現代研究コース講義A
アメリカ1920年代:The Jazz Age―
034-A-211

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
内田 勉 教授 4 2~4 通年 3

授業概要

第1次世界大戦(The Great War)の終結から大不況(The Great Depression)が始まるまでのおよそ10年間をアメリカではしばしばThe Jazz Ageと呼びます。localな黒人音楽がnationalな(後にはinternationalな)音楽に変容し、ラジオやレコードを通して、アメリカ全土に響き渡った時代だからです。この時代は別名でthe Roaring Twentiesとも呼ばれるように、楽天的で活気のある文化が次々に現出したというイメージが持たれています。女性参政権の実現や黒人の文化的進出等もこの時代を特徴付けた事象なので、進歩した時代というイメージもあります。しかし、これらのイメージは全くの間違いではないにしても、事柄の一面にすぎません。人種差別を背景とした移民制限法の制定やKKKの拡大的復活等もこの時代に行なわれました。進化論を公立学校で教えてよいかどうか裁判で争われたのもこの時代です。The Jazz Ageに現出した諸事象の多くは、それ以降のアメリカの社会や文化を規定する要因となりました。以上を念頭に置き、文学や映画等も参考にしながら、The Jazz Ageの全体像を受講者と一緒に考えたいと思います。

到達目標

The Jazz Ageはしばしば誤解を生むようなイメージで語られることが多いと思います。その理由の一つは、大恐慌という深刻な経験をした後に、前の時代を振り返ると、対比的に陽の部分に目が行きやすいということがあるだろうと思います。Flapperと呼ばれた新しいタイプの女性の出現が、伝統的価値観の変化を当時のアメリカ人の多くに実感させたことは事実ですし、また実際に、アメリカの女性は、この時代に、社会の様々な領域で、目覚ましい進出を果たしました。経済の繁栄、スポーツの発展(特にプロ野球)、映画の興隆、消費生活の向上等など、明るい話題は豊富に挙げることが出来ます。しかし、この同じ時代に、陽とは正反対の、陰の部分が存在したことを無視するわけにはいきません。戦時法として制定されたスパイ法や治安妨害法は、戦後も継続され、政治思想や労働運動の弾圧に使われました。Red Scareが煽り立てられ、そのような時代思潮の中で、アメリカ史上最悪の冤罪事件と言われるSacco-Vanzetti Caseも起きました。進化論裁判(Scopes Trial)が行われ、進化論を高校で教えた被告Scopesに有罪判決が下されたのもこの時代です。The Jazz Ageに見られるこのような正負の二面性を具体的な事象や人物を取り上げることによって、出来るだけ正確に1920年代の特徴を理解出来るようにしたいと思います。また今日のアメリカを特徴づける様々な社会事象や文化事象の多くがThe Jazz Ageに起源があったり、発展したりしたものであることも理解できるようにしたいと思います。

授業計画

1 Introduction
2 The Great War終結
3 アメリカ上院、Versailles条約批准せず
Wilson大統領とHenry Cabot Lodge上院外交委員長との確執
4 帰還兵の問題 1 F. Scott Fitzgerald, "Dalyrimple Goes Wrong"
5 帰還兵の問題 2 Hemingway, "Soldier's Home"
6 the Red Scare
7 Sacco-Vanzetti事件とDos Passos: 保守反動思想と冤罪vs. 作家と社会正義
8 Prohibition: Eighteenth Amendment
9 女性参政権(Nineteenth Amendment)と女性の活躍
10 共和党8年ぶりに政権復帰:Harding大統領(1921-23)
a return to normalcy
11 Calvin Coolidge大統領(1923-29)
12 移民法の変遷:移民排斥、人種差別
13 Scopes Trial:進化論裁判
14 新しい文化の発展:映画、音楽、スポーツ、車、飛行機
15 まとめ
16 消費社会の到来
17 馬車:鉄道文明と車文明の交錯
18 拝金主義:アメリカの宗教・道徳の変化
19 the American Dreamの変質
20 アメリカ文学三大傑作に現れるthe American Dream:The Great Gatsbyの場合
21 Manhattan Transferの場合
22 An American Tragedyの場合
23 The Lost Generationの文学:F. Scott Fitzgerald
24 Ernest Hemingway
25 Dos Passos
26 Hoover大統領の時代(1929-33)
27 危機の予兆
28 The Great Depression
29 FDR
30 まとめ

授業方法

一方的な講義にならないように、受講者全員で考えるテーマを与える等、様々な工夫をしながら、出来るだけ、全員参加型の授業にしたいと考えています。

準備学習

毎回ではないが、ハンドアウトを配布された時は、事前に読んでおくこと。(約1時間)

成績評価の方法

第1学期(学期末試験):40%
第2学期(学年末試験):40%
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):20%(出席、クラス全体への貢献度を重視する。)

教科書

授業時に指示する。

参考文献

授業時に指示する。

履修上の注意

履修者数制限あり。
第1回目の授業に必ず出席のこと。