学習院大学理学部化学科 糀谷研究室

研究内容

我々が住んでいる地球の内部は、表層から地殻、マントル、核に区分されています。地殻やマントルはケイ酸塩鉱物を主体とする岩石で出来ていると考えられていますが、地球内部の高圧高温状態のため直接それらの物質を見ることはできません。当研究室では、マントルを構成していると考えられている鉱物について、高圧装置を用いた高圧高温実験および熱力学計算の2つの方法を用いて研究を進めています。

高圧高温実験

1000トンプレス高圧発生装置を用いることによって、地球の深さ約900 kmに相当する圧力(約30万気圧)を発生させることができます。また、ReやPtなどの金属箔もしくはLaCrO3に電流を流すことによって約2500℃までの高温にすることができます。地球のマントルを構成していると考えられているケイ酸塩鉱物や酸化物、それらと同じ結晶構造を持つ他の無機化合物について、実際に実験室で圧力と温度を加えることによって、どのような結晶構造や化学組成を持った物質がどのような圧力温度条件で安定になるのかを調べます。また、高圧合成された試料について、リートベルト解析により得られる結晶構造の詳細から物質の安定性を解釈する研究も行っています。



熱力学的手法

様々な圧力・温度においてどのような構造の物質が安定であるのかは、ギブスエネルギーの大小を比較することによって熱力学的に評価することができます。ある圧力温度条件で最小のギブスエネルギーを持つ結晶構造が安定相となります。 圧力P, 温度Tでのギブスエネルギーは、

5配位ケイ素同士の結合をもつジアニオン

の式により計算されます。この計算を行うためには、エンタルピーHやエントロピーS、それらの温度依存性を求めるための定圧熱容量Cp、さらにP-V-Tの関係式(状態方程式)についての熱力学パラメータが必要となります。当研究室では、次のような測定や計算を行って熱力学パラメータの決定を行っています。
1.落下溶解熱量測定法によるエンタルピーの測定
2.示差走査熱量測定法(DSC)による高温定圧熱容量の測定
3.PPMS装置を用いた熱緩和法による低温定圧熱容量測定と標準エントロピーの決定
4.高温X線回折測定による熱膨張率の決定
5.ダイヤモンドアンビル高圧発生装置を用いた高圧ラマン分光法によるグリューナイゼン定数の決定
6.キーファーモデルを用いた格子振動モデル計算による定圧熱容量の理論計算
7.グリューナイゼンの式を用いた熱膨張率の理論計算