- [序論]
Wineは、よく知られているように
Microsoft Windows
のプログラムを
unix系
(Linux, FreeBSD, Solaris など)
のプラットフォームで動かすことができるようにするソフトウエアです。
その仕組みは、簡単に言ってしまえば
Microsoft Windowsのプログラムをロードし、
Windows APIをunix
系のOS (のX上)で、エミュレートする、というものです。
*
まだαリリースなのですが、
Wine Application Database
や、
2chlinux.org のWine の動作報告
を見る限り、現在ではかなりの数のアプリケーションが動くようです。
[10/13/2005]
Wineの最新版は、
http://www.winehq.org/
からダウンロードできます
(まだようやくαリリースの最後にたどり着いたところですが)。
Wineは、GNU LGPL
の元に配布されているフリーソフトウエアです。
私がWine
を必要とした理由は、
IDS
(Institut für Deutsche Sprache)
が配布している言語コーパス検索プログラムcosmasが
がWindows上でしか動かない、
ということが分かったからです。説明を読むと、Wine
を使えば、Linux
上で動くと書いてあったことが直接の動機です。
実はすでに、Wine-20050211.tar.gzと、
COSMAS V.3.4.2(c2-install-v3.4.2.exe)
の組み合わせを試しており、
ほぼ正常に動作したことを2005年2月の時点で確認しています。
今回は、Wine-20050930.tar.gz(ソースファイル、お
よそ12538KB)とCOSMAS V.3.6(c2-setup-v3.6.exe)
を使いました(rpm のバイナリーは試していません)。
- [前提]
今回も、VineLinux3.1CRの素のkernel2.4.27-0vl7
を使っています。すでに、VineLinux 3.2が2005年9月18日にリリースされ、
kernel-2.4.31が出回っていますが、
諸般の事情から、カーネルのバージョンアップを見送っています。
以下の説明では、ユーザー名=hoge、
マシン名=oraoraとしてあります。
- [ソースファイルのダウンロード]
http://www.winehq.org/
からたどって、近くのftpサイトから、Wine-20050930.tar.gz
をダウンロードし、展開します。~/srcで展開しまし
た。
[hoge@oraora src]$ tar xfvz Wine-20050930.tar.gz
すると、wine-20050930
というディレクトリが作られます。そのディレクトリに移動し、
中味を見てみます。
[hoge@oraora src]$ cd ./wine-20050930
[hoge@oraora wine-20050930]$ ls
ANNOUNCE DEVELOPERS-HINTS README dlls/ loader/
AUTHORS LICENSE VERSION documentation/ programs/
BUGS LICENSE.OLD aclocal.m4 fonts/ server/
COPYING.LIB Make.rules.in configure* include/ tools/
ChangeLog Makefile.in configure.ac libs/
- [コンパイルの前の準備]
READMEファイルを読むと、
(1) XFree86-devel, (2) gcc >= 2.7.2,
(3) make, (4) flex (version 2.5 or later), (5) bison
がコンパイル条件ですが、VineLinux3.1
は、(2) gcc (3.3.2 20031218), (3) make (GNU Make 3.80)
なので条件を満たしています。また、印刷に
cupsを使っている場合には、
(6) cups-develも必要になります。
そこで、
(1) flex (2) bison (3) XOrg-devel
(4) freetype-develがインストールされていない環境の人は、
これらをapt-get install
などでインストールしておきます。
例えば、以下のような感じで、上の4つをインストールします。
[root@oraora hoge]# apt-get install flex bison XOrg-devel freetype-devel
- [QUICK START]
README を読むと、
Whenever you compile from source, it is recommended to use the Wine
Installer to build and install Wine. From the top-level directory
of the Wine source (which contains this file), run:
./tools/wineinstall
と書いてあるので、これを試してみます。
なお、QUICK STARTは、コンフィギュア、
コンパイル、
インストールまで自動でこなしてくれるスクリプトではありますが、
ソースからのコンパイルですからそれなりの時間がかかります。
(参考データ:Intel Pentium M 1.40GHz で、real 22m18.244s, user 17m29.360s
sys 0m53.350s でした。)
[hoge@oraora wine-20050930]$ ./tools/wineinstall
configureが終わった段階では、
最後に以下のようなメッセージが出ます。
...
config.status: creating tools/winebuild/Makefile
config.status: creating tools/winedump/Makefile
config.status: creating tools/winegcc/Makefile
config.status: creating tools/wmc/Makefile
config.status: creating tools/wrc/Makefile
config.status: creating include/config.h
config.status: executing dlls/gdi/enhmfdrv commands
config.status: executing dlls/gdi/mfdrv commands
config.status: executing dlls/kernel/messages commands
config.status: executing dlls/user/resources commands
config.status: executing dlls/wineps/data commands
config.status: executing include/wine commands
*** Note: Your system appears to have the FreeType 2 runtime libraries
*** installed, but 'freetype-config' is not in your PATH. Install the
*** freetype-devel package (or its equivalent on your distribution) to
*** enable Wine to use TrueType fonts.
Configure finished. Do 'make depend && make' to compile Wine.
We need to install wine as root user, do you want us to build wine,
'su root' and install Wine? Enter 'no' to continue without installing
(yes/no)
freetype-develパッケージは
すでにインストールされていますが、freetype-config
というパスは存在しないようです。ここでは、後のことを考えて、
noを選択しました。つまり、コンパイルはするが、
インストールをしない、という選択肢です。コンパイルが通るかどうか、
分からないので。
結果として、コンパイルは通りました。
- [インストール]
この状態では、インストールまで進んでいませんので、手動でインストール
します。
[root@oraora wine-20050930]# make install
...
make[2]: ディレクトリ `/home/hoge/src/wine-20050930/tools/wrc' に入ります
../../tools/mkinstalldirs -m 755 /usr/local/bin /usr/local/man/man1
/usr/bin/install -c -m 644 ./wrc.man /usr/local/man/man1/wrc.1
/usr/bin/install -c wrc /usr/local/bin/wrc
make[2]: ディレクトリ `/home/hoge/src/wine-20050930/tools/wrc' から出ます
../tools/mkinstalldirs -m 755 /usr/local/bin /usr/local/man/man1
/usr/bin/install -c ./winemaker /usr/local/bin/winemaker
/usr/bin/install -c -m 644 ./winemaker.man /usr/local/man/man1/winemaker.1
make[1]: ディレクトリ `/home/hoge/src/wine-20050930/tools' から出ます
./tools/mkinstalldirs -m 755 /usr/local/share/aclocal
mkdir -m 755 -p -- /usr/local/share/aclocal
/usr/bin/install -c -m 644 ./aclocal.m4 /usr/local/share/aclocal/wine.m4
/sbin/ldconfig
*************************************************
*************************************************
The installed Wine libraries will not be found!
You can either:
Add the line '/usr/local/lib' to /etc/ld.so.conf and run /sbin/ldconfig
export LD_LIBRARY_PATH=$LD_LIBRARY_PATH:/usr/local/lib
*************************************************
*************************************************
という感じで終了します。
最後に出ているメッセージに従って、ここでは、root になって
/etc/ld.so.conf
に、
/usr/local/libの行を書き加えて、保存し、
root 権限で、
/sbin/ldconfigを実行しました。
[hoge@oraora wine-20050211]# /sbin/ldconfig
これで、インストール終了です。
- [動作確認]
初期のころからWine
の動作実験に使われていた、Windows
のソリティアを動かしてみます
(このマシンはデュアルブートで、Windows XP も入っています)。
今回は、winというディレクトリを作り、
そこにsol.exeをコピーしておきました。
動かし方は簡単で、
[hoge@oraora win]$ wine sol.exe
とするだけです。これで、
このようにソリティアが立ち上がります
(gnome-games に入っているFreeCell Solitaire
と比べると、貧弱ですね)。無事に動作して、
カードがボヨンボヨンと跳ね回るところまで行きます(少し遅い)。ただし、
「カードの模様を変更」をクリックすると模様が見えません。
何か設定の仕方があるのかもしれません。
[10/13/2005]
(./wine/config
ファイルで path の指定ができるようです。wine sol とか、
wine c:\\windows\\sol.exe とか、
wine /usr/windows/sol.exe のような形も可能、とREADMEには書いてあります。)
Wine に対しての覚え書き (1):
一般ユーザでWineにソフトウエアをインストールすると、
ホームディレクトリに、.wine(ドット付きディレクトリ)
ができ、そこにdrive_cというディレクトリができ、
そこがc ドライブとしてWine
から見えるようになります。そこには、すでに、
My Documents Program Files windows
のような標準的なディレクトリが生成されています。
[10/13/2005]
Wine に対しての覚え書き (2):
Wine に関するドキュメントは、
wine-user.html
で見るか、
wine-user.pdf
をダウンロードしてじっくり読むことができます。
[10/29/2005]
Wine に対しての覚え書き (3):
.wine/drive_c/windowsをのぞいてみると、
notepad.exeもあり、
試しに
[hoge@oraora hoge]$ wine notepad
としてみると、日本語の通るNotePad
がちゃんと起動しました。日本語入力もばっちりで、
保存するとShift-JISのファイルが出来上がっています。
[10/13/2005]
Wine に対しての覚え書き (4):
インストール作業ディレクトリの下に以前は、
/documentation/samples/config
があったのですが、
Wine20050930.tar.gzには入っていませんでした。
どうやら、system.reg user.reg userdef.reg
に変更されたようだ。
[10/15/2005]
Wine に対しての覚え書き (5):
Wine の操作性を向上させるさまざまなソフトウエア
が開発されています。
有名なものは、例えば、
WineTools
で、2005年10月13日現在、WineTools 2.1.2が配布されています。
Wineは、設定次第ではいろいろできることが分かってきましたが、
はまると大変そう。試しに、
WordPadを入れてみたが、
日本語の扱いに難がある。もうちょっと設定の仕方があるような気もするのだが。
[10/15/2005]
- [cosmas v.3.6 のWineへのインストール]
(1) 念のために、gnome-terminal
の文字コードをiso-8859-15
にセットアップしました。(万一、
ドイツ語のエラーメッセージが出た時に、問題なく見れるように、
と思ったのですが、結論から言うと不要でした。)
(2) 英語環境でcosmasのインストールをします。
VineLinuxの.bashrc
には、最初からalias eng='LANG=C LANGUAGE=C LC_ALL=C'
がエイリアスとして登録されていますので、これを利用します。
[hoge@oraora win]$ eng wine c2-setup-v3.6.exe
これで、後は質問に答えていくだけでインストールは終了します。
(ドイツ語文字の文字化けはありません)。
- 参考
(a)
最初に現われるWindow(Setup von COSMAS II)には、
以下のメッセージが出ます。
Bestätigen Sie bitte die Installation von
COSMAS II, Version 3.6
Entstehlungsdatum 2.06.2005
für
WINDOWS 95 /98 /NT /2000 /XP
auf Ihrem PC
OK Cancel
最後の2つは、ボタンで、ここでOKをクリックすると先へ進みます。
(b)
Install 終了のメッセージが出たところで、
Window が閉じますが、
その後、コンソールに以下のメッセージがでていました。
err:menubuilder:extract_icon32 ExtractFromEXEDLL failed, error 1813
err:menubuilder:InvokeShellLinker failed to fork and exec wineshelllink
明らかに Wine の出したメッセージですが、
cosmas のインストールの最後の部分が、うまく実行できなかったようです。
cosmas 自体の実行には、問題ないようです。
- [cosmasの実行]
ユーザー権限でインストールしましたので、ホームディレクトリの直下に、
.wineというディレクトリができていて、
その下にインストール時に指定した path があるはずです。
私は、今回、ProgramFiles
というディレクトリを作成しました。
その結果、(ユーザー名 hoge の場合、)
/home/hoge/.wine/drive_c/ProgramFiles/C2/bin
に、c2mgcl.exeが配置され、
これがcosmasの実行ファイルです。
[hoge@oraora bin]$ eng wine c2mgcl.exe
として、無事にcosmas 3.6
が立ち上がりました。
cosmas 3.6で、
unterlief のKWIC検索をしているスクリーンショットは、
こんなです。
また、検索後に選られた個別データを参照ている場面のスクリーンショットは、
こんなです。
- [cosmas をインストールした感想]
(1) 日本語版のWindows
で起きる文字化けは、一切ありません。
TrueType Fontsの認識ができているので、
実際に画面に現われる文字フォントは自由に選べます。以前の Wine + VineLinux
では、できていなかった部分です。
(2) cosmas は 6301、6302ポートが空いていないと動かないので、Firewall
の中にいる時は、ネットワーク管理者と相談しましょう。
(3) データをテキストファイルとしてexportすると、
iso-8859-1あるいは、iso-8859-15でハードディスクに保存されます。
Linuxでは問題なく読めますが、
Windowsでは、
Latin-1を扱えるエディタが必要になります。
Windowsユーザの人は、rtf
(リッチフォーマット)でexport
して、Word
で読むといいでしょう。[10/15/2005]
(4) 日本語のWindows上で
cosmasを使って起きる文字化けは、
どうやら避けられないようです。WindowsXP
上で実験してみた結果は、このようになりました。
ここでは、フォントをTimesNewRoman
にして、ちゃんとドイツ語フォントが見える環境にしているのですが、
このありさまです(プログラム側に責任があるように思います)。
Linuxでの
前にあげた結果
と比べてみてください。フォントは違いますが、同じ画面です。
[10/15/2005]