特殊講義(国際経済法)
011-B-290

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
平見 健太 講師 4 1~4 通年 4

授業概要

 昨今、TPPや日EU・EPA等の条約交渉経過または発効の可否が新聞・テレビで話題になることが多く、そこでは、条約によって実現される関税撤廃等の貿易の自由化、投資の自由化(あるいは投資の増加に伴う投資紛争の発生)等が日本経済や社会に及ぼす影響について活発に議論されています。また、以上のような経済的・社会的インパクトの大きい条約の成立に伴い、日本国内の既存の法制度の是非や法改正の必要性等が、法的・政治的議論の俎上に載ることも少なくありません。
 本講義のテーマとなる「国際経済法」とは、国際経済問題を規律対象とする国際法ルールの総称であり、発効の危ぶまれるTPPや、各種のFTA/EPAあるいはWTO協定などの経済条約はこの種のルールの典型です。そして上述の議論状況から理解されるように、これらの条約は一義的には国家間の権利義務関係を設定するものでありながらも、国内における我々個人の社会生活にも多大な影響を及ぼすことになるため、その内容を正しく理解しておくことは益々重要となっています。
 本講義では、「国際経済法」を通商・投資・金融の3分野に区分し、特に通商と投資分野のルールに焦点を当てます。それぞれの分野毎に、①社会が直面している問題は何か(法的規律の必要性)、②その問題に対して法がどのように対処しようとしているのか(法的規律の内容)、③法の実効性如何、を検討することを通じて、国際社会あるいは国内社会における国際経済法の機能と意義を理解することを目的とします。
 
 なお、本講義担当者はWTOでの国際紛争処理(国際裁判)に携わった経験があることから、本講義では法の理論的側面だけでなく、現場での法実務経験や各国の実務担当者の認識等も適宜紹介します。

到達目標

 国際経済法の基礎知識を習得するとともに、それが現実の社会でいかに有効に機能しているか、もしくは機能していないかを評価できるようになる。また、ここで修得した知識に基づいて、関連報道等の内容の妥当性を法的視点から評価できるようになる。

授業計画

1 イントロダクション(授業の目的・進め方など)
2 国際社会における法
3 国際法における国際経済法の位置づけ
4 国際法と国内法の関係
5 国際経済法の概要(1):国際経済法と国際取引法の異同
6 国際経済法の概要(2):主要な規律原理
7 通商に関する国際法(1):WTOとは何か
8 通商に関する国際法(2):貿易の自由化とその維持(関税障壁)
9 通商に関する国際法(3):貿易の自由化とその維持(非関税障壁)
10 通商に関する国際法(4):最恵国待遇
11 通商に関する国際法(5):内国民待遇
12 通商に関する国際法(6):通商救済制度
13 通商に関する国際法(7):例外規定(1)
14 通商に関する国際法(8):例外規定(2)
15 通商に関する国際法(9):WTO紛争処理制度の概要
16 通商に関する国際法(10):WTO紛争処理制度の実際
17 通商に関する国際法(11):まとめ
18 投資に関する国際法(1):ルールの背景(1)
19 投資に関する国際法(2):ルールの背景(2)
20 投資に関する国際法(3):最恵国待遇
21 投資に関する国際法(4):内国民待遇
22 投資に関する国際法(5):公正衡平待遇
23 投資に関する国際法(6):投資仲裁の概要
24 投資に関する国際法(7):投資仲裁の実際
25 投資に関する国際法(8):まとめ
26 FTA/EPAの拡大(1):歴史的経緯と現在の状況
27 FTA/EPAの拡大(2):日本の取り組み
28 金融に関する国際法(1):ルールの背景
29 金融に関する国際法(2):国際法による規律の限界
30 理解度の確認
受講者と相談の結果、授業計画を変更する可能性がある

授業方法

配布レジュメ・資料に基づいて講義形式の授業を行います。

準備学習

授業の復習として、レジュメと教科書の該当箇所を合わせて読んで下さい(約30分)。

成績評価の方法

第2学期(学年末試験):70%(論述形式)
レポート:30%(第1学期に1回、第2学期に1回。)

教科書

中川淳司ほか『国際経済法』第2版、有斐閣2012年、ISBN=9784641046573
小寺彰ほか『基本経済条約集』第2版、有斐閣2014年、ISBN=9784641001459

参考文献

経済産業省通商政策局(編)『不公正貿易報告書
毎年発行、経産省HPからPDF版をDL可
(2016年版:http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004532/2016_houkoku.html)

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。