2006 年 2 月 21 日(最終更新日 2 月 24 日)
田崎晴明(学習院大理)
もう容赦できぬ! 日本物理学会が "ニセ科学" の教科書掲載に蜂起は、事実とまったく異なります。
出版前にチェックの機会があると考えていたのですが、そういう機会はありませんでした。関連する多くの方にご迷惑をおかけすることになり、大変、申し訳ありません。
なお、担当のライターの方に当惑していることを伝えるメールを書いたところ、即座に「フォーブス日本版」の編集者からお詫びのお電話があり、次号に訂正文を掲載したいとの申し出を受けました。
次の5月号には訂正記事が掲載されました。
フォーブス日本版(株式会社ぎょうせい) 2006 年 4 月号(2 月 22 日発売) 27 ページに、「ニセ科学」シンポジウムを題材にした記事が掲載されています。 記事は私へのインタビューを中心に書かれています。 「『水からの伝言』関連の本が小学校の道徳の授業で用いられている」と誤解されるかもしれない部分があることを除けば、記事のなかでの私の発言内容は適切だと思います。
しかし、大見出しの
もう容赦できぬ! 日本物理学会が "ニセ科学" の教科書掲載に蜂起はまったく事実と異なります。
今回のシンポジウムは、あくまで「ニセ科学とどう向き合っていくか?」という問題提起の会です。 「もう容赦できない!」などとは誰も言っていませんし、「物理学会」が「蜂起」などはしません。 実際、記事の本文には「ニセ科学の実態を知り、物理学者として何ができるのか。オープンに議論ができればと考えています」という私の「言葉」が正しく掲載されていて、見出しとはまったくトーンが違っています。
さらに、「"ニセ科学" の教科書掲載」というのもまったくおかしい。 話題になっているのは「水からの伝言」ですが、それが教科書に記載されたという話は聞いたことがありません。 もちろん、記事の本文にもそのような記述はありません(本文のなかの小見出しにも「文字を認識する水が道徳の教科書に掲載」という同じ誤りがあります)。
これでは、ありもしないインチキ教科書に対して、物理学会が「蜂起」しているという、まったく事実無根の馬鹿らしい話になってしまいます。
記事の本文がおおむね適切であり、見出しだけが事実と大きく離れているところから考えて、見出しを決定する際に勇み足があったものと考えられます。 雑誌が売り上げを伸ばすために派手な見出しをつけるのは自然なことかもしれませんが、公の組織である日本物理学会に関連してまったく誤った記述があるのを見過ごすことはできません。
この申し入れを受けて、フォーブス誌は、5月号に以下のような訂正文を掲載してくださいました。
4月号のフォーブスレポート(27ページ)において、科学的根拠を伴わない「ニセ科学」が教育の場で使われている問題を取り上げましたが、その見出しに事実誤認による表現がありました。「ニセ科学」の教科書掲載の事実はありません。また日本物理学会のシンポジウムは、問題を検討する趣旨で開催するものでした。関係各位にお詫びいたします。(p. 34)
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