岡本順治研究室

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    「玉ねぎ魚 パート2」(Zwiebelfisch Folge 2) [10/31/05]

Zwiebelfischって知っていますか?<本の紹介>[8/19/2005] で書いたように、 Bastian Sick氏の Der Dativ ist dem Genitiv sein Tod. Folge 2 (ISBN: 3-462-03606-8, Kiepenheuer & Witsch, € (D) 8,90) が2005年9月に発売になった。今回の本は、ベストセラーになった第一作に続いて、 またまた現代ドイツ語のさまざまな実情を知ることができる興味深いものになっている。

前作との違いは、(1) 読者とのQ &A がある、 (2) 60問の「玉ねぎテスト(ドイツ語のテスト)」 (Zwiebel-Test: Wie gut ist Ihr Deutsch?) が付いている、(3) インデックスが付いて、単語を検索できるようになった、 というところ。

この本の魅力は、これまで語られてこなかったドイツ語の使用場面が、 事の大小にかかわらず世相に照らして語られていること、そして、 筆者 Bastian Sick氏の正直な感想と皮肉、 文体の面白さにある。しかも、もともと SPIEGEL ONLINEZwiebelfisch から本になったものなので、ネットから収集された情報も含み、 ドイツ語の現在の姿を写しているところが、さらに臨場感をもりたてている。

Folge 2を読んで、個人的に面白かったのは、 接続法の衰退(Der traurige Konjunktiv.)、 ドイツ語におけるフランス語からの借用語の衰退とアメリカ英語の影響 (Wo lebt Gott eigentlich heute?)hin-, her- の使い分け (Nach oben hinauf und von oben herunter.) 、スーパーーマーケットのレジで見かけるアレは何と呼ぶか (Wie nennt man das Ding an der Kasse?) 、「リンゴの食べかす」は、ドイツ語圏各地で何と呼ばれているか (Was vom Apfel übrig blieb.) 、 ドイツ語における継続相の表現の仕方 (Wie die Sprache am Rhein am Verlaufen ist.) 、などなど。

CD が出ているので、それもあわせて購入したのだが(それぞれ2枚組)、 第1巻の方は、俳優のRudolf Kowalski の朗読で、これがなかなかうまい。プロだから当然なのだろうが、 イントネーション、リズム、間の取り方、そして低い魅力ある声。 (日本で出ているドイツ語の教科書に合わせたCDのドイツ語を聞き慣れてしまうと、 感激してしまう。)ただし、朗読という性格上、 わざとテキストを変えてある部分もある。また、 本に収録されている話が、すべて吹き込まれているわけではないので要注意。
そして、第2巻のCD は、Bastian Sick 氏自身によるもの。第1巻のRudolf Kowalski と比べると声がやや高いのだが、書いた本人だけあって、 文章の「つぼ」を心得ていて、納得できる読み方である。

Lübeck出身の Geschichteと、Romanistik を専攻した著者だが、かえって Germanistik を専攻していなかったからこそ、このようなアングルから書けたのかもしれない。 つまり、「外国語をよく知っていたからこそ、ドイツ語が見えた」ということだ。
ちなみに、第2巻に登場するHenry という友人、なかなかのキャラクターですね(個人的に、 このようなタイプの人は好きです)。

最後に:
(1) Der Dativ ist dem Genitiv sein Tod. を読みこなすには、かなりのドイツ語力が必要。 しかも、現代ドイツ社会・文化的知識、日常的(な些細な)知識がないと、 分からない部分も多い。
(2) 中級以上の人に読んでもらいたい本だが、 「ドイツ人だって、こんなにドイツ語を間違っているんだ。 だから同じ間違いをしてもいい」と考えないで欲しい。
(3) インターネットに溢れる現実のドイツ語にも、 たくさんの間違いがあることにも注意を喚起したい。 (当たり前のことだが、 ネットに出ていたから「正しい」ドイツ語だ、ということはない。)


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