学習院大学 東洋文化研究所The Research Institute for Oriental Cultures

研究プロジェクト

一般研究プロジェクト

A23-3 東アジアの河川地形名と指示代名詞(現場指示)の言語地理学的研究(2023年度)

 

構成員
代表研究員 前田直子
研究員 安部清哉  中上亜樹
客員研究員 晋萍  新居田純野
(1)研究の目的・意義

◆アジアの歴史的研究において重要なテーマとなっている「河川地形名」(河川名)と「指示代名詞」 (指示詞)を対象とし、近年の研究を把握し地理言語学的観点から考察することを目的とする。欧州言語学では河川名は、古い言語思の重府を示す点で重視され研究が多いが、アジアの研究が遅れている。河川名が古陪の地域差を示すゆえ、アジアでの指示詞の2分法3分法の地理的相違と照合することに意義がある。日本語(とアジア)の河川名研究では安部の論文が多く下記(2)の蓄積がある。指示詞は2013年度東洋文化研究所PJ成果を継承する。最近10年間の新研究を収集し再検討することにも意義がある。 ①【河川名)中国語では「河/江」「渓/溝」の南北対立がある。日本語に「沢、谷、川、沼、池」等がありタニは朝鮮語起源、ヌマはアイヌ語・朝鮮語と同源、サワは南島語起源、ナイは日朝アイヌ同源。 ②【指示詞】アジア言語(日本語・中国語・韓国語他)における指示詞(コソアド詞)の用法に関し、 基礎である現場指示用法に焦点を当て、2分法・3分法の地域毎の実態を今回は文献調査、翻訳、現地調査、アンケート調査等を駆使し地理言語学的考察を行う。特に3分法と2分法とのアジアでの史的関係に焦点を当てる予定。アジアの指示詞は日本語(こそあ)や韓国語(イグチョ)のような3分法か、中国語、アルタイ語の2分法かの2種類、オーストロネシア(AN)語の3~5分法がある。2分法と3分法の偏在と史的関係を中心に見る。日本語は2分法から3分法に古代に変化したのが通説。中国語方言には3分法があ るという説が強く全てが2分法と見る説とが対立している。今回は特にこれらの点に焦点を当てる。また、可能な限り朝鮮語、台湾のAN語(サオ語等)、ヴェトナム語、タイ語なども対象とする。

(2)研究内容・方法

○準備状況:指示詞と河川名は、以下の安部(と研究協力者)の実組がある(l部)。 【河川名】●安部(2004)「言語地理学と日本語とアジア・環太平洋言語史」『日本語学』23-15. ●安部(2007)「日本語方言の形成過程における河川名の基層」(科研毀報告書: 小林隆代表)、●安部(2004)「地名の日本語一河川地形名の言語空間」『国文学解釈と鑑賞』69-7、●安部(2003)「関東における日本語方言境界線から見た河川地形名の重層とその背景」『国語学』54-3、●安部(20I I) 「東アジア(日本語・韓国語・中国語) の河川地形名の偏在と方言分布・気候との相関配布地図・補論」『玉藻』37、●安部(2005) 「日本語・朝鮮語の境界とモンスーンアジア文化圏ー水源地形名numa(沼)~下略」『大韓日語日文学会JOURNAL』●安部清哉(2008.3)「アジアの中の日本語方言」『方言の形成』 pp.123-167岩波書店、 【指示詞】●安部清哉・黄干椿(協力)2011.3「チュワン語の指示代名詞~略~」『学習院大学国語国文学会誌』54、横(59)~(77)、●安部清哉・晋滓(共著).2010.3「指示代名詞の中国語四川方言における三分法~略~」『東洋文化研究』12,p.511-548,●安部清哉2009.3「略~小川環樹1981「蘇州方言的指示代詞」(『東洋文化研究』11、pp.(1)~(50)、 ●安部清哉2009.3「指示代名詞の~高橋調査法による2008年若者の~」『学習院大学文学部研究年報』55、pp.73-112,●晋蔀・安部清哉,2011.9.「四川方言指示代洞三分現象 初探」『西南民族大学学扱』外国語言文学与文化研究32, ◆方法: ○方法【河川名】○日本・アジアにおける河川名研究の最新情報を収集する(日本はほぼ把握)。特に、各言語の方言における河川名の資料や情報収集に焦点を当てる。〇比較上最も研究が進んでいる欧州 言語での最新成果を収集する。0アジア・欧州の河川名の分布地図を収集し、地理学的な分析を行う。 ○方法【指示詞】:次のような調査を行いそれらの分析と考察によって総合的に解釈する。 A  先行研究による現場指示の用法の研究の翻訳と研究論文の収集・整理・考察。 B  現地での現場指示のシミュレーション調査(個別実地調査、多人数実地調査) C  話し手・聞き手同一視点の状況によるシミュレーション調査(検討案)―-高橋調査法による調査、個別に画像を見ての聞き取り調査、可視不可視調査等を、現場を設定しながら行う。