物性物理学Ⅱ(大学院)
141-F-872

担 当 者 単 位 数 配当年次 学 期 曜 日 時 限
高橋 利宏 教授 2 D/M 第1学期 1

授業概要

「導電性有機分子化合物」、あるいは簡単に「有機導体」と呼ばれる一連の物質がある。有機化合物であるのに電気を流し、金属ー絶縁体転移や超伝導への転移を示す物質も多く見出されている。「有機導体」を舞台とした多くの特異な現象は、(1)有機導体の多くが異方性の強い低次元電子系とみなされること、(2)伝導電子間の相互作用が強いこと、(3)伝導電子が分子の内部自由度と強く結合していること、などのきわだった特徴に起因している。これらはそのまま現代における物性物理の主要課題に結びつくキーワードとなっている。本講義では、今や物性物理のモデル物質のひとつとなった「有機導体」の興味深い物性と背景にある物理について概説する。

到達目標

「有機導体」の特異な物性として見出された現象について学ぶ。それらが学部で学んだ「物性物理学」の知識を発展させて理解出来ることを学ぶ。「有機導体」をモデル物質として「物性物理学」の多様性と普遍性を理解する。

授業計画

1 低次元導体の世界
2 有機導体とその電子構造
3 パイエルス転移(1)
4 パイエルス転移(2)
5 密度波のダイナミクス(1)
6 密度波のダイナミクス(2)
7 クーロン相関と磁性(1)
8 クーロン相関と磁性(2)
9 クーロン相関と磁性(3)
10 超伝導(1)
11 超伝導(2)
12 超伝導(3)
13 有機導体のトピックスと展望
14 理解度の確認
15 自主研究
学部で学んだことを出発点に、最先端の話題へのつながりを分かりやすく述べたい。

授業方法

講義形式で行う。必要に応じてプロジェクターを使用するが、画像についてはコピーを配付する。

準備学習

予習は必ずしも求めないが、授業後に、教科書の該当部分をよく読んで理解を深めること(約30分)。

成績評価の方法

レポート:60%(講義内容に関連した課題をレポートとして提出する。)
平常点(クラス参加、グループ作業の成果等):40%(質問カードを兼ねた出席カードを用いて出席を取る。)
レポートの内容に、出席状況を加味して評価する。

教科書

鹿児島 誠一, 長沢 博, 三本木 孝, 高橋 利宏『低次元導体―有機導体の多彩な物理と密度波 』(物性科学選書)改訂版、裳華房2000年、ISBN=9784785326104

参考文献

H. イバッハ , H. リュート 『固体物理学―21世紀物質科学の基礎』(Springer university textbooks)改訂新版、丸善出版2012年、ISBN=9784621061404
イバッハの固体物理に関しては、類似の本をもっていればそれで代用して良い。詳細は授業時に指示する。