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明日の講義でデモンストレーションにつかう地球ゴマを買いに池袋の東急ハンズへ。 電話で問い合わせたところ、7階のゲームコーナーにあるとのこと。 たしかに、「南京玉すだれ」などと並んで売っている。 ぼくらが子供の頃は、たしか、小学校の向かいの文房具屋に必ず置いてある有名なおもちゃだった気がするのだが、時代はかわり、 講義で学生に聞いても誰も知らなかった。
ついでに、ジュンク堂に寄り、思想書のコーナーをチェック。 ついでに上の方の階に上がって物理の本のコーナーを覗くと、意外にも 「熱力学」が本棚のなかに表紙を表にして6,7冊重ねて置いてあった。 ジュンク堂は立派な本屋さんなのだ。
解析力学の講義。 先週コマの才差運動の計算の途中だったので、そのつづき。 でも、計算の前に地球ゴマをつかって、実際の運動をみせる。
運動を見ているだけでもまずは面白いのだが、 地球ゴマが愉しいのは、回っている状態のコマの枠をもって手で動かしてみると、 通常の物体とはまったく異なった、極めて違和感のある反動を感じること。 これが、まさに角運動量 J の運動方程式を手で実感していることになるのだ。
講義のあと、前に出てきた学生さん達に「J を感じろ」と言って遊ばせた。 (みんなが「おお!J だ!」と騒いでいるなか、一人「え?ジェイってなんだ?ジェイってなんだよ?」と言っているやつがいた。 講義と関連してるっていう気持ちがないのか?) 「これは買いだぜ!」とか調子よく騒いでいたが、果たして本当に買いにいったことか? しかし、不器用にも糸をからませたりするやつ、はては、力あまって糸を切ってしまうやつがいるのには驚いた。 統計力学の講義のあとにも遊んでもらったら、けっきょく、糸が二本切れ、ふたつ買った地球ゴマのうちの一方は軸受けのところががたついてしまった。 実験の先生はたいへんだな、と思った。
力学の講義のあと、みかけない女の子が前にやってきた。 実は、少しまえの日曜日、風邪をひいた息子を自転車に乗せて池袋の休日診療所に連れていく途中で、池袋でデートをしていた物理学科の男子学生とばったり出会ったのだけれど、彼女はそのときの彼女であった。うちの大学の文学部の学生さんだそうだ。(受験生のみなさん:理系も文系も同じキャンパスで生活できるというのが、学習院大学理学部のメリットのひとつです。(ただし、同じように生活するわけにはいきません。)) 「子供を乗せて自転車で走り去る姿が印象に残り」 彼氏が授業に出るのでいっしょに見に来たのだった。 なんと光栄な。
「わからなかったけれど、おもしろかったです」とのご感想をいただいた。 物理学科の学生さんたちも同じ感想を持っていないことを祈るばかり。 (これは真剣に悩むことでは、ある。またの機会にゆっくりと書きます。)
「パリティ」から Elliott Lieb, Jacob Yngvason の "A fresh look at entropy and the second law of thermodynamics" Physics Today 53, no. 4 を翻訳しろと言ってきた。 佐々さんやぼくの熱力学へのアプローチに大きな影響をあたえた彼らの公理論の仕事の短い解説。 (preprint server に図のない本文だけのバージョンがある。) じっくり読む機会でもあるしと思って、この週末にざっと訳した。 訳してみると、当然わからないところがでるので、ヨーロッパに旅行中の Lieb が Princeton に戻ったらきいてみよう。
「パリティ」では8月末に原稿ができればよい、と言っているので、 掲載されるのはずっと先でしょう。
昨日の翻訳の草稿を何人かの知人にみてもらったところ、 さっそく、いくつかのコメントをいただいた。
また「エントロピーと熱力学の第二法則の新しい顔」という意訳したタイトルもよくない、とのご意見。 ごもっとも。 しかしながら、 「エントロピーと熱力学の第二法則を新しい角度から見直しましょう」 じゃタイトルにならないし。 「エントロピーと熱力学の第二法則に新しい光をあてる」 みたいな路線でなにかうまい手はないか?
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