<先生から一言>
 本書を読んだのは、在米時代の1991年。時はまさにソ連崩壊、湾岸危機のさなかだった。日本の行く末を考えていたときに出会った本書を読みつつ、動乱の時代に必死で生きる主人公たちの生き様に言いようのない感慨を覚えた。淡々と史実をたどっていく本書は決して派手ではない。だが、かえって、それゆえに、歴史のもつ凄み、迫力を感じさせる名著。読み終えて、しばし、その迫力に絶句した。「革新と復古の二つの力が交錯するとき維新回天のエネルギーが炸裂する」 −ふと、そんな読後感が残った。


『王政復古』

-慶応三年十二月九日の政変-


井上勲 著
中央公論新社
1991年 8月