経営科学特殊研究Ⅳ 
Black-SholesからHull-Whiteモデルへ―
122-F-144

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
白田 由香利 教授 2 D/M 第2学期 1

授業概要

Black-Sholes方程式の導出と,Hull-Whiteモデルをします.ブラック=ショールズモデルは昔,MBAコースで学んだが,結局理解できなかった,というかたのために,ゆっくりと分かりやすくブラック=ショールズ方程式の導出を説明します.もちろん,初めて学ぶという人も対象です.微分,偏微分,指数関数,対数関数,期待値,分散,正規分布などの数学の考え方をビジュアルに解説します.ビジュアルな教材とは,3次元グラフィクス,スライダー,アニメーションなどを使い,コンピュータ画面上でグラフィクスを操作しながら,数式の意味するところを分かり易く理解できるようにした教材です.平均値,標準偏差の値をスライダーで動かすことで,つまり,身体を動かすことで,正規分布の性質が真から納得できるようになります.また,講義では,中心極限定理,正規分布の確率密度関数,ブラウン運動,伊藤のレンマなどの用語を解説します.数学から離れていた人を対象として,確率,統計を基礎からグラフィクスを使って分かりやすく実践的に教えますので,安心して履修してください.数学に詳しい人にも,本講座の中心極限定理のグラフィクスによる教え方は面白い,と好評です.シミュレーションを見れば,さらに詳しく納得できます.ですからブラックショールズには興味がなくても,統計をしっかり再勉強したい人にも適したクラスです.
ブラック=ショールズ方程式以降のモデル,Hull-Whiteモデルなども分かり易く説明します.昨年度も分かり易いと好評でした.大学院のD/M科目である.Mコースの目標は,個々の定理等を理解し,導出過程の全様を理解することです.Dコースの目標はさらに進め,定理の取捨選択を行い,自分でモデルを構築するスキルの養成です.

金融工学のモデル構築方法は他分野のかたにも役立つ知識です.
金融分野でのテキストマイニングの利用についてもデモをしながら講義します.
ともかく,楽しい,分かる,しかも実践的なクラスです.

到達目標

統計のセオリーの中心である「中心極限定理」が理解できるようになる.
ブラックショールズ方程式を立てること、解くことができるようになる.
オプションの値付けにいたるモデルの構築の考え方を理解できるようになる.
Hull-White modelなどの最新のモデルを学ぶことで,モデル構築の意味を理解できるようになる.
LDA(Latent Dirichlet Allocation)モデルなどの金融分野でのデモにより深層学習を理解できるようになる.

授業計画

1 オリエンテーション: ゴールの公式までの演繹推論の概説「ブラックショールズの公式とはオプションの利潤の期待値の式」
2 ブラックショールズの公式:ブラウン運動,中心極限定理,伊藤のレンマ,2次有限変分
3 ブラックショールズの公式:正規分布の確率分布関数
4 ブラックショールズの公式:期待値の計算,オプションの現在価値
5 モデルの変遷:何を拡張したかったのか
6 Implied Voolatility
7 Implied correlation
8 Hull-White model
9 金融分野でのテキストマイニング:日銀金融政策決定議事録からのトピック抽出
10 トピックモデル
11 演習:Latent Dirichet Allocation モデルによるトピック抽出
12 金融におけるベイズ推論の活用
13 Gibbs sampling for MCMC
14 Gibbs sampling application
15 総復習
金融の現場で活躍している人,将来金融の分野で活躍したい人の数学力,論理力を伸ばすための講義です.少人数の面授による演習です.日本の数学は,目の前の数学問題を急いで解く,という科目になっていますが,このクラスは異なります.先生と対話しながらグラフィクスを見ながら,数学をゆっくり考え理解していきます.数式を追っていくことに注力するのではなく,その後ろにあるモデルの考え方を可視化教材で理解していきます.
テキストは独自にこの科目用に作成したものを使います.また,すべての項目に教員が作成したグラフィクスが付きます.家でも使えます.今までの数学とは違う数学を体験してみたい人,数学ができるようになりたい人,金融数学のモデル構築のセンスを身に着けたい人,いらしてください.
http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~20010570/mathABC/SELECTED/

授業方法

昨年度の本講義では,伊藤のレンマの2次変分有限などの数学の証明はスキップしました.今年も「難しい証明はスキップして,本筋を掴む」「シミュレーションで見て,内容を理解する」という方針に変わりはありません.大学院の講義で,少人数ですので,全員がブラック=ショールズ方程式を分かった気分になるまで,懇切丁寧に責任をもって教えます.本講義は,社会人の科目等履修生を想定しています.人によって,分からない部分が違いますが,今年も,分かるまで繰り返し教えます.昨年度の受講者も,全員分かった気分になれました.webシステムにより,講義の中でコンピュータ・ビデオを補助教材として用います.授業の理解が十分でなかった時,欠席した時も自分自身の理解のレベルに沿って,復習や授業の補足が出来ます.

準備学習

準備は必要ありませんが、講義の内容を自分で、再度、書き写して提出、というレポートをほぼ毎回出します。社会人で欠席する人のことも考慮し、対応する箇所は指示しますので、そこを書き写して提出してください。

成績評価の方法

レポート:80%
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):20%
忙しい社会人(金融関連等)が多いので,仕事の都合も考慮します.Dコースとして履修する学生に対しては,別途,モデル構築に関する課題レポートを追加で出します.

教科書

白田由香利,橋本隆子,市川収,鈴木桜子『大学生のための役に立つ数学』、共立出版2014
P. Glasserman, Monte Carlo Methods in Financial Engineering, Springer, 2004
Y. Hilpisch, Python for Finance, O'reilly, 2014
ブラックショールズに関しては、手作り教科書をお渡しします。

参考文献

白田由香利『悩める学生のための経済経営数学入門』、共立出版2009
白田由香利,橋本隆子,飯高茂『感じて理解する数学入門(e-Book)』、オライリー・ジャパン2012
John C. Hull, Options, Futures, and Other Derivatives, 7th Edition, Pearson, 2009

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。

その他

白田の公開数学教材サイト 
以下の可視化教材サイトは家からでも見られます
 
(1)数学教材 説明ビデオとグラフィクス教材 
.英語で書いたサイトが多いですが,講義では日本語で分かり易
く説明しますので安心してください.
http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~20010570/VDStat/
http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~20010570/mathABC/SELECTED/
http://shirotaabc.sakura.ne.jp/ABC/
英語版はhttp://www-cc.gakushuin.ac.jp/~20010570/mathABC/ABC/
ブラック=ショールズモデルについては,英語による教材ビデオも上記で公開していますので,ご参照ください.
 
(2)英語 Central Limit Theorem VIDEO (http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~20010570/mathABC/) 
 
(3)関連論文:学習院大学経済論集 論文「演繹推論法によるブラック=ショールズ方程式の導出」,「ブラック=ショールズ方程式に関するシミュレーションとグラフィクスによる考察」http://www.gakushuin.ac.jp/univ/eco/gakkai/pdf_files/keizai_ronsyuu/ で公開.