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更新日 2018-01-27 | 作成日 2010-01-21

国際政治の視点から見た子供社会

(2008年度法学部広報誌より抜粋)

  •  英国学派の大家H・ブルは『国際社会論』において国際社会はアナーキー(中央政府不在)ではあっても国家間の関係には一定の秩序が存在すると論じている。例えば、「勢力均衡」や「国際法(規範)」がそういった秩序をもたらしていた。実はアナーキーという意味では子供社会も国際社会と同様の性質を帯びている。つまり、刑法が適用されない子供社会は本質的にアナーキーであり、少々殴る蹴るなどの暴力をふるっても加害者側が実質的な不利益(制裁)を被ることはほとんどない。
  •  そのような子供社会であっても以前はブル的な秩序が存在していた。例えば、「弱い者いじめをしてはならない」、「喧嘩は正々堂々とやらなければならない」といった社会規範意識が確かに存在し、子供同士の縦の関係や地域の大人の目を通じてこれらの規範が伝承されていた。いわば強制力を持った法がなくても攻撃のエスカレートを防止する自律的な秩序が子供社会にもある程度形成されていたのである。ところが、今では縦の関係は消滅し、また肝心の大人の眼差しも偏狭な利己主義(例えば、塾通いの低年齢化を見よ)へと変質したため、このような規範意識が伝承されるメカニズムはもはや存在しない。国際社会ではあれば帝国化する大国に飲み込まれる恐れから勢力均衡(バランシング)の原理が働くが、子供社会にはそのような恐れも存在しない。いや、むしろ力を持つ側に加わることが、法も規範も存在しない現代の子供社会では、自らの安全を保障する最善の手段となる。その結果は、バンドワゴニング(勝ち馬に乗る)であり、昨年メディアを賑わしたいじめ問題の深刻化である。加担する子供を責めるだけでは問題は解決しない。アナーキーな子供社会にいかにして秩序を再興させるのか、国際社会と同様の構造的課題を子供社会は抱えている。

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