特殊講義(メディアリテラシーⅡ)
脱真実時代の知との関わり―
012-B-823

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
塚越 健司 講師 2 1~4 第2学期 3

授業概要

情報社会化の著しい進展に伴い、我々の生活を取り巻く環境も同様の変化が生じている。
我々の現状の社会はどのようなものか。
①マクロな視点で見れば、情報にかかわる「真実」を担保する旧来メディアの権威が失墜し、同時にインターネットをはじめとした新しい「価値」を標榜するメディアも増加した。それらの相反するメディア内の進展は、残念なことに2016年の米大統領選に「偽ニュース」の拡大という事態を生じさせた。これらの事態は、ネットに触れる人々の理性の劣化を意味するのではなく、人々が知識に接触する「環境」の変化が大きな要因として存在している。
②ミクロな視点で見れば、「再帰的近代化」故に人々の人生設計と目的設定が困難になり、若者は他人の顔色を伺う機会が増えた。代表的な例として、SNSにおける炎上や意図せざる個人情報の流出、さらには他者への不信感から人々の「信頼」に関わる意識の変化が挙げられるだろう。
 
■授業の目的
本来の情報社会化は、このような事態を目指していたわけではない。なぜ我々は情報に踊らされてしまうのか。またなぜ情報化が人々の絆の構築を困難にするのか。そこで本授業は以下を目的とする。
①近代化と情報社会の構造理解。
②情報社会がもたらしたメリット・デメリットを具体例を交えて考察する。
③情報社会における最新情報や、インターネットをはじめとした情報社会と近代社会の関係を、哲学、社会学の古典から学ぶ。
④最後に、情報社会との付き合い方を、公共性や個人の振る舞いとの関係から検討する。

到達目標

われわれが生きている近代社会と情報社会の構造を理解し、情報に振り回されずに社会をより複合的な観点から考察可能になること。とりわけSNSが現代人に与える影響を理解することで、SNSで生じる炎上や、嘘情報などに対する適切な分析力を身につける。

授業計画

1 ガイダンス(情報社会とは何か)
2 情報社会の権力構造
3 再帰的近代化とは
4 近代化とメディア
5 フェイクニュースとフィルターバブル。Post Truth(脱真実)とは何か?
6 仮想現実(VR)とメディア
7 拡張現実(AR)とメディア
8 中間テスト
9 ハッカーの歴史とその活動1(カウンター・カルチャーと政治的ハッキング)
10 ハッカーの歴史とその活動2(ウィキリークスとハクティビズム)
11 人工知能とその発展1(人工知能の歴史と最新技術)
12 人工知能とその発展2(未来の人工知能と人間の関係)
13 人間の理性と感情の関係について(行動経済学の視点から現在のメディア・リテラシーを捉える)
14 理解度の確認
15 到達度確認

授業方法

講義形式。学生に質問等をしたり、問題に対して学生同士で話し合ってもらう時間を設けることもあります。

準備学習

・講義ではTwitterやFacebookといったSNSで生じる現象について扱います。利用している学生も多いと思われますが、利用していない学生はそれらがどのようなツールであるか、実際に利用しなくてもいいので、ウェブサイトなどで上記SNSの特徴や用語(Twitterであれば「RT」など)を理解してきてください(1時間程度あれば理解できます)。

成績評価の方法

第2学期(学年末試験):60%(講義内容の理解だけでなく、学生自身の論理的な記述と主張がなされているかどうか)
中間テスト:30%(講義内容を理解しているかどうか)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):10%(毎回ではないが、ランダムで取る出席点)
・中間テストおよび学年末試験の比重が重いが、数回に一回取る出席点も平常点として換算する。
・毎回プリントを配布するので、講義に出席しないとテストが難しくなるので、なるべく出席することを求める。
・出席点はランダムで行うリアクションペーパーへの記入とする。ペーパーに書かれた感想や質問に対しては、次回の講義冒頭で回答することで講義のフィードバックとする。

教科書

講義全体としての教科書は挙げないが、毎回配布するプリントで随時紹介する。興味を持ったらぜひ読んでもらいたい。

参考文献

講義全体としての参考文献は挙げないが、毎回配布するプリントで随時紹介する。興味を持ったらぜひ読んでもらいたい。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

講義は1回で完結するものも多いですが、内容は他の回にも密接な関係を持ちます。講義を休んだり聞いていなかったりするとわからなくなるので、なるべく毎回出席することが好ましいです。また質問などがあれば積極的に行ってください。重要なものは講義で解説するなど、積極的にフィードバックを行います。
教員メールアドレス:
kenjitsukagoshi32@gmail.com