現代ヨーロッパ政治
旧東欧における「記憶の政治」と移行期正義―
112-F-307

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
飯田 芳弘 教授 2 D/M 第1学期 2

授業概要

 共産主義体制の崩壊から四半世紀が過ぎた現在、この間の体制変容に関するさまざまな考察がなされているが、その一つとしてこの授業では、他の非民主主義体制の体制変動においても重要な課題となっている「移行期正義」の実現をめぐる諸問題についての検討を行うと同時に、本来はそれらの問題と極めて密接な関係にありながら、これまで必ずしもその連関が意識されてこなかった「忘却の政治」や「記憶の政治」について、あわせて検討する。
 より具体的には、Lavinia Stan/Nadya Nedelsky (eds.), Post-Communist Transitional Justice. Lessons from Twenty-Five Years of Experience (Cambridge University Press 2015) および旧東欧の記憶研究分野の関係論文の講読を行う。

到達目標

 共産主義体制からの体制移行期における「移行期正義」問題と「記憶の政治」の諸側面を検討することにより、民主主義を支える道徳的倫理的歴史前提が何であるかを具体的に理解することができる。

授業計画

1 授業の概要の説明(第2回から第14回までは、上記テキストを1章ずつ読む。以下ではそのタイトルが記載されている)
2 Transitional justice and political goods
3 Transitional justice as electoral politics
4 Explaining late lustration programs: lessons from the Polish case
5 The adoption and impact of transitional justice
6 Transitional justice effects in the Czech Republic
7 The timing of transitional justice measures
8 The challenge of competing pasts
9 Beyond the national: pathways of diffusion
10 The mythologizing of communist violence
11 Post-communist truth commissions: between transitional justice and the politics of history
12 Public memory, commemoration, and transitional justice: reconfiguring the past in public space
13 Stories we tell: documentary theater, performance, and justice in transition
14 Vigilante justice and unofficial truth projects
15 総括と残された課題の検討
 

授業方法

 担当者が作成したレジュメに基づき内容を報告し(30分)、残りの時間(60分)を内容の確認とそれをめぐる議論に費やす。

準備学習

 所定のテキスト(1回につき約30ページ)を読むこと(2時間)。さらに担当者の場合は、その内容に関する詳細なレジュメを作成し、それ以外の参加者は内容に関するコメントを準備する。

成績評価の方法

レポート:30%(担当回のレジュメの質)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):70%(出席と議論への積極的な参加)
 授業の議論の材料となる各自のコメントペーパーに対して、コメントをつけて翌週に返却する。

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

 この授業に参加を希望する者は、あらかじめ、望月康恵『移行期正義―国際社会における正義の追及』(法律文化社)などを読み、「移行期正義」問題についての基本的な知識を習得しておくこと。さらに広くは、民主主義体制への「移行」に関する基本的知識も。
 また、この授業への参加希望者は、2017年4月7日(金)までに、参加の意思を飯田まで伝えること(テキストの準備のため)。連絡先は、共同研究室の担当副手から聞くこと。