目次 // この事故って / 放射線とか放射能 / シーベルトとベクレル / 放射線と体 / これからの生活 / 原子力発電所
公開: 2011年6月18日 / 最終更新日: 2013年12月22日
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ぼくは数理物理学を専門にする大学教員なので、実は、放射線についても原子炉についても「専門家」というわけじゃない。 放射線の体への影響についてはまったくの素人(しろうと)だ。 ここに書いてあるのは、ぼくなりに、いろいろな文献をていねいに調べいろいろな人の意見を読んだ上で、信じていいだろうと判断したことである(考え違いなどがあったら、是非とも教えてください)。 よくわからないことについては、「よくわからない」とはっきり書いた。 どのくらい「よくわからない」のかを知った上で、これからどうしていくべきかをみんなで考えていくべきだと信じているからだ。
2011 年 3 月の震災のあと、放射線や原子力発電所のことをあつかった本や雑誌が次々と出版されている。 もちろんしっかりしたものもあるが、不正確なことが書いてある出版物も少なくないようだ。 自分でよくわかってないことや、ネットで見ただけの不確かな情報や、うろ覚えの知識なんかを本に書いてしまうのは困ったことだと思うけれど、まあ、それが今の日本の現実なのだ。 この解説は本でも雑誌でも売り物でもないけれど、内容がかなり正確だということには自信をもっている。 何かを書く際には、もとになる文献を自分でしっかりと読んで確認し、計算などもすべて自分でやり直して確かめることを心がけている。 おまけに、いろいろな専門知識をもった人たちがぼくの解説を読んでくれていて、間違いがあれば、厳しく優しく教えてくれるのだ!(「これを書いたほうがいい」と教えてくれる人もいる。)これは実にありがたいことで、そういう人たちのおかげで、この解説の品質は(ぼくの能力をはるかに越えて)高くなっていると思っている。
ぼくの力が及ばなくて取り上げていない重要で切実な問題もたくさんある。 たとえば、食品の安全性、他の原子力発電所の状況、政治や経済のこと、などなど、いくらでもある。 もちろん、そういったことについても何かが書ければうれしいのだが、今の段階のぼくの理解では人にお見せできるものは書けそうにない。 どうかお許しいただきたい(もちろん、少しずつ学んで考えていくつもりだが)。
田崎晴明(たざき はるあき)学習院大学理学部
順番に読んでいけるようになっている。 もちろん読み飛ばしても、好きなところから適当に読んでもいい。
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はじめに断っておきたいのだが、この解説の内容について、ぼくの「オリジナリティー」を主張するつもりはまったくない(ちなみに、ぼくの本業での研究の論文はけっこうオリジナリティーがあるつもりです。まあ、読む人はほとんどいないでしょうけど)。 上に書いたように、解説の内容のほとんどは、どこかに書いてあることを再構成してぼくなりに分かりやすく解説したものだし、ぼくが自分で計算したものにしても(ほとんどは)独自の計算というわけではない。
解説の内容や説明の方法などをいかなる形にせよ活用する際に、ぼくの「オリジナリティー」に配慮していただく必要はまったくない。 計算方法や計算結果なども、断りなく他のところで利用していただきたい。
また、解説の文章は田崎晴明の著作物だが、有用だと判断した方には様々な形で利用していただければ幸いである。
セミナー、勉強会、授業等でこの解説を印刷して配布していただくのは大歓迎である。 また、この解説の全体あるいは一部を、授業、プレゼンテーション、解説、資料、著作などで利用するのも自由である。 スペースに余裕があれば出典を明記していただけるとありがたいが、そうでなければ出典を書く必要もない。
なお、この解説で用いた図やグラフは、出典が書いていない場合は、私が描いたものである(なので、あまり大したことない)。 これらの図やグラフのファイルをコピーして利用していただくのもまったく自由である。
震災と事故のすぐあとは、ぼくみたいに専門知識のない学者がなにか「情報発信」するなんて夢にも思っていなかった。 しかし、しばらくして、この中途半端で苦しい状態がダラダラと何ヶ月も何年も続くのだ、これは長期戦なのだということがわかってきて、ぼくも何かしたほうがいいかなと思い始めた。
ネットでの情報をみていると、ぼくなんかよりずっと詳しくて優秀な人たちがいろいろと重要なことを書いている。 でも、そういう情報は、ちょっと難しくて多くの人には敷居が高そうだったり、ツイッターとかブログとかホームページの一部とかにバラバラに出ていたりすることが多い。
そういうのはもちろん大事だけれど、少し別の路線で、
いまの状況、そして、これから先のことを考えるために必要な基本的なことがらを、わかりやすく簡潔に一カ所にまとめたものがあったらいいなあと思い始めた。 でも、なかなかそういうのがみつからない。 みつからないなら自分で書こうと思ったというわけだ。
ぼくは物理が大好きで、物理を教え、自分でも研究して少しでも新しいことをみつけるのを、生涯の仕事にしている。 でも、ぼくの研究には原子力とか放射線とかはぜんぜん関係してこないので、原子力発電所のことについてはまじめに関心を払ってこなかった。 実をいうと、まだ若かった頃、少しだけ勉強したときに「放射性廃棄物があとに残ってどうしようもないのは、困ったことだ」ということは感じていた。 ただ、それ以上は踏み込まなかったし、原子力発電所そのものは安全につくられていると(今から思えば大した根拠もなく)思っていた。
「物理が好きで専門に勉強したといいながら、原発の問題に気付かないとはけしからん」とお叱りを受けたら、返す言葉もない。 言い訳にはならないけれど、ぼくらが物理学の世界に入ったときには、もう原子力発電というのは基礎的な物理学を離れた、どこか遠い学問分野の話になっていた。 要するに、原子力発電については、一般の(あまり関心のない)人たちと同じ程度の情報しかもっていなかったのだ。おそらく、まわりでいっしょに物理を学んでいた仲間たちのほとんども同じだったと思う。
そいういうわけだから、福島第一原子力発電所で大事故がおきたときには本当にショックを受けた。 もとをただせば物理学から生まれてきた技術がこんなすさまじい被害と苦しみを人々に与えることには愕然としたし、今まで無関心だったのはまずかったと素直に思った。思ってもどうしようもないし、何の言い訳にもならないのはわかっているけど。
それから、自分なりに原子力について復習しいろいろ考え直したけれど、やはり(事故の直後に反射的に思ったように)「原子力発電所を持ち続けるのは人類には無理だ」という結論に落ち着いた。 もちろん、すぐに全てを止めるのは苦しいだろうが、徐々に止めていくしかない。 それは多くの英知を必要とする長く困難な道になるが、やるしかないと(おそらく、多くの人と同様)ぼくは思っている。
ただし、この「まとめ」は「原発廃止」を訴えて書いた物ではない。 それは誤解しないでほしい。 そういう意見や立場とは関係なく、できるだけ公平にわかっていることを解説したつもりだ。
本来は、そういった人たちのお名前をあげるべきだろう。ただ、その人たちがこの解説のすべての記述に賛成されるとはかぎらないので、失礼は承知で、お名前はあげないことにする。
お力を貸してくださったすべてのみなさんに心から感謝したい。
hal.tasaki.h@gmail.com
あてにメールでお願いします(Twitter のアカウントはありますが、140 文字以内でのやりとりは苦手です)。 ただし、上に書いたように、ぼくは放射線や医学のプロではないので、ご質問をいただいても答えられないことが多いと思います。ご了承ください。 また、このページは、あくまで大学での研究や教育の合間をぬって作っているので、メールをいただいてもすぐには反応できないかもしれません。これもお許し下さい。