※哲学演習 
ロック『人間知性論』と近代認識論―
031-A-133

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
下川 潔 教授 4 2~4 通年 3

授業概要

 昨年度に続き、ジョン:ロックの著作『人間知性論』(An Essay Concerning Human Understanding)を取り上げ、近代認識論の特質と構造を解明することにしたい。必要に応じて、ロック以前、あるいはロック以後の認識論にも言及しながら、この古典から多くを学び、かつそれに隷従することなく自由に批判的検討も加えてみたい。
 今年度は、『人間知性論』の第2巻「観念について」(Book II, 'Of Ideas')の第10章'Of Retention'(「保持について」)から読み始め、「記憶」に関するロックの見解を学ぶ。「識別」「比較」「複合化」「抽象化」という心の能力についてのロックの見解を学び、少なくとも第12章までは進め、人間の心がいかにして「複合観念」を形成するかというロックの説明を学ぶことにしたい。以上の章を読み進める過程で、トマス・リードがEssays on the Intellectual Powers of Man, Essay IIIで論じた「記憶」の問題、およびバークリーが『人知原理論』で展開した抽象観念批判もあわせて抜粋で読み、ロックに対する批判的コメントを通じて、記憶や抽象化についての哲学的問題を考察したい。
 ロック『人間知性論』第2巻第14章は「持続」(duration)の概念を扱っており、これも興味深い哲学的問題であるが、参加者の皆さんがどれほど「記憶」と「抽象化」に関心をもつか、どれほど早くテクストを読み進めることができるかを見てから、このトピックを扱うかどうかを決めることにしたい。
 以上のような仕方で、近代の他の哲学者のテクストも交えながら、『人間知性論』の第2巻のいくつかの章を読む予定である。

到達目標

●近代哲学の古典的テクストを辞書を引きながら読み、意味を理解できるようにする。
●ロックの認識論が提起する諸問題を理解し、哲学的論争を踏まえて、それらの問題に対する可能な答を考察し、批判的思考力を養う。

授業計画

1 方針の説明 メインテクストと精読個所の指定
2 John Locke, An Essay Concerning Human Understanding, Bk. II, Chap. 10以降を読む。
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9 ロックの議論を踏まえて、トマス・リードの記憶についてのコメントを読む。
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14 第1学期の総括
15 自主研究
16 ロックの議論を踏まえて、バークリーの批判的コメントを読む。
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21 Locke, Berkeley, Reidについての討論と発表
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25 Locke, Essay, II, chapters 13-14の必要な箇所を読む。
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29 総括と学年末課題の提示
30 自主研究

授業方法

この演習に参加する人は、必ず原典の指定した個所を予習してきてほしい。必要に応じて、特定の人に調査と発表を依頼する。そのときには時間をかけて準備し、レジュメを作成して発表をおこなうこと。

準備学習

●毎回の演習の前に、自宅で時間をかけてテクストの予習をする(2時間程度)。
●毎回の演習の後に、原文を読み直し、論点を整理し、理解を定着させる。(45分程度)
●発表をするときには、周到に準備し、レジュメを作成する。

成績評価の方法

レポート:50%(学年末論文)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):50%(出席はもちろん重要だが、日頃の予習と復習、調査や発表も評価対象とする。)

教科書

Kenneth Winkler (ed.) , An Essay Concerning Human Understanding, Hackett, 1996
この演習に参加したい人は、安価で良質なKenneth Winkler編のAn Essay Concerning Human Understanding (Hackett)を購入してほしい。ただし、これは縮約版であり、本演習にとっては十分であるが、もとのテクストの一部が省略されている。したがって、卒論以上のレベルの研究で使用することを考えている人は、高価なPeter Nidditch編の決定版(Oxford Universit Press)、あるいは、ずっと安価で信頼できるRoger Woolhouse(ed.)編のもの(Penguin Classics)のいずれかを入手するのがよい。