昔していたこと、考えていたこと
ホームページの「最近している(していた)こと、考えていること」(など)の欄の古い記事。(1997 年から 2000 年 3 月まで)
新しいものから、古いものの順。
-
(3/21/2000)
「死ぬほどすばやく」と下で書いたのは、
本当に一瞬にして系のハミルトニアンを変えてしまうということを表していた。
しかし、これを書いた後、ラーメンを食べにいって出てくるのを待っている間に考えていたら、
もう少しゆっくりでも、
つまり「部分系はついてくるけれど、部分系と熱浴がエネルギーをやりとりする暇はないくらいすばやく」
くらいなら取り扱えることがわかった。
これは、まあ、うれしい。
部分的とはいえ、
量子力学と「固有状態についての等重率の原理」から最大仕事の原理を導くことができたといっていいと思う。
-
(3/16/2000)
相変わらず、
「量子力学から『最大仕事の原理』を導く」
といった地味なことをやっている。
死ぬほど(というより、宇宙が何回も生まれたり死んだりするくらい!!)
ゆっくりと系を動かす場合は出来ていたので、
今度は、死ぬほど(系の状態が量子力学的スケールでもまったくついて来ないほど!!!)
すばやく系を動かすときを考えていた。
以前からの枠組みと同じ仮定のもとに、
一応出来たような気がする。
もちろん、「死ぬほど」と断らなくていいような状況を扱うのは、
ものすごく難しそうだが、
「死ぬほど」難しくないことを祈るばかり。
-
(3/9/2000)
熱力学の本の校正をすべて終了。
「熱力学 --- 現代的な視点から」の冒頭を書き換えました。
-
(2/17/2000)
実に珍しく研究会に出ているので、書いておこう。
今日と明日は、田無の(かつての)核研でやっている
「量子力学の新局面」
に参加。
ほとんど初めての話ばかりなので、頭の刺激になる。
とても楽しい。
-
(1/31/2000)
大学の物理教育メーリングリストなるものの存在を知ったので、
大学で物理教育を行なっていることだし、
参加してみることにした。
(5/19/2000 に退会)
-
(1/31/2000)
気がつくとまたしも学期末。
がんばって試験の採点をしなくては。
この学期に大学院むけに開講した
「英語による発表と討論の実践」
は、参加してくれた学生さんたちのおかげで、楽しいものになった。
最後の何回かは、ファインマンの教科書の輪講をやめて、
ボランティアで自分の研究について発表してくれる人を募ったら、
多くの学生さんががんばって発表してくれた。
みなさんの研究テーマについてじっくり聞く機会ができて、
私としては、非常に楽しくためになった。
(何回か参加して、去って行った学生さんたちも、
もちろんいる。
おおい、元気かあ?
ぼくを嫌いになるなよお。(英語も。))
-
(1/2/2000)
あけましておめでとうございます。
熱力学の本と『「知」の欺瞞』の翻訳の仕上げに追われて過ごす暮れとお正月になりました。
どちらも、もうすぐ一段落しますから、
再び、解けそうにもない問題についてぼけえええっと何日間も考える日々に戻ります。
量子力学からカノニカル分布を出す話は、
すこしずつ毛色の違った例をふやしつつあるところです。
ある程度のところで、これまでに考えたことをまとめて readable な論文を書きたい。
-
(11/2/1999)
熱力学の本は「熱力学 --- 現代的な視点から」といった題で、
出版することに決めた。
悩んだ末に「入門」の看板は下ろす。
4月の新学期には、間に合うように、今は最後の仕上げの作業中。
-
(10/20/1999)
大野克嗣さんが「数理物理99」のために学習院に来られ色々と議論したのを機会に、
大野さんらの非線型問題でのくりこみ群を厳密に実行することを真面目に考えてみた。
二階の常備微分方程式に関しては、ある程度のことはできたのだが、
それでも彼らの方法の "magic" の正体はわからない。
彼らの処方箋に従うと、驚くほどうまくいくということがわかるだけ。
今は、目先を変えて、一次元のシュレディンガー方程式(など)で、
半古典近似を越えることなどを考えている。
-
(8/28/1999)
「熱力学入門」の改訂の作業はまだ続く。
東京を離れている間に、付録の大幅な書き足し、
巻末につける問題を作った。
さらに、熱機関、微分形式、平衡状態と温度の導入などなど
随所を大幅に書き換え中。
学期が始まる前に、一通りのめどをつけたいものだ。
-
(8/3/1999)
「熱力学入門」の改訂の作業は続く。
化学平衡のところを大幅に直し、
水溶液中の反応のところは徹底的に書き足し、
電池は全面的に書き換えた。
また、浸透圧も議論することにした。
さらに、前に書いてあった凸関数と Legendre 変換の数学についての
まとめ(証明も完全)を付録として復活することにした。
というわけで、改訂作業は、いつまでたっても終わらないのであった。
-
(7/26/1999)
「熱力学入門」の改訂の作業中。
水溶液中の化学反応と濃淡電池のところが、やはり欠陥品だったので、
大幅に書き直している。
今度は大丈夫だとは思うが、まじめに考えてみると、pH なんていうのも
実にデリケートな概念なのだということがわかる。
そう思うと、参照した Atkin の物理化学のさりげない書き方はひどい。
(他人の本は信用しないですべて自分でやるという方針で書き始めたのだから、
人の本をみた自分が悪いのではある。
(しかし、自前の知識では、化学についてはなにも書けなかった。))
-
(7/14/1999)
最近考えていること。
「量子力学から統計物理を導く」ことを考えていて、その後、熱力学に没頭した私が次に考えているのは、あまりにも当然かもしれないけれど、
「量子力学から熱力学を導く」こと。
いろいろな意味で、馬鹿の一つ覚えかもしれないとは思っている。
しかし、決して当たり前の問題ではないとうこともちょっとは書いておこう。
「もし量子力学から統計物理学が出せるなら、統計物理から熱力学が出るのだから、おまえの目標はあほらしい」という批判はあたらない。
(平衡)統計物理は、純粋に平衡系の性質だけを議論する体系だが、
完成している(たとえば私の本に書いてある)熱力学は、単に平衡状態だけではなく、平衡状態の間の任意の移り変わりを扱う体系である。
そういう意味で、熱力学は平衡統計物理などよりは、圧倒的に広い範囲の現象をカバーする。
「統計物理から熱力学が出る」というのは純然たる迷信に過ぎない。
(この迷信を信じている統計物理の「専門家」もいて、そういう人が熱力学の講義をしていたりするというのが一つの問題。)
考えている問題は、たとえば、「量子力学に基づいて、最大仕事の原理を『導く』こと」。
実際、系+熱浴を一つの大きな孤立した量子系として、系への外界からの操作をハミルトニアンの時間変化として実現する(これは、標準的な解釈で、そういう方向の研究は特に古典力学では、多い。日本でも、関本さんや佐々さんのとてもきれいなお仕事がある。)ことにすると、準静的な操作の際の仕事が Helmoholtz の自由エネルギーの差になるという結果は、(量子系のレベル交差についての一定の仮定をすれば)量子力学における断熱定理のごく簡単な帰結である。
これは、最大仕事の原理の一部に過ぎない。
肝心なのは、この準静的な仕事が最大仕事を与えるという点。(第二法則の一つのいい方。)
これは、準静的ではないハミルトニアンの時間変化の解析(と系についてのいくつかの仮定)から出てくるはず。
これは難しい。
いい加減な話ならできる。
準静的でない変化がおきると、(摂動をやればすぐにわかるけれど)周辺の準位への遷移がおきる。
この遷移が「十分にランダム」として扱えれば、話は簡単。
状態密度についての自然な仮定だけから、最大仕事の原理がでてくる。
お話としては、これで、完全。
(どこかに書いてあるのは読んだことはないけれど、知っている人はみんな知っているような話。)
問題は、これをどこまで理論的に説得力のあるストーリーに高められるかということ。
「直観的」(といっても、摂動展開やら、golden rule の闇雲な応用(の成功!)に支えられた直観ということ)には、明らかにみえることを、時間依存のハミルトニアンをもつ本質的に非可解な量子系で、きちんと示したい。
(この場合は、「直観」に正当性がないので、これは技術的な問題ではない。)
ほとんど無理難題にみえる。
いい方をかえれば、かつて Boltzmann が古典系で考えたようなことを、フルに量子系でやってみたい。
単に、量子系になって難しくなるという話ではなく、量子力学であることが本質であるような視点をみつけたいというところか。
-
(7/12/1999)
一瞬雑用が片づいた気がして、久々の改訂。
-
(5/13/1999)
今学期は新たに解析力学を教えている。
こうやって、新科目を教えると、かつての不勉強が補われて
色々発見もあるので楽しいのだけれど、反面、
色々やっていることがあるので、新しい講義を準備するのはなかなか負担。
それでも、ようやくハミルトンの変分原理とモーペルチュイの原理との関係
などが見えてきたので、嬉しい。
(熱力学の講義は「革命」を目指しているけれど、
解析力学は、見通しがよいのを目指す程度かな?)
1年生の力学で、剛体がカバーできなかったということなので、
最初はじっくりと剛体の議論をした。
先週の講義では、まずコマを回してみせて、歳差運動の計算をし、
次にジターリングを回してみせて、それから棒の周りにわっかが巻き付いて回る
定常解を導いた。
(今更、講義では緊張しないけれど、ジターリングをみんなの前で回す前はどきどきした。)
これで、剛体はひとまずおわり。
今週からは、変分原理へ。
光の屈折を変分原理で議論し、
その類推から、段差状のポテンシャルでの保存系の力学の「屈折」を
変分原理で書き直す。
これで、モーペルチュイの原理が出てくる。
この変分原理に現れるエネルギー一定の拘束条件を Lagrange の未定乗数法で
処理すると、ハミルトンの原理が出る。
多くの教科書の天下りに比べれば、わるくないでしょう?
(というプランを考えて悦に入っていたら、最後のステップ以外は、
江沢先生の未発表のノートに書いてあった!
ううむ。さすが。)
-
(12/14/98)
一応の完成の見えてきた「熱力学入門」を中断して、数理科学4月号に載せる記事を書いていました。
結局、私が模索している統計物理の導入法についての地味な解説を書きました。
原稿のテーマがなかなか絞りきれずに、編集部の方には(またしても)ご迷惑をかけてしまったようです。
これで、また「熱力学入門」に戻れるかというと、そうでもなく、まずは、たまりにたまっている教務関係の用事を片づける必要があるようです。
-
(11/28/98)
ずっと、ひたすら熱力学と取り組んでいる。
教務委員としては、来年度の時間割などなど頭の痛い宿題がたくさんある。
-
(8/2/98)
夏休みは、曜日の感覚もなく、ひたすら熱力学の講義ノートをまとめています。
既にノートは分厚いけれど、ゴールはまだまだ。
Alan Sokal や Jean Bricmont の昔からの友達だったことなどからわゆる Sokal 騒動には前から関心があったので、彼らの新しい本 Intellectual IMPOSTURES を仕事の間にちょっとずつ読みながら色々なことを考えている。
そのうち、ぼく意見をまとめて書ければいいとは思うけれど、やはり優先順位は物理の方がずっと高いので、どうなることか。
このあたりのことを知りたい方は、東北大の黒木玄さんの web page にあるリンク集や掲示板を見るといいでしょう。
-
(7/14/98)
研究会も終わり、後は教務の雑用を片づけて、試験の採点を終えれば、基本的にはやりたいことに本気で取り組める。
後期には熱力学の講義が始まるのだから、講義ノートの作成を急がないとなかなか大変だ。
-
(5/27/98)
熱力学の方も、中盤にさしかかってきた。
稀薄溶液の浸透圧はきちんと導けたが、沸点上昇はまだ悩んでいる。
(その後、どういう仮定が必要かは理解したつもり。)
普通の本の書き方は私にはなかなかわからない。
Gibbs のパラドックスは(パラドックスはないと)きちんと理解し説明したつもりだけれど、Maxwell の悪魔は今一つ理解しきれない。
black hole は(ノートに書くかどうかは別として)やはり自分なりに理解しておくべきだろうと思って、勉強中。
-
(5/23/1998)
振り返ってみると、この半年間は、ほぼ全勢力を初等熱力学の勉強と再構成に費やしている。
私なりに作りなおした熱力学をまとめた講義ノートもほぼ半分くらいはできつつある。
TeX でタイプセットしたものが既に 130 ページを越えているので、先が思いやられる。
今年の後期の講義が始まるまでには、何とか最初の公開版を仕上げたいと思っている。
-
(5/23/1998)
「統計物理の展望」には、とてもたくさんの方から参加申し込みをいただきました。
色々な意味で有意義な会になるように、微力ながらがんばりたいと思っています。
(研究会ホームページへ)
-
(3/11/1998)
相変わらず、熱力学三昧の暮らしである。
今年の後半から始める講義に向けて、講義ノートを作っている。
といっても、熱力学を私なりの観点と趣味と哲学に基づいて、全部再構成する試みなので、持てる能力を全開にする必要がある。
(温度一定の熱力学から入り、まず自由エネルギーを導入。次に断熱を議論した後、一気に絶対温度とエントロピーが入る。無限個のカルノーサイクルを考えたり、エントロピーの微小変化を積分したりという通常の(わかりにくい)議論は一切使わない。)
骨格は、できているが、最低限の物理的な要請から出発して、全てを論理的に展開して、実用的な応用まで議論し、かつ、勉強する学生さんたちにわかりやすいものにするというのは、大変な道のりだと痛感している。
(全く不勉強だった物理化学もこの機会に少しかじっている。)
それでも、ようやく熱力学を通した物理の風景が見えるようになってきた気がする。
統計物理の基礎付けなど、研究テーマとして考えていたことへの、アプローチの仕方も自ずと変わってくる(望むらくは豊かになってくる)と思われる。
この熱力学の再編の試みについては、また詳しく書きたい。
-
(4/6/1998)
7月に、京都で「統計物理の展望」という研究会を開くことになり、私も世話人としてある程度働いています。
(私なりの)主旨は、なるべく統計物理全体を見渡すような研究会を開いて、分野の風景を知り、人々の交流をはかることです。
私は、研究会の世話といった「表だった」ことはほとんどやったことがなかったのですが、今回は、大切な試みではなかろうかと感じて、世話人をしています。
興味のある方は、詳しい案内をご覧下さい。
-
(3/8/1998)
熱力学についての理解を深めようと思い、山本義隆さんの「熱学思想の史的展開」(現代数学社、1987年)を読んだ。
文句なく面白い、素晴らしい本だ。
完成した熱力学の後知恵でいい加減に歴史的なエピソードを並べた「科学史」ではなく、当時の人々が何を求めようとして、何を考えていたのかが、明確に書いてある。
答えがわかって、今日風の熱力学が出来ていくところ以上に、熱素説などを中心に模索を続けているあたりが面白かった。
とにかく、読み始めたら、やめられないという本であった。
さらに、著者が熱力学についての(標準的な教科書の著者を越える)深い理解を持っていることも、本質的だ。
-
(3/10/1998)
京都の基礎物理学研究所で開かれる「基礎物理学の展望1998」という物騒な題の研究会にでかけていって、話をして来る予定。
内容に関心のある方は、プログラムを見て下さい。
-
(2/2/98)
年末以来、熱力学のお勉強にどっぷりつかったままになってしまった。
とても面白い。
何を考えているか等については、いずれ詳しく。
-
(12/31/97)
私の積年の懸案の一つに熱力学をきちんと理解するということがあった。
98 年度の後期から熱力学の講義を担当することになり、この機会に深く理解しようと思い、何冊かの教科書を手元に勉強中(そして、例によって、私の感性にもっとも合う熱力学を目指して考察中)。
ほとんどの本に見られる論理の甘さやごまかしは大いに気になる。
また、準静的、可逆、断熱などの定義が教科書ごとに違っている(さらに定義を曖昧にしか述べていない本も多い)のには驚いた。
本質的な用語の定義がこれほど不統一な分野は(物理では)他にはないのでは?
教科書で勉強する学生にとっては不便なことだ。
この夏にでた Lieb, Yngvason の公理論的熱力学の論文(preprint sever にリンク)もこの機会に再び読んでいる。
これは、なかなか、すごいもののようだ。
-
(12/18/97)
しつこく予告し続けてきた Hubbard model に関する二つのレビュー
- From Nagaoka's ferromagnetism to flat-band ferromagnetism
and beyond: An introduction to ferromagnetism in the Hubbard model
(preprint sever にリンク)
- The Hubbard Model: Introduction and Selected Rigorous Results
(preprint sever にリンク)
がついに相次いで完成。
特に、From Nagaoka's to... の方は、71ページの大作になった。
固体物理をあまり知らず、Hubbard model を初めて勉強する方にも十分読めるレビューにしたつもり。
色々とコメントを下さったみなさんに感謝します。
Hubbard model での強磁性についての1995 年のレターの本論文は、1998 年に最大の優先順位で書くことにする。
-
(12/18/97)
長いレビューを Los Alamos の preprint archive に送った。
Instruction を見ると、Eudora でも送れると書いてあった。
これは、便利!
でもファイルを19個も attach しないといけない。
いちいち file open dialog から読み込むのは面倒だなああ・・・と思ったけれど、待てよ、finder で必要な files をまとめて選択して、Eudora のお手紙の上に drag and drop すれば、・・・、おお、うまくいった!
後は、ボタンを押せば出来上がり。
これは、簡単だ!
と、よく考えてみると、Apple events を利用した inter-application communication などを利用していたわけですね。
Mac OS は System 6.0.x で完成したというのは、やっぱり言い過ぎか・・・
-
(12/18/97)
アメリカからは、無事に帰国しました。
9年ぶりのアメリカ訪問は、色々な意味でとても有意義で楽しかった。
帰国後は、来年度の時間割を作ったり、論文を次々と仕上げたりと、働いています。
-
(12/17/97)
量子力学から統計力学を導く話のレターは、Phys. Rev. Lett. に載ることになった。
今日最終的な修正を行ったバージョンが、preprint sever にあります。
-
(12/16/97)
昨日まで、10日間アメリカに行って来た。
Princeton を後にしてから、実に9年ぶりのアメリカだった。
昔からの友達や、今まで会ったことのなかった人たちなどと、出会えて、有意義であった。
-
(12/4/97)
12月5日から15日までアメリカに行って来ます。
申し訳ありませんが、その間、e-mail はまったく読みません。
私は「忙しい」という言葉は禁句にしたいと思っているのですが、出発前に色々な用事が重なっておそってきて、とても慌ただしい日々になってしまいました。
帰国後に、この web page の書き換えや、九分通り完成している二つのレビューの仕上げをしたいと思っています。
-
(11/13/97)
物理学会誌11月号に亀井先生が書かれた書評を読んで、内容はもとより、文章の素晴らしさに感銘を受けた。
大江健三郎を思わせる文体だが、大江にはない頭をすっきりさせてくれるような透明感がある。
書き出しと締めくくりが微妙に呼応する構成にも、まったくわざとらしさがなく、ひたすら感服するばかり。
-
(11/12/97)
ようやく、Nagaoka ferro + flat-band ferro のレビューの下書き第3段が完成。
われながら、時間がかかっている。
結局70ページにふくれあがってしまった。
実験の(拙い)解説や、(数学者向けの)Hiblert space の構成法やバンドの説明などまで入っている。
これに微修正を加えて、公表する予定。
-
(10/26/97)
朝日新聞夕刊の記事に関連して
-
(10/26/97)
「忙しい」と言い切ってしまうのは嫌なのだが、どうも色々と時間をとられることが多い。
科学者にとって一番大切な仕事は瞑想や夢想なのだから、これはよくない。
二つのレビューはどちらもほぼ完成に近づいている。
さっさと仕上げたいものだ。
ただし、Nagaoka ferro + flat-band ferro のレビューの方には LaBaCuO (高温超伝導物質の親戚)での強磁性についてのコメントを加えたい。
この強磁性が、flat-band ferro とかなり似通っているということを、超伝導工学研究所の平林さんに教えていただいた。
理論というのは実験の有無に関わらず価値を持つ物ではあるが、ある程度関連のある実験があるというのは不思議にうれしいことだ。
ただし、現実の物質と Hubbard model の関連をきちんとつけるのは至難の業だろう。
私自身は、そこまでは深入りしないと思う。
-
(10/14/97)
ようやく Mac の system を 8 に変えた。
desktop printer のバグは取れていたようで、ようやく TeX の印刷がまともにできるようになった。
それにしても、System 8 は何が本質的にすぐれているのだろう?
Mac OS は 6 で multi finder がでた頃に基本的に完成して、十分使いやすくなったと思うのだけれど。
色々わけのわからない機能が付いているようだけれど、かなり基本的な file open, file save のダイアログがほとんど進化しないのも気になる。
大きさも形も変えられないし、ここだけは使い勝手が妙に前時代的。
いずれにせよ、印刷機能に欠陥のある OS (7.5.5, 7.6.1)を堂々と出荷している Apple Japan のやり方は気に入らないですね。
-
(10/10/97)
二つのレビューの内の一つめ From Nagaoka's ferromagnetism to... の仕上げに入ってきた。
しかし、例によって仕上げに入ってからが遅い。
色々書き足したいことや、やはり全面的に書き直すべきところなどが次々と出てくる。
-
(10/10/97)
PowerMac 7600/200 に変えて、Textures 1.8.2 を使い始めたら、日本語 OS の desktop printer にバグがあるらしく印刷ができない。
なんと、印刷の度に Quadra を起動するというまだるっこしい状況である。
Bluesky Research の web pagesの情報では、日本語の 7.5 や 7.6 にはバグがあるらしい。
結局 system 8 に乗り換えるしかないようだが、困った話だ。
-
(10/2/97)
忙しいという言葉は好きではないけれど、何となく色々な事に時間をとられて慌ただしく時間がたっていった。
少し落ちついてきたので、やりかけの仕事を早く終わらせて、新しいことをはじめたい。
時間の空きを利用して、この web page にも手を加えたい。
-
(10/2/97)
Hubbard model 関連のレピュー論文二つが形を成してきた。
一つは、From Nagaoka's ferromagnetism to flat-band ferromagnetism
and beyond: An introduction to ferromagnetism in the Hubbard model
という長い題で、長岡の強磁性について一生懸命考えていると、平坦バンド強磁性に到達する道が見えてくるという事を書いた。
私はこういう筋道で平坦バンド強磁性を見いだしたと言ってしまうと少々短絡的だけれど、こういうことをずっと考えていたのも事実。
この論文は、Hubbard model を初めて勉強する人にも読めるように丁寧に書いているつもり。
原稿を数学畑の人にも読んでもらっていて、新しく Hubbard model を手がけたいという数学者にも取っつきやすいものにしようと思っている。
もう一つの論文は、
The Hubbard Model: Introduction and Selected Rigorous Results
で、見ての通り、厳密な結果に限ったレビュー。
これは、ずっと前に「固体物理」に書いたレビューの英訳(ただし、バッハの音楽と多体問題についてのイントロは略)にかなり加筆したもの。
-
(8/20/97)
Los Alamos の preprint server (および全世界のミラー)こそが、論文をしまっておくべき場所だという認識に(ようやく)到達した。
遅ればせながら、TeX で書いたのに、server に送らなかった出版ずみの論文も、少しずつ server に送り、論文リストからきちんとリンクをはることにした。
私は TeX に移行したのがかなり遅かった。
今更だけれど、先見の明がなかったと思う。
-
(7/23/97)
量子力学から統計力学を導くということについて考えているが、考えれば考えるほど問題の深さと難しさを感じる。
この一年間くらい、一つのアイディアを追求していて、ささやかな出発点として、特殊なおもちゃについての厳密な結果を得ている。
先日ようやく,レター論文(preprint sever にリンク)と、証明の詳細をまとめた informal note(preprint sever にリンク)を公表した。
しかし、ここから先、おもちゃを越えて本当に意味のある結果が出せるかどうか?
何年も瞑想を続ける事になると思う。
-
(7/?/97)
Hubbard 模型での強磁性について,長岡強磁性から flat-band 強磁性にいたる一つの筋道を描き,さらに,最近の発展にも触れるという半ばレビュー的,入門解説的な論文を書いている.
Hubbard 模型などの問題を理論的に扱ってみたいと思っている人たちに,この分野の魅力を生き生きと伝えるようなものにしたい.
もう一つ,
レビュー的な論文を J. Phys. に書くことになっている。
さらに,Hubbard model の強磁性については, 1995 年の Physical Review Letters に発表した結果の full paper は未だに準備中。
今年こそ、読みやすいものを書き上げる予定。
-
(7/?/97)
岩波講座現代の物理学 13 「くりこみ群の方法」の第2刷が7月に出た。
私の担当分でも、若干の間違いの修正をした。
本質的な書き足しはないが、
Tom Kennedy
らの非線形性が強い場合のくりこみ群の定義可能性についての新しい結果について少し詳しく紹介した。
-
(3/?/97)
3月に物理学会 Haldane gap の論文選集(勝又紘一さんと共編著)がでた。
最近はこの分野での仕事はしていないが、素晴らしく魅力的なテーマなので、かなり力を入れて編集と解説の執筆に取り組んだ。
解説は、「最も魅力的なテーマを通しての量子スピン系入門としても読める」ことを目指したもの。
-
(??/97)
講義について
-
統計物理の講義では、確率論の導入を今までよりもすっきりと、しかもきちんとやりたい。
特に、ある物理量のゆらぎが小さいということの意味を明確にするために、Chebyshev の不等式を教える。
多くの教科書が中心極限定理みたいな難しい話に触れている割にはずっと簡単で応用の広い Chebyshev に触れていないのは困ったものだという気がしてきた。
物理屋が確率論の人たちの価値観をそのまま受け入れる必要はないはずなのに。
(繰り返し試行を行ったときゆらぎが小さくなっていくというのが確率論でスタンダードな大数の法則の表現だけれど、物理で重要なのは巨視的な量についてはたった一回の試行で、ほぼ確定した値が得られるという側面だと思う。)
統計力学の導入は、ミクロカノニカルを(表面的には)経由せず、直接カノニカル分布を導入するという方法をとる。
これは、案外見通しがいいのではないかと思っている。
-
力学の講義では、何を教えるかをもう一度吟味して、
おそらく Kepler 問題の比重を少し軽くするだろう。
剛体の(並進)運動は、マクロな物理法則の普遍性の典型的な例なので、早めに議論しよう。
(カオス入門などを除けば)スタンダードな内容の中で、物理における普遍性の概念の重要性をより強調していきたい。
田崎晴明
学習院大学理学部物理学教室
田崎晴明ホームページ
hal.tasaki@gakushuin.ac.jp