美術史講義
ティツィアーノ―
031-A-233

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
高橋 朋子 講師 4 2~4 通年 3

授業概要

本年度は16世紀のヴェネツィアの絵画を、ティツィアーノを中心にして考察します。ティツィアーノはまさにヴェネツィアの16世紀を体現した画家であり、その名声はヴェネツィアのみにとどまらず、パトロンはイタリア諸侯、ドイツ皇帝、フランス王、教皇など当時の権力者達でありました。しかしながらティツィアーノの成功は、多くの芸術家達の激しい対抗心を掻き立てることになりました。つまりティツィアーノの作品を詳細に検討することは、16世紀のイタリア絵画状況をあぶり出すことでもあります。とりわけフィレンツェやローマで活躍し、名声を得ていたミケランジェロとの関係は興味深く、したがってティツィアーノとミケランジェロの確執という視点が、この講座のもう一方の柱となります。

到達目標

16世紀のヴェネツィア派絵画の特徴をティツィアーノを通して理解すること、さらにヴェネツィア派の理解を通じて、中央イタリア(フィレンツェ、ローマ)の美術の特徴をも理解することをを目標とします。また作品解説を通じて、16世紀前半のイタリアの社会状況(諸侯、神聖ローマ皇帝、フランス王、教皇)を、ティツィアーノとの関わりから検討し、理解することを目標に加えます。

授業計画

1 導入、参考文献の解説とヴェネツィアの伝統
2 ヴェネツィアにおける初期ルネサンス様式の摂摂取
  ジョヴァンニ・ベリーニ
3 16世紀初頭の北イタリアの美術状況
  古代の摂取
4 美術論争と画家 「絵画」と「彫刻」のパラゴーネ(1)
5 16世紀初頭の北イタリアの美術状況
  「絵画」と「彫刻」のパラゴーネ論争(2)
6 ヴェネツィアにおけるマニエラ・モデルナ
 ジョルジョーネとレオナルド・ダ・ヴィンチ
7 若きティツィアーノとジョルジョーネ
8 ティツィアーノとパドヴァのスクオーラ・デル・サントでの装飾
9 ティツィアーノ作 ≪聖愛と俗愛≫
10 ティツィアーノとミケランジェロとセバスティアーノ・デル・ピオンボ
11 ローマでのミケランジェロとラファエッロとセバスティアーノ・デル・ピオンボ
12 ティツィアーノ・ラファエッロ・ミケランジェロ
13 イザベラ・デステの肖像画
14 理解度の確認
15 予備日
16 ティツィアーノとフェッラーラの宮廷(1)
17 ティツィアーノとフェッラーラの宮廷(2)
18 ミケランジェロとフェッラーラの宮廷
 ミケランジェロの≪ウェヌス≫
19 ティツィアーノ作≪カール5世の肖像画≫
20 ティツィアーノ
≪フランチェスコ・マリア・デッラ・ローヴェレの肖像画≫
21 ティツィアーノ
≪ウルビーノのウェヌス≫(1)
22 ティツィアーノ
≪ウルビーノのウェヌス≫(2)
23 ティツィアーノ
≪教皇パウルス3世の肖像画≫(1)
24 ティツィアーノ
≪教皇パウルス3世の肖像画≫(2)
25 ティツィアーノ
≪ダナエ≫
26 ティツィアーノ
≪アレティーノの肖像画≫
27 アウグスブルグでのカール5世とティツィアーノ
28 ティツィアーノが描いたその他のウェヌス(1)
29 ティツィアーノとフェリペ2世
ポエジエをめぐって
30 理解度の確認
 前半では16世紀初頭の若きティツィアーノを取り上げ、彼がいかにして名声を築いていったかを、後半では円熟したティツィアーの作品の意味を読み解きながら、ミケランジェロとの確執にも検討を加えます。

授業方法

授業はパワーポイントを使用して進めます。また板書はしません。その代り各テーマごとに簡単に内容をまとめたプリントを毎回配布します。なおそのプリントには、講義で取り上げた作品は必ずすべてリストアップします。

準備学習

美術史の基本的な知識を予習しておくこと。また本年度はヴェネツィア派を取り上げます。最も有効な参考書としてピーター・ハンフリー『ルネサンス・ヴェネツィア絵画』を挙げておきます。

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):50%(試験の成績のみ)
第2学期(学年末試験):50%(試験の成績のみ)
各学期末の試験、合計2回の成績で評価します。試験は客観問題3割、あとは論述問題で構成します。授業中に配付したプリントと自筆のノートのみ持ち込み可。ただしノートに図版のコピーを貼ることは厳禁です。

参考文献

本年度の講義全般の参考文献に関しては、第1回目に参考文献一覧を配布します。また特化した内容に関しては毎回配布するプリントにて指示します。