アーカイブズ学理論研究Ⅲ
オーストラリア理論研究―
13B-F-003

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
清原 和之 助教 4 D/M 通年 6

授業概要

本講義では、オーストラリアを中心としたアーカイブズ理論を学ぶ。アーカイブズ学は実践の学問であるといわれる。しかしながら、電子記録の登場、アカウンタビリティの要請といった技術的・社会的変化、さらには、ポストモダニズムが引き起こした知の地殻変動が進行する現在、その実践が問われてきている。それゆえ、これまで依拠してきた諸概念を問い直し、課題を発見し、新たな認識の下で実践を再構築しいくことが求められている。こうしたなかで、西欧由来のアーカイブズ学を実践のなかで捉え直し、新たな理論や方法論を生み出し、今日のアーカイブズ界全体に影響を与えてきたオーストラリアの理論と実践を学ぶ。
この授業では特に、アーカイブズ学の主要なパラダイムであるレコード・コンティニュアム理論を軸に、社会のなかの組織や個人、コミュニティと記録との関係を問う力やレコードキーピングの考え方を身につけ、自らの問題関心や研究に活かす能力を育むことを目指す。

到達目標

レコード・コンティニュアム理論やレコードキーピングの考え方を理解し、自らの問題関心や研究に活かすことができる。
最新のアーカイブズ学理論の動向を把握するための英文読解能力を身につけることができる。

授業計画

1 オリエンテーション:授業の進め方、講読する文献、および分担講読の担当と要領について
2 ポスト保管時代のアーカイブズ学―レコードキーピングとは何か―
3 マクロ評価選別論と機能分析
4 シリーズ・システムの発展
5 レコード・コンティニュアム理論とは何か(1)
6 レコード・コンティニュアム理論とは何か(2)
7 分担購読:Victoria Lane and Jennie Hill, “Where do we come from? Wat are we? Where are we going? Situating the archive and archivists”, in Jennie Hill ed., The Future of Archives and Recordkeeping: A reader, facet publishing, 2011, Ch.1, pp. 3-22.
8 分担購読:Anne J. Gilliland, “Archival appraisal: practicing on shifting sands”, in Caroline Brown ed., Archives and Recordkeeping: Theory into Practice, Ch. 2, pp. 31-61.
9 分担購読:Gilliland, "Archival appraisal"の続き
10 分担講読:Geoffrey Yeo, "Debates about Description", in Terry Eastwood and Heather MacNeil eds., Currents of Archival Thinking, 2010, Ch. 5, pp. 89-114.
11 分担講読:Yeo, "Debates about Description"の続き
12 分担購読:Sue McKemmish, “Traces: Document, record, archive, archives”, in Sue McKemmish et al. eds., Archives: Recordkeeping in Society, Ch. 1, 2005, pp. 1-20.
13 分担講読:McKemmish, “Traces: Document, record, archive, archives”の続き
14 授業のまとめ
15 自主研究
16 コンティニュアムとアカウンタビリティ
17 コンティニュアムと個人の記録
18 コンティニュアムと記憶の管理(1)-アボリジナルの人びととアーカイブズ―
19 コンティニュアムと記憶の管理(2)-南アフリカのあるアーカイバル・ヒストリーを事例として―
20 参加型アーカイブズ―アーカイブズ2.0とコミュニティ・アーカイブズ―
21 レコードキーピング情報学とは何か
22 分担購読:Livia Iacovino, “Archives as Arsenals of Accountability”, in Terry Eastwood and Heather MacNeil eds., Currents of Archival Thinking, 2010, pp. 181-212.
23 分担購読:Iacovino, “Archives as Arsenals of Accountability”の続き
24 分担購読:Catherine Hobbs, "Reenvisioning the Personal: Reframing Tracesa of Individual Life", in Terry Eastwood and Heather MacNeil eds., Currents of Archival Thinking, 2010, pp. 213-241.
25 分担購読:Hobbs, "Reenvisioning the Personal"の続き
26 分担購読:Eric Ketelaar, “Archives, memories and identities”, in Brown ed., Archives and Recordkeeping, pp. 131-170.
27 分担購読:Ketelaar, “Archives, memories and identities”の続き
28 分担購読:Nicole Convery, “Information management, records management, knowledge management: the place of archives in a digital age”, in Hill ed., The Future of Archives and Recordkeeping, pp. 191-212.
29 授業のまとめ
30 自主研究
授業の日程・内容等は受講生の人数・要求水準等によって変動する可能性がある。

授業方法

第1学期と第2学期の最初の数回は講義形式をとるが、それ以降の回は受講生が英語文献を分担して報告し、討論を行う。

準備学習

事前に指示した文献を読み、疑問点やコメントをまとめてくること(1~2時間)。

成績評価の方法

レポート:40%(授業の理解度、与えられたテーマについて論理的に論述されているかを評価する。)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):60%(授業への出席、報告の内容、討論への参加等を評価する。)
提出されたレポートについては、コメントを付与の上、返却する。

教科書

Sue McKemmish, Michael Piggott, Barbara Reed and Frank Upward eds.,, Archives: Recordkeeping in Society, Charles Sturt University, 2005, ISBN:9781876938840
Terry Eastwood and Heather MacNeil eds, Currents of Archival Thinking, Libraries Unlimited Inc., 2010, ISBN:97815911586562
Jennie Hill ed., The Future of Archives and Recordkeeping: a reader, Neal Schuman Pub., 2010, ISBN:9781856046664
Caroline Brown ed., Archives and Recordkeeping: Theory into Practice, Facet Publishing, 2013, ISBN:9781856048255

参考文献

記録管理学会・日本アーカイブズ学会共編『入門 アーカイブズの世界-記憶と記録を未来に 翻訳論文集』、日外アソシエーツ2006年年、ISBN=9784816919817
エリザベス・シェパード、ジェフリー・ヨー共著、森本祥子ほか訳『レコード・マネジメント・ハンドブック―記録管理・アーカイブズ管理のための―』、日外アソシエーツ2016年、ISBN=9784816926112
九州史学会・公益財団法人史学会編『過去を伝える、今を遺す―歴史資料、文化遺産、情報資源は誰のものか―』、山川出版社2015年、ISBN=9784634600249

履修上の注意

第1回目の授業に必ず出席のこと。