1999年度(平成11年度)入学試験問題について 

  

化学科の入学試験は、理科・数学・英語の3科目について行います。理科は、「化学」「物理」「物理および化学」の3種類の選択を認めてます。下記に公開します第4問、第5問、第6問は、化学の範囲の問題です。 

 

第4問

4-1 では、天然ガスを題材として、熱化学方程式や環境問題に関係する問を設けました。受験生全体として熱化学方程式についての理解は進んでいるようですが、計算結果の有効数字の扱いや単位の重要性に関する認識が足りないように感じました。また、水素とメタンの「燃料としての特徴」「環境に対する影響」をそれぞれ比較する問に対しては、水素あるいはメタンの一方について記述し比較を述べていない解答が多くあり、残念でした。 

 

第5問

第5問は、アルゴンの発見につながった歴史的な実験を題材としました。問題では、まず、大気から酸素・二酸化炭素・水蒸気を除いた気体である「大気窒素」の中にアルゴンが混ざっていたというストーリーの説明をしています。この「大気窒素」の密度に関する問に対しては、「大気窒素」の平均分子量を窒素・アルゴンの混合比を考慮して計算すれば簡単に答が得られます。ところが、少なくない数の受験生が、酸素を含む通常の大気の平均分子量の計算をしていたのは意外でした。問題文をよく読んでいただきたいと思います。また、物質一般の密度や原子番号という基本的な概念の説明を求める問に対して、言葉足らずの解答が多いことも残念でした。なお、アルゴンの発見に関する問題文の記述では、入試問題としての形をつくるために歴史的事実と少し異なる表現をした部分がありますことを、お断りしておきます。 

 

第6問

6-1 は、酸を触媒としてエステルが加水分解されるという基本的な有機化学反応を題材としました。この種の反応の基本を理解している受験生は的確な解答をしていましたが、エステルと塩酸が反応すると誤解した受験生がかなりいました。シュウ酸およびバリウムという2価の酸やイオンが関与することに惑わされた受験生も多かったようで、この点では、問題を少しひねりすぎたかもしれません。 

なお、第4問 4-1、第6問 6-2 の無機および有機反応の問題に対する解答は、比較的よくできていました。基礎的な反応を主に題材としたからだと思いますが、これらのような基礎的な問題に対して的確に答えられるように、暗記ではなく、化学を理解することを目指し勉強していただきたいと私たちは考えています。 

講評:石井菊次郎(化学科学科主任)

 


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