公開: 2011年6月18日 / 最終更新日: 2011年8月3日
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放射線と原子力発電所事故についてのできるだけ短くてわかりやすくて正確な解説
単一の核種の場合だけを考える。 減衰の係数を \(\gamma\) とし、初期の線量を \(p(0)\) とすれば、時刻 \(t\) での線量は、 \[p(t)=p(0)\,\exp(-\gamma\,t)\] である(解説「半減期の数学・ベクレルとモル数」を参照。すでに記号が統一されていなくて申し訳ない)。 ちなみに半減期 (half-life) \(t_\text{HL}\) は、\(p(t_\text{HL})=p(0)/2\) により決める。 よって \(\gamma\) と \(t_\text{HL}\) は、 \[t_\text{HL}=\frac{\log 2}{\gamma},\quad\gamma=\frac{\log 2}{t_\text{HL}}\] の関係で結ばれている(もちろん \(\log\) は自然対数)。
時刻 \(0\) から \(T\) までの積算の被ばく量 \(P(T)\) は(理系の大学一年生なら絶対にできてほしい積分で) \[ P(T)=\int_0^Tdt\,p(t)=\frac{p(0)}{\gamma}\,(1-e^{-\gamma\,T})=\frac{p(0)\,t_\text{HL}}{\log2}(1-2^{-T/t_\text{HL}}) \] と評価できる。 ちなみに、\(\gamma\,T\ll1\)(つまり \(T\ll t_\text{HL}\) )ならば \(P(T)\simeq p(0)\,T\) であり、積算の被ばく量は時間に比例する。 一方、\(\gamma\,T\gg1\)(つまり \(T\gg t_\text{HL}\) )ならば \(P(T)\simeq p(0)\,t_\text{HL}/\log2\) であり、積算の被ばく量は一定値に落ち着く。 念のために書いておくと、\(\log2\simeq 0.69\), \(1/\log2\simeq 1.44\) である。
よって、現在の線量率が \(p(0)\) なら、そのうち \((2.7/3.7)\times p(0)\) は半減期が 2 年のセシウム 134 から来ており、そのうち \((1/3.7)\times p(0)\) は半減期が 30 年のセシウム 137 から来ているとみなす。 これを上の一般式に代入すればいい。
仮に今の線量率が p μSv/h だとすると、t 年間での被ばく総量を mSv で表わしたものは、 \[ \Bigl\{\frac{2.7}{3.7}\frac{2}{\log 2}(1-2^{-t/2})+\frac{1}{3.7}\frac{30}{\log 2}(1-2^{-t/30})\Bigr\} \times 24\times 365\times 10^{-3}\times p \] となる。 具体的には、1 年間で 7.7 p mSv、5 年間で 26.4 p mSv、10 年間で 39.0 p mSv、50 年間で 88.6 p mSv と計算できる(こんなに有効数字はないけれど)。