学習院大学 理学部 化学科 / 自然科学研究科 化学専攻 岩田研究室
岩田研究室
ピコ秒時間分解ラマンスペクトルを測定するときは、ポンプ光パルス(試料に変化を起こす光)を試料に照射して、その試料からのラマンスペクトルをプローブ光パルス(起きた変化を観測する光)で測定します。この方法を「ポンプ- プローブ法」と呼びます。この方法では、光学遅延回路によってプローブ光パルスの光路を0.3 mm変化させると、遅延時間を1ピコ秒変化させることができます(光速が30万km/秒だからです)。装置の概要を図1に示します。
ポンプ光とプローブ光には、チタン・サファイア再生増幅器の出力で励起した2台の光パラメトリック増幅器の出力を使います。それぞれ、紫外領域から近赤外領域まで波長可変です。
試料からのラマン散乱光は、レンズを使って分光器の入口スリットに集光します。分光器手前のフィルターで不要な光を取り除き、さらに偏光を解消します。集光されたラマン散乱光は、シングル分光器(HR=320)で光の波長ごとに分け、液体窒素で冷却したCCD検出器で検出します。
- 2台のパラメトリック増幅器を使っているので、ポンプ光(励起光)とプローブ(検出光)の波長をそれぞれ独立に変えることができます。
- 光の電場の時間波形とスペクトル波形は相互にフーリエ変換されます。そのため、光パルスの時間幅とエネルギー幅の積を一定値以下にできないという「フーリエ変換限界」が存在します。時間幅とエネルギー幅の両方を限りなく小さくすることはできないのです。
私たちは、2個の回折格子とスリットを使った「波長可変狭帯域化光学系」を使ってプローブ光パルスのスペクトル分布を制限し、フーリエ変換限界に近い条件での時間分解測定を可能にしています。