公開: 2011年12月23日 / 最終更新日: 2011年12月23日
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放射線と原子力発電所事故についてのできるだけ短くてわかりやすくて正確な解説
知っておくと絶対に便利だし、難しいことではないので、ここでていねいに説明しておく。 「一般の大きな数、小さな数」までの四つの項目を読めば、色々な文献を読むためには十分。
\( 10^4\) は「\(10\) の \(4\) 乗(じゅうのよんじょう)」と読む。 右肩に乗っている数字 4 は、「べき (power)」とか「指数 (exponent)」とか呼ばれる。
同じようにすれば、もっと大きい数も簡単に書ける。 たとえば、 \[ 10000000 = 10\times10\times10\times10\times10\times10\times10 = 10^7 \] \[ 100000000000 = 10\times10\times10\times10\times10\times10\times10\times10\times10\times10\times10 = 10^{11} \] といった具合。 最初の数は一千万、次は一千億だけど、慣れてくれば \(10^7\) とか \(10^{11}\) とか書いたほうが便利だ。 だいたい、\(10^{23}\) なんていう大きな数になると、ゼロを並べて書いても長くなりすぎるし、日本語での呼び方もよくわからなくなってくる。
「\(10\) のなんとか乗」という書き方のことを「10 のべき乗」と言う。
ここで、\( 100000=10^5\), \(10000=10^4\) だったことを思い出して、この式を書き直すと、 \[ 10^5\times\frac{1}{10}=10^4\] となる。 \(0\) の個数が一つ減ったことに対応して、「べき」が一つ小さくなっている。
同じことを続けると、 \[ 10^4\times\frac{1}{10}=10^3,\qquad 10^3\times\frac{1}{10}=10^2,\qquad 10^2\times\frac{1}{10}=10^1 \] という具合に、\(\frac{1}{10}\) をかけるたびに「べき」が一つずつ小さくなっていく。
最後に \(10^1\) という変なのが出てきた。 これは \(100\times\frac{1}{10}\) で、答えは \(10\) だ。 つまり、\(10^1\) は \(10\) の別の書き方ということになる。 \(10^1\) の意味は「\(10\) を \(1\) 個かける」ということだったから、確かに \(10\) だ。
同じことをそのまま続けて、「べき」をさらに小さくすると、 \[ 10^1\times\frac{1}{10}=10^0 \] となって、「\(10\) の \(0\) 乗」というのが出てきてしまう。 「\(10\) を \(0\) 個かける」というのは、どういうことだろう?
左辺(式の \(=\) の左側のことですよ)を落ち着いて見れば、これは \(10\times\frac{1}{10}\) だから、答えは \(1\) だ。 つまり、\(10^0\) というのは \(1\) の別の表わし方だということになる。
「なんで \(10\) を \(0\) 個かけたら \(1\) なんだろう?」と悩んでもあまり得るところはない。 でも、話の流れからして、\(10^0=1\) だと「約束する」のが自然だということに異論はないと思う。 そして、この「約束」(数学では「定義」という)は実に便利なのだ。
「\(10\) を \(-1\) 個かける」なんていうのは意味がないと思うかも知れない。 確かにその通りなのだが、こうやって「概念を自然に拡張していく」ことで色々な数をものすごく便利に扱うことができるのだ。
この調子で、さらに \(\frac{1}{10}\) をかけて「べき」を一つずつ小さくしていくと、 \[ 10^{-1}\times\frac{1}{10}=10^{-2},\qquad 10^{-2}\times\frac{1}{10}=10^{-3},\qquad 10^{-3}\times\frac{1}{10}=10^{-4} \] という風に、「\(10\) のマイナスなんとか乗」がどんどん出てくる。 \(10^{-1}=\frac{1}{10}\) を思い出して、これらの数を普通の分数と小数で書いてみると、 \[ 10^{-1}=\frac{1}{10}=0.1,\quad 10^{-2}=\frac{1}{100}=0.01,\quad 10^{-3}=\frac{1}{1000}=0.001,\quad 10^{-4}=\frac{1}{10000}=0.0001 \] となっていることがわかる。 どんどんと小さな数(正の数だが、大きさの小さい数)が出てくるわけだ。
あと、もう一つ一般的な関係。上の式をよく見ると、 \[ 10^{-1}=\frac{1}{10^1},\quad 10^{-2}=\frac{1}{10^2}\quad 10^{-3}=\frac{1}{10^3}\quad 10^{-4}=\frac{1}{10^4} \] となっているのもわかると思う。 「\(10\) のマイナスなんとか乗」という数は「\(10\) のなんとか乗」の逆数になっているということだ。
メールや Twitter など(原始的なコンピューター環境)で、\(10^9\) みたいな書き方がうまくできない場合には、\(4\times10^9\) のかわりに 4E9 とか 4e9 と書くこともある(E は指数 (exponent) の頭文字だと思う)。こうなると、知らないかぎりは意味不明だ。
これも、\(3\times10^{-6}\) と書けないようなヘボい環境では、3E-6 とか 3e-6 とか書く。
たとえば、\(128000000\) という数(日本のおおよその人口)を 10 のべき乗を使って書いてみよう。 \(128000000=128\times1000000=128\times10^6\) と書いたらよいと思うかもしれないが、実は、これはそれほど便利ではないのだ。それより、 \(128000000=1.28\times100000000\) と書き換えて、 \[ 128000000=1.28\times10^8 \] と表わすのが標準的なやり方になっている( これも、1.28E8 と書くことがある)。 要するに、「\(1\) 以上 \(10\) 未満の小数」かける「\(10\) のべき乗」というのを「標準の書き方」にしようということだ。
\( 1.28\times10^8\) という書き方が優れているのは、ぱっと見ただけで、この数はだいたい \(10^8\)(つまり一億)くらいだということがわかる点だ。
たとえば、\(0.0000000345\) であれば、\(0.0000000345=3.45\times0.00000001\)として、 \[ 0.0000000345=3.45\times10^{-8} \] と書く。これも Twitter なんかでは、3.45E-8 と書く。
具体的な現場では、たとえば \(1.23\times10^4\) みたいな書き方だけで数値が示されることが多い。 これを普通の書き方に直したければ、\(10^4=10000\) に注意して、\(1.23\times10000 = 12300\) と計算すればいいことになる。 あるいは、\(10^4\) 倍するということは \(10\) を \(4\) 回かけることだと思い出して、 \[ 1.23\ \to\ 12.3\ \to\ 123\ \to \ 1230\ \to\ 12300 \] とやるのもいい。
小さい数のほうも同様。 \(9.8\times10^{-3}\) なんていうのがあったら、\(10^{-3}\) をかけるということは、\(\frac{1}{10}\) を \(3\) 回かけることだから、 \[ 9.8\ \to\ 0.98\ \to\ 0.098\ \to\ 0.0098 \] とやれば、迷いなく \(9.8\times10^{-3}=0.0098\) と分かるというわけだ。
でも、慣れてくれば、多くの場合は、普通の小数の書き方に直したりせず、10 のべき乗を含んだ数値をそのまま受け入れられるようになってくるはず(そもそも、\(1.38\times10^{-23}\) みたいな数をわざわざ小数に直す気はしないよね)。
10 のべき乗を使った数の表わし方を知りたかった方は、ここまで読めば十分。 あとは、もうちょっと進んだ話を付け加えておく。
たとえば、「ある町の人口が 123000 人」だったとしよう。 といっても、人口がピタリと正確にわかるということはあまりないので、これは、だいたいの値だとする。
ところが、これが、どれくらい「だいたい」なのかは数字を見ただけではわからない。 数百人程度の誤差のある話で、「人口は122600 人から 123400 人のあいだくらい」ということもあるだろう。 その場合には、123000 という数で信頼できるのは「123」だけで、残りのゼロは単に桁を表わしているに過ぎない。 こういうときには、\(1.23\times10^5\) と書くのだ。
一方、実は人口調査は数人の誤差でおこなわれていて、「人口は 122996 人から 123004 人のあいだにある」と分かっているのかもしれない。そういうときには、\(1.2300\times10^5\) と書く。 これで、数字がかなり細かく信頼できるということが分かるのだ。
このように、「信頼できる数字」のことを「有効数字」と呼ぶ。
10 のべき乗の数を二つかけ合わせるときには、単に、べきの部分を足してやればいいのだ! かけ算なのに足し算が出てくるって面白いでしょ? もちろん、 もとに戻って、\(10^4\) は \(10\) を \(4\) 回かけたもの、\(10^3\) は \(10\) を \(3\) 回かけたものだったことを思い出せば、両者の積が \(10\) を \(7\) 回かけたものになるのは当たり前のことなのだけど。
一方、\(10^4\) と \(10^3\) を足し算しても、 \[ 10^4+10^3=10000+1000=11000 \] となるだけで、特にきれいにはならない。
べきが正の数と負の数のときにも大丈夫。 たとえば、 \[ 10^6\times10^{-2}=1000000\times\frac{1}{100}=10000=10^4 \] \[ 10^3\times10^{-8}=1000\times\frac{1}{100000000}=\frac{1}{100000}=\frac{1}{10^5}=10^{-5} \] といった具合だ。 べきの部分だけ見れば、それぞれ、\(6+(-2)=4\) および \(3+(-8)=-5\) という足し算で答えが求まっていることがわかるだろう。
ちょっと数学っぽくなるが、これを一般に表わすと、 \[10^n\times10^m=10^{n+m}\] となる。 ここで、\(n, m\) は好き勝手な整数(\(0,\pm1,\pm2,\ldots\) のこと)である。
例をもう一つ。 \[ 5.5\times10^{-2}\times 8.2\times 10^3=(5.5\times8.2)\times(10^{-2}\times10^3) \simeq45\times10^1=4.5\times10^2 \] この場合、素直に計算した答えは \(45\times10^1\) になるけれど、最後の答えは「標準形」になるように変形した。