(3)最決平成16・10・19刑集58巻7号645頁(高速道路上停止事件)、判タ1169号151頁、判時1879号150頁
(4)最決平成18・3・27刑集60巻3号382頁(トランクルーム事件)、判タ1209号98頁、判時1930号172頁
4 実行の着手時期(早すぎた結果の発生を含む)
(1)最決昭和40・3・9刑集19巻2号69頁、判タ175号150頁、判時407号63頁 
(2)最決昭和45・7・28刑集24巻7号585頁、判タ251号271頁、判時599号98頁 
(3)名古屋高判平成19・2・16判タ1247号342頁
(4)横浜地判昭和58・7・20判時1108号138頁
(5)最決平成16・3・22刑集58巻3号187頁、判タ1148号185頁、判時1856号158頁
5 正当防衛における侵害の急迫性
(1)最決昭和52・7・21刑集31巻4号747頁、判タ354号310頁、判時863号33頁
(2)最決平成20・5・20刑集62巻6号1786頁、判タ1283号71頁、判時2024号159頁
(3)東京高判平成21・10・8東京高裁判決時報60巻142頁、判タ1388号370頁
6 正当防衛と過剰防衛
(1)最判平成9・6・16刑集51巻5号435頁、判タ946号173頁、判時1607号140頁
(2)最決平成20・6・25刑集62巻6号1859頁、判タ1272号67頁、判時2009号149頁
(3)最決平成21・2・24刑集63巻2号1頁、判タ1290号135頁、判時2035号160頁
7 故意と違法性の錯誤
(1)最決平成18・2・27刑集60巻2号253頁、判タ1208号101頁、判時1929号124頁
(2)大阪高判平成21・1・20判タ1300号302頁
8 過失犯
(1)最決平成24・2・8刑集66巻4号200頁、判タ1373号90頁、判時2157号133頁(三菱自動車タイヤ脱落事件)
(2)最決平成22・10・26刑集64巻7号1419頁、判タ1340号96頁、判時2105号141頁(日航ニアミス事件)
★(1)と(2)はそれぞれ大部な事件なので、(2)は判例を紹介するだけで、ゼミの対象判例とはしない。
9 共犯の錯誤と共謀の射程
(1)最決昭和54・4・13刑集33巻3号179頁、判タ386号97頁、判時923号21頁
(2)最決平成17・7・4刑集59巻6号403頁、判タ1188号239頁、判時1906号174頁
(3)東京高判昭和60・9・30判タ620号214頁
(4)浦和地判平成3・3・22判タ771号263頁、判時1398号133頁
(5)東京地判平成7・10・9判タ922号292頁、判時1598号155頁
10 承継的共犯
(1)大阪高判昭和62・7・10判タ652号254頁、判時1261号132頁
(2)横浜地判昭和56・7・17判時1011号142頁
(3)最決平成24・11・6刑集66巻11号1281頁、判タ1389号109頁、判時2187号142頁
(4)大阪地判平成9・8・20判タ995号286頁
(5)その他、西田典之「承継的共犯」芝原編「刑法の基本判例」所収
11 暴行後の領得意思
(1)東京高判平成20・3・19判タ1274号342頁
(2)東京高判昭和48・3・26高刑集26巻1号85頁、判タ295号380頁、判時711号139頁
(3)札幌高判平成7・6・29判時1551号142頁
(4)東京高判昭和37・8・30判タ136号50頁
(5)東京高判昭和57・8・6高等裁判所刑事裁判速報集昭和57年339頁、判時1083号150頁
12 事後強盗における窃盗の機会
(1)最決平成14・2・14刑集56巻2号86頁、判タ1087号104頁、判時1778号159頁
(2)最決平成16・12・10刑集58巻9号1047頁、判タ1174号256頁、判時1887号156頁
(3)東京高判平成23・1・25高刑集60巻1号1頁、判時2161号143頁
(4)東京高判平成17・8・16判タ1194号289頁
(5)仙台高秋田支判昭和33・4・23高刑集11巻4号188頁、判タ83号60頁
(6)東京高判昭和27・6・26高裁刑事判決特報34号86頁,東京刑時報2巻9号222頁
(7)千葉地木更津支判昭和53・3・16判時903号109頁
(8)名古屋高判平成15・7・8高等裁判所刑事裁判速報集平成15年123頁、研修669号85頁
13 預金の引出しと財産犯の成否
(1)最決平成15・3・12刑集57巻3号322頁(誤振込み事件),金融法務事情1697号49頁
(2)東京高判平成17・12・15高等裁判所刑事裁判速報集平成17年235頁,東高刑時報56巻1~12号107頁(振り込め詐欺の出し子の事件)
(3)東京高判平成18・10・10東高刑時報57巻1~12号53頁(振り込め詐欺の出し子の事件)
(4)最決平成20・10・10民集62巻9号2361頁、判タ1285号65頁、判時2026号13頁(払戻し請求について権利濫用とする余地を認めた事件)
14 私文書偽造罪
(1)名義人の承諾
最決昭和56・4・8刑集35巻3号57頁、判タ442号124頁、判時1001号130頁
(2)通称の使用
最判昭和59・2・17刑集38巻3号336頁、判タ531号151頁、判時1120号138頁
(3)資格・肩書の冒用 
最決平成15・10・6刑集57巻9号987頁、判タ1138号78頁、判時1840号147頁
15 本演習のまとめ

授業方法

各回とも履修者に判例を割り当てる。担当者は、割り当てられた判例について、事案の概要、争点、判旨、学説との関係、判例としての位置付け・評価等を検討・研究してレジュメを作成して提出し、あらかじめ履修者全員に配布する。授業では、担当者がレジュメに基づき報告をし、全員でディスカッションをする。授業終了後、担当者は各自討論の結果も踏えて、まとめのレポートを植村宛に提出する。

準備学習

発表する場合はもとより、そうでない場合でも、授業で行う判例を読んで、その内容を検討し、自分なりの意見が述べられるように学修しておくこと

成績評価の方法

レポート:80%(発表の内容、特に、当該判例に対する理解度、関連する学説、判例に対する理解度、表現力その他の文章力等)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):20%(出席、授業における発表その他の参加度)
評価のポイントに記載した基準を総合して判定する。

教科書

教科書は特に指定しない。取り上げる上記判例については、教材として履修者全員にあらかじめ配付する。

参考文献

『判例刑法総論』、『判例刑法各論』、各第6版、有斐閣2013
西田典之・山口厚・佐伯仁志編『刑法判例百選1 ;総論』、『刑法判例百選2;各論』、各第6版、有斐閣2008
西田典之・山口厚・佐伯仁志編『刑法の争点』(新・法律学の争点シリーズ)、有斐閣2007
ジュリスト増刊 重要判例解説(各年度版)最高裁判所判例解説刑事篇(各年度版)法曹時報の調査官解説

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

基本的な事項をしっかりと理解するとの意欲を持って参加して欲しい。