学習院大学 東洋文化研究所The Research Institute for Oriental Cultures

研究プロジェクト

一般研究プロジェクト

A23-2 戦時期の学習院と東アジア(2023年度)

 

構成員
代表研究員 栗原清
研究員 梅野正信
客員研究員 斎藤俊彦  山元研二  蜂須賀洋一
(1)研究の目的・意義

 戦時期(1941年~1945年)の学習院と東アジアとの接点を調査・斃理する研究である。第一は、戦時期の学習院・輔仁会雑誌等を含む関係資栂からアジア(台湾、朝鮮半島、中国等)に関わるキーワードをもとに特色と傾向を照理し、研究全体を概観する研究、第二は、戦時期に東アジア等から学習院に留学した児童•生徒・学生の記録、戦前期の学習院関係者による台湾留学生招致活動等、留学生の視点から学習院 を捉え直す研究である。大学史において留学生に着目した研究は広く行われおり、戦前期の学習院在籍留学生についても、村松弘ー「明治‐昭和前期、学習院の中国人留学生」(学習院大学国際研究教育機構研究年報:2017)が基礎調査を行っている。本研究では、先行する研究成果をもとに、学習院関係諸雑誌等 を含む諸資料の調査、可能な限りご迪族を含む関係者から聞き取り調査を行う。第三は、出兵した学徒たちの記録を再整理し、ご迪族のご了承を得られる範囲で、無理のない形で歴史を共有する資料を作成する とともに、学徒出陣とアジアとの関係を整理する研究である、初等科の疎開、中等科、高等科の勤労動 員、女子学習院の勤労動員については一定の記述を確認することができるが、学徒出陣については『学習院百年史第二編』(1980)において、第回学徒出陣壮行式(1943年11月22日)の出陣学生氏名、その後 の学徒出陣の人数、出陣学生と教官等の関係などが、『輔仁会雑誌』等をもとに記載されている。(第l章第3節第四項)歴史的にも貴厭な記録であるが、項数の関係から制約された内容にとどまっており、 「学徒出陣の碑」の背景的事実、出征した本学学徒をめくる事実、出征した東アジア地域の接点につい て、関係資料の収集・精査、ご協力を得られる範囲での、ご迪族の方々からの資料調査等を行う。  以上の研究を進めるにあたり、申請者が研究総括及び学習院内諸学校関係資料の調査を、学習院及び学習院同窓会関係調査を梅野正信、戦時期の学校及び教育に関する研究を斉藤利彦、近現代の歴史教育研究 の視点から山本研二(北海道教育大学准教授)がそれぞれ担当し、戦時期の学習院を学生と東アジアの視点からとらえ直すものである。なお、在台湾同窓生からの聞き取り調査は台湾桜友会の協力を得るべく連絡をとりあっている。

(2)研究内容・方法

 研究目的にあげたアプローチについて、輔仁会雑誌、後維に位置付く戦時期の雑誌・資料、戦後の回想録等、逍族の方々を含む可能な範囲での聞き取り調査を行う。また、戦前期の学習院に在籍していた留学生については、学習院関係諸雑誌等を含む諸資料の調査とあわせて、情報の提供が困難な対象者が少なく ない中、唯一協力を得る事のできる台湾在住の戦時期学習院在学生の聞き取り調査を行う。また、台湾桜友会の協力を得て実施する。また、戦前期、岡山等で、学習院出身の教育者が台湾からの中等学校進学生を積極的に受け入れていた歴史などを調査・整理する。  本研究は、雁史的・教育史的研究でありながら、人物を対象とする研究を含むため、研究倫理、研究者 倫理をふまえた慎重な対応を期し、学習院の歴史的事実の意義を確認し記述することに徹する研究とす る。なお、本研究の対象とする時期と内容に鑑み、調査資料等の取り扱いについて、個人と学習院の雁史 的意義及び役割をふまえて慎重に判断し、学習院アーカイプズ及び同所属・桑尾光太郎氏と連携し、学習 院所蔵の記録等、関係資料の精査・検討を進める予定である。