日々の雑感的なもの ― 田崎晴明

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茶色の文字で書いてある部分は、相当に細かい仕事の話なので、ふつうの読者の方は読み飛ばしてください。


5/1/2006(月)

駒場の日。

「現代物理学」の講義のあと、笹本さんと大あわてて食事。 学食で空いているところに座ったら、またしても、同じテーブルにさっきまでの講義を聞いてくれていた女の子(先週の女の子とは別の人)がいらっしゃって、照れてしまった。 自分の講義に出ていた女の子の隣りに座りまくるセンセイと思われそうだが、実際は、お話する暇などなく大あわてで食事をして、国場研の連続セミナーに向かったのだ。 急ぎ足で歩いてぎりぎりで間に合う。

今日は、お茶大数学の武部さんのお話を聞く。 武部さんのお名前は前から知っていたが、お会いしたのは先週がはじめて。 数学の話はわからないだろうと思っていたら、物理向けのサービスも多い明快なお話で、非常におもしろかった。 Loewner equation がどういうところから出て来たかについて Bieberbach 予想の歴史を含めての解説が第一部、dispersionless KP hierarchy という可積分系の特殊な解が Loewner equation と対応するというお話が第二部。 この先、quantized Loewner equation と full KP hierarchy の特殊な解の対応というのが、いかにも、でてきそうである(いや、もちろん、とんでもなく難しいのだろうけど)。 それにしても、Loewner equation などという関数論がらみの通な方程式が、最近になって、数理物理の二つの異なった問題に顔を出すというのは、面白い話だ。

その後、小松さんと彼らの論文について議論。 さらに佐々さんと中村さんにも会いたいと思ったがお二人とも部屋にいない。 あきらめて廊下を歩いていると、まさにお二人が並んであちらから歩いてきたので立ち話。

学習院に戻って事務で雑用。 それから会議。 ずっと続いて、8 時過ぎまで。その後、少し雑用。

家に帰って遅い夕食。 個人的なことで、少し驚く(悲しい)電話。

たいへんよく働き、とても疲れた、そして、長い一日であった。


5/7/2006(日)

連休のあいだにやっている雑用の一つは、「理学部パンフレット」の増補改訂版の作成。

諸般の事情により超特急のスケジュールを業者に無理を言ってお願いしているから、こちらもがんばらねばならない。 諸々の原稿や資料の締め切りが、明日 8 日の午前中と言われている。 明日は朝から駒場で講義だから、今夜のうちにすべてをとりまとめて送る必要がある。

万が一ネットワークが止まることなども想定し、不完全なものは昨日の夜の間に送ってあるのだが、今日は(私用で出かけて戻ってから)新しく化学科の中村さんがまとめてくれたデータ(ぼくは文字化けしていて読めなかったのを数学科の中野さんが読めるようにして送ってくれた)を取り込み、文章の最後の手直しをする。

そして、ついに、夜の 9 時 36 分に

パンフレット原稿最終版
と題した長いメールを業者に送ることができた。 偉いぞ、おれ。
さあ、講義の準備だと思っていたら、その後、中村さんからさらに力作の新しい集計結果が届いた。

これは取り入れないわけにはいかない。 さらに、見ていると表紙に載せようと思っていた文面も手直ししたくなってきた。

そのあたりの修正をほどこし、ついに、夜の 10 時 29 分に

パンフレット原稿究極最終版
と題した長いメールを業者に送ることができた。 偉いぞ、おれ。
さあ、講義の準備だと思っていたら、その後、中村さんからさらにいくつかの手直しの提案が届いた(ちなみに、中村さんのところでは、一週間前に光ケーブルが入って、家でネットを始めたばかりだそうです)。

これは取り入れないわけにはいかない。 さらに、見ていると見開きページに載せようと思っていた文面も手直ししたくなってきた。

そのあたりの修正をほどこし、ついに、夜の 11 時 34 分に

パンフレット原稿絶対究極最終版
と題した長いメールを業者に送ることができた。 偉いぞ、おれ。

というか、






たちの悪い RPG のラスボスかよっ!

5/8/2006(月)

連休は、基本的に、私用と雑用で終わったが、悪い気分はしていない。


本日も、駒場に行き、
講義 → 質問に答える → 講師控室にマイクを戻す → 笹本さんと境界条件と状態の関連について議論しつつ学食で早飯 → 国場研セミナー → 清水さんをたずねて小一時間で四つくらいのテーマについて超凝縮トーク → 学習院に戻って理学部パンフレット増補改訂版の打ち合わせ
という濃密スケジュール。

国場研 Stochastic Loewner equation (SLE) 連続セミナーは M1 の学生さんの発表だったが、極端に難しいところを避けて上手にまとめていたのではないだろうか? ぼくは、「必要なところでやわらかいツッコミをいれる優しいおじさん」だったと思うんだけど、どうです?

今日みせてもらった具体的な計算を反芻していると、SLE の g_t(z) の発展則とランダムウォークの時間発展則の関係がおぼろげながら見えてきた気がする。 電車に乗って考えていると、critical percolation のクラスターの境界に沿ったウォークが SLE で書けるという事実の導出なら(やらないとぶつぞとか脅されて、必死で時間をかけてがんばれば)自力でできるんじゃなかろうか、と思えてくる(もちろん、最終結果を教えてもらっているわけだからゲームとしては圧倒的に楽だし、そもそも勘違いかもしれないし)。 もし、ぼくが思っている方針でできるものなら、論文を読めば理解できるだろうから、余裕があればぼくも勉強して国場研セミナーで発表とかした方がいいのかなあなどと考えていると、佐々さんも同じことを書いていた。 しっかし、余裕ないなあ。

夜になって、打ち合わせも終わって、お茶部屋でコーヒーを飲みながら、高麗さんと宮沢さんに、SLE のミニ講義をしてしまう。 完璧な耳学問だけど、どういう話かだけを説明するなら(方程式なんて思い出す必要もないほど単純だし)非常に楽ちん。 それにしても、どうやったらこんな話に気づくのか。 あらゆる意味で想像を絶しておるわい。


5/11/2006(木)

かの有名な(?)「跳ね返り係数論文」

The coefficient of restitution does not exceed unity
が、ようやく J. Stat. Phys. に掲載されることが決まる。

ぼくが、怠慢で気が多くて、レフェリーのコメントへの返答が遅れていたということもあるが、随分と時間がかかったものだ。 最後の何回かのやりとりでは、一人のレフェリーが非常に細かいところまで注意深く読んでくれて、厳密に考えると抜けている仮定や、誤解を招きそうな表現や、ついには文法ミスまでも指摘してくれて、論文は圧倒的に改良された。 どなたかは知りませんが、感謝しています。

archive に残っている初期のバージョンを見ればわかることだが、ぼくは、最初この論文を Phys. Rev. Lett に投稿した。 もちろん、PRL は「籤(くじ)」だし、ちょっと変な論文だし、通る可能性がそれほど高いとは思っていなかった。 とはいえ、決して凡庸な論文ではなく、それなりに新しい境地を開くものだから、

「確かに、このような結果が厳密に示せることは重要で意義深い。 しかし、新しい予言などが出てこないところは(センセーショナルな論文好みの) PRL には不向きなのではないか」
というようなレフェリーレポートをもらい、そこで論争を挑むことを想定していたのだった。

しっかあし、蓋を開けてみると、でてくるレフェリーレポートは、

とか、ばっかり。

ずいぶんレフェリーが多いと思うだろうけど、ろくなレフェリーに当たらないので、次々と新しいレフェリーを要求したのだ。 もっと多かったかも知れない。 しかし、何人レフェリーを頼んでも、けっきょく、同じような人しか出てこない。 論文の価値についての論争をする以前に、そもそも何が証明されているか、きちんと理解できていない人しか来ない。 まして、証明の中身など全く理解できるわけもない。 想像するに、「物理的主張をじっくりと論理的に導出する」という文化にほとんど触れたことがなくて、公式に入れて計算したり、単に数値計算したりとかいう「理論物理」だけしか知らない団体の方たちのお世話になってしまったようだ。 しかし、それなら「自分には数学はわからないし、こんな数学的な論文は PRL にいれることないぜ」と正直に言えばよさそうなものを、わかっているふりだけをしてナンセンスな難癖をつけるというのは不正直だよな。 学問的スタイルが違うのは仕方ないけど、そういう知的不誠実はイヤだ。

いくらレフェリーを変えても、まともな人が一人も(!)出てこないので、さすがに嫌気がさして、論文を少し余裕をもって書きなおして J. Stat. Phys. に送った。 こっちでは、三人のレフェリーが、論文の内容と意義を理解してくれた上で、実に適切な批判やコメントやついには建設的なアイディアまで出してくれる。 ほんとうに別世界だった。 ぼくがもたもたしていて時間はかかったが、掲載決定までの道のりは順調だった。

PRL に載らなかったことは別に気にしていないけれど、結局まともなレフェリーが出てこなかったのは困ったことだと思う。 単に担当エディターがまずくて、まちがった母集団からレフェリーを選んでいたということかもしれないけれど、これが数理的なものを敬遠する傾向の現れだったら困ったことだ。


5/12/2006(金)

よんどころない私用で、昨日・今日と、何人かの方にお世話になる。 ありがとうございました。


5/13/2006(土)

大学時代の同級生 I の「お別れの会」。


I が三月に急逝していたことは、つい先日、大学時代の友人の M からのメールで知った。 元気でスポーツマンだった I のことを思い出すだに、未だに信じられない。

ぼくらは、やはり同級生だった I の奥さんのことも昔から知っていた。 というより、昔の I のことを思い出そうとしても、彼女といっしょにいるところしか思い出せない。 学生時代からお似合いの素敵なカップルだった。

残された彼女の心情を(とうてい想像できないとは知りつつ)思うと、会って励ましてあげたいという気持ちと、いったい何を言えばいいのかという戸惑いの板挟みになる。


九州からかけつけた原と待ち合わせて(SLE やぼくらの本の話をしてから)会場へ。

I がこれまでの人生で属してきたいくつかの組織の同窓会が同時進行しているような感もあり、専門も学科も違うぼくらは、どちらかというと部外者。 何人かに挨拶してから、奥さんと言葉を交わし、献花する。

最期がいかに突然だったかなどを聞くだに悲痛。 奥さんには、せいいっぱい心をこめて「がんばってね」と言ってきた。 それが、ぼくらにできる唯一のことのようだ。

月並みだが、I のご冥福を心からお祈りします。


会では、久しぶりにお茶大の森川さんに会い、原といっしょに自己重力系の話を聞いた。

卒業後、医学部に入り直して阪大の医者になった S と会うのは、卒業以来だろう。 あの頃の S を、そのまま少しデブにして髭をはやして、おもろいおっちゃんの小児科の先生にしたらこうなるだろうという、まさに、そのままの様子だった。


5/15/2006(月)

講義をしていると暑い。駒場はとくに。


今日の国場研セミナーシリーズは、香取さんによる確率過程のミニ講義。 条件付きのプロセスについてはほとんど知らなかったので有益。 また SLE についても、少しだけ直観が増した気がする。

香取さんによると、「田崎さんの先週の日記(8 日)を読んで、早めにやっておかないとまずいと思った」とのこと。 香取セミナーの実現に少しでもお役に立てたなら光栄。

セミナーの後は、駒場の学食で笹本さんと長々と話し込む。


渋谷で笹本さんとわかれた後、一人で青山通り方面に歩いていく。

ほんの少し前に他界した身内が、ぼくが小さい頃から二十年以上前までずっと、青山通りを少し入ったところにあったアパートで暮らしていた。 せっかく渋谷に来たので、その場所を訪ねてみようと思ったのだ。

しかし、前にアパートを訪れてから軽く二十年は経っている。 いや、そんなもんじゃない。二十五年か・・・。 長い年月だ。

そして、言うまでもないだろうが、青山通りの周囲には新しい巨大なビルが建ちまくり、昔の面影はほとんど消え去っている。

さらに、一応お断りしておこうと思うが、ぼくは圧倒的な方向音痴であり、頭のなかの地図というものが全く存在しない人間である。

そうは言っても、子供の頃から大学生の頃まで、何度も何度も歩いた道だ。 たとえ景色が変わっていても、仁丹ビルがなくなっていても(←ここで懐かしさに震えた人は相当に古いねえ(俺もだけどよ))、足が自然と動いて、ぼくは古く懐かしいアパートの前に立っていた・・





となることを(マジで)期待していたのだが、やっぱし迷ったああ!

もう、じぇんじぇん、わかりましぇん。 お風呂屋もないし、猿が飼われていた空き地もないし、マンションばっかしだし。 何本も何本も横道に入って、歩いて、引き返して、という動きをくり返す。 なんか、あやしいおっさんみたいじゃないか。 いや、あやしくないですよー、散歩しているだけですよー、という感じを全身で表現しながらスタスタと歩きまわる。

それでもダメ。変わりすぎ。どうせアパートなんかないだろうし。みつからない。みつかるわけない。あー、やっぱり行きつけっこないやあと、あきらめかけたとき、青山通り沿いに、むかーしからある酒屋を発見。 なつかしい名前。 店舗はきれになっているが、酒屋そのものは、ぼくが子供の頃からこの場所にあったのだ。

酒屋を起点にして、正しい角を曲がって歩いていく。 それらしい場所にビルがあり、かつてのアパートの大家の名前がローマ字であしらわれている。 古いアパートの面影はまったくないが、たしかに、この場所だ。

怪しまれない程度に、あたりの様子を検分したところで満足して、向きをかえて青山通りに向かって歩き出す。

あああ、これだ。この景色だ。 右側に少し大きな白い建物があり、正面の青山通りの向こうに青学の塀が連なっているのが見える。 子供の頃から、祖母といっしょに、何度も何度も何度も歩いた道だ・・・

ちょとだけ眼鏡が曇った。


5/16/2006(火)

お昼頃、少し用事があって訪れた大学保健センターから出てくると、学食の前のステージで学生バンドが「群青日和」をやっていた。 ほとんど女の子のバンドで、ボーカルの黒い髪の女の子(←日本は黒い髪の人が多いはずなんだけど・・・)は声もかわいいし、とても楽しそうに歌っていた。 ドラムスは男だったけど、勢いがあって手数も多くて何よりも非常に元気に楽しそうに叩いていて評価高し。

今年度の目白音楽祭の田崎特別賞(なんだ?)はこのバンドに決まりか。

そういえば、今日の子は「あなたを思い出す」のところは、公式な歌詞の通り「体感温度」って歌ってましたね。 林檎はぜったい、そうは歌ってないよね(二月の武道館では少女合唱団の手前、ちゃんと「体感」だったけど)・・・


5/18/2006(木)

SLE (Stochastic Loewner equation) 関連の論文のめぼしいものをいくつか印刷して眺めているが、(二次元の臨界現象だから物理としてはオタッキーなものだということは認めた上でも)世界の広さ、数学としての美しさ、そして何より物語としての意外さと壮大さに感動しまくり。 とくに、すべての出発点になった Oded Schramm の 2000 年の論文

Scaling limits of loop-erased random walks and uniform spanning trees
は、これだけでこの世界の概形を描き出してしまっていて、圧巻。 もっと小出しにいろいろな結果が出てきて、この世界の様子が徐々にわかっていったのだろうと想像していたのだが、実際は、最初からドカーンと来ていたわけだ。 すごいやつである(四十歳をぎりぎり過ぎたところでの仕事なのでフィールズ賞をとれないんじゃないかという噂を聞いたけど、ともかく、フィールズ賞クラスというのは本当みたいだ)。 偉いど、Schramm。

自分で研究することなどあり得なくても(←これは正直に、そうなのだ。能力としても、動機としても)、基本的なところは自分の目で見て理解しておきたいと感じる。 こういう風に感じるというのは、ぼくが研究者としてまだまともな証だと思うので、うれしいよね。 そうは言っても、きわめてヘヴィーな中身だし、そもそも二次元は避けてきた世界だし、きちんと理解するのは大変そう。

何かとっかかりがないかと、ネットでいくつかの論文をみつけてスクリーンで眺めていたら、今日、 Vincent Beffara という人の書いた

Cardy's formula on the triangular lattice, the easy way
という短いプロシーディングスをみつけた。 SLE(6) とパーコレーションの関連を議論するとき、三角格子上のパーコレーションの臨界点が conformal invariance を持つという Stanislav Smirnov の仕事が必ず話に出てくる。 Beffara の論文は、この Smironov の証明(正確には、境界上の二つの区間が連結する確率が Cardy's formula に従うという事実の証明なのだが)をできるかぎり簡潔に明快に整理し直して書きなおしたものだ(単なる技術的な書き直しだけでなく、本質をより明確にする改良点もある)。

これを読み始めてみると、意外にも、けっこう読める。 というか、なんか、面白い。

印刷して家に持って帰り、夜になってから、一生懸命に読む。 図がないから、いっぱい絵を描きながら、イベントをつくって証明を追っていく。

何だ、この等式?? こんなもの正三角形状の格子とか特別の場合じゃなきゃ成り立つわけないではないか。どこかに対称性の仮定があるのを読み落としたんだろ。うううむ。どこにもそんな仮定は書いてないぞ。ということは、成り立つのか?! 証明はスミルノフを見ろだと・・ ええと、ネットで探してみよう・・・ あ、これだ。この論文のこの補題かな??? げ、証明めちゃ短いじゃん。ノーテーションが違うから読む気しないし、こんな短いんなら俺もできないと頭に来る。「色を逆転する」というフレーズが一瞬見えてしまったし、そこが p=1/2 を使うところだな、さては。よし、自分で証明するぞ。絵を描いて・・・ うううううううん。おおっ!! こうかっ!!! スミルノフ、なんたるかしこい奴じゃ!!!! (付記:この時点では、ぼくは証明の基本の「絵」は把握していたが、微妙に難しい部分までは復元していなかった。)
絶妙の組み合わせ的論法、二次元パーコレーションの偉大な伝統を踏まえた確率論的評価、関数解析的な議論による収束の制御、そして、解析関数と共形変換についての名人芸。四つくらいの異なったアプローチがみごとに融合して、信じがたいほど美しい結果が厳密に示されている。 Schramm のような壮大な世界をつくっているわけではないが、簡潔さと美しさは、圧倒的なレベルである(ただし、Smirnov はパーコレーション全体の連続極限を構成するという、より野心的な壮大な問題にも言及し、結果を出している)。 おまけに、この証明は、共形不変なパーコレーション理論のもっている深い関数論的対称性をも示唆するという深遠なおまけ付き。

楽しい。楽しい。人の仕事を勉強して、こういうさわやかな感動が味わえるのは、うれしいことだ。

偉いぞ Smirnov、あなたも素晴らしい!  Beffara、賢いぞ。あなたのおかげで、素晴らしい世界に接することができた。ありがとう!

と、読んでくれるはずのない人たちにメッセージを送ったところで、明日の講義の準備だ・・・


5/20/2006(土)

今日は、「語ろう数理解析」のシリーズで、佐々さんが早稲田でセミナーをする日だ。 ぼくもこのシリーズで名古屋でセミナーをした(12/5/2003, 12/8/2005)ことがあるが、主要なメンバーは楽しい人ばかりでとても好感をもった。 学問的な話をしても楽しいが、いっしょに飲んで話すのも実に楽しかった。

というわけで、佐々さんのお話を聞き、それから「語ろう」の連中や早川さんも交えて早稲田の街に飲みに行くというのはなかなかに魅力的なことだ。 とくに、早稲田は「語ろう」の主要メンバーの古巣なので、濃厚な早稲田文化トークが展開されることが期待されるのである。

早稲田理工キャンパスまでは自転車で二十分なので、寸前までどうするか悩んだが、来週にむけて準備しておくべきことの多さを考えて断念した。 ちょっと寂しかったが。


しかし、遅くまで寝ていたくせに、しばらく仕事をしていたら夕方にまた眠くなってけっこう昼寝してしまった。 やっぱり、この歳になったら、週末は休まないとダメってことなんだろう。
晴れたり、突風が吹いて雨が降ったりと、妙な天候の日。 けっきょく、今日は一日、家の外に出なかった。

そのかわり、風呂の前に筋トレを一通り(足をあげる腹筋50回、上体をあげる腹筋50回、背筋50回、腕立て50回、スクワット50回)。


5/24/2006(水)

高二の息子が化学の中間試験の寸前(正確に言うと、前日の深夜)になって、

「有機化合物の命名法がまったくわからない。教えろ」
という。

それはまったくもってぼくの領分ではないから、あちらに聞けと娘にバトンタッチする。 娘は、そんなことを試験前夜まで持ち越すべきではないと姉らしく説教したあと、基本的なルールを説明している。 そして、「メタ、エタとかいう数を表す部分は丸覚えしてしまうしかない」と言って、覚え方のこつを教える。

 娘 「ペンタゴンは五角形でしょ。だからペンタンは5」

 息子「なるほど」

 娘 「ヘキサンは6だけど、ほら、『クイズ・ヘキサゴン』ってやってるでしょ」

 息子「あ、やってるね」

 娘 「オクタンは、オクトパスがタコで、タコの足は8本だから、8」

 息子「うん」

 娘 「で、ブタンは、ブタの足は4本だから、4」

 俺「あ、そう来るか!」

ていうか、やっと覚えられそうだ。


5/26/2006(金)

ふう。

実に濃密な一週間であった。今週を無事に終えられて、感謝。

とくに、昨日の単発の「現代科学」の講義が思ったように楽しくできたのが、うれしかった。


5/31/2006(水)

Wikipedia 日本版の多体問題専用計算機 GRAPE の解説。

簡潔で明快な文章、概略から詳細に自然に流れる読みやすい構成、(開発者も太鼓判を押す)内容の正確さ、と三拍子そろっている。 今までは、ただ「重力多体系専用の計算機をつくった」としか認識していなかったが、これを読んでわかった気になった。

Wikipedia の解説がすべてこのレベルに達していれば何の文句もないが、もちろん、これは例外中の例外。 特別に知識と能力のある方が、時間を割いて書いてくれたから、こういうものができたのだ。 この正確な解説が、他の人によって改悪されるなんてことが将来おきたら、ますます Wikipedia はダメだという例証になるぞ。

ちなみに、この項を今回大幅修正した Hina 氏の得意分野を拝見すると

椎名林檎
というのもあるので、そちらにも期待しましょう。
新一年生との懇談会。
「学習院は緑が多くてきれいで、大学生活は楽しいし、先生の人数も多く丁寧に教えてくれるので満足しています。」
みたいなことを、別に宣伝でもないのに素直に言って下さるので、うれしくなる。 というわけで、ここにそのまま書いて宣伝しちゃおう! 

あとは、

「板書がやたら速くて、書き写すの精一杯という先生がいるんですが・・・」
って、俺だろ!

黒板をすべて写していると聞けないというのは永遠の課題だが、経験と技術で、相当のところはカバーできるのだなあ。 試しに、写さずに必死で聞いてみるというのも楽しいと思う。

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言うまでもないことかもしれませんが、私の書いたページの内容に興味を持って下さった方がご自分のページから私のページのいずれかへリンクして下さる際には、特に私にお断りいただく必要はありません。
田崎晴明
学習院大学理学部物理学教室
田崎晴明ホームページ

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