茶色の文字で書いてある部分は、相当に細かい仕事の話なので、ふつうの読者の方は読み飛ばしてください。
もう忘却の彼方に行きかけていたが、5 月には少しだけ時間を使って不毛な「いちゃもんつけ活動」をやっていたのであった。
「皿まで食らうど」という改心の駄洒落(5/17 の最後ね)で一世を風靡した後は何も書いていなかったが、いちおう「ラスボス」まで到達して、予想以上に予想通りのお返事をいただき、まとめのページのファイルの命名には実に先見の明があったわいと我ながら感心してこの件は終了。忘れた。とはいえ、こういうメールのやりとりを公開されることを何とも思わないという点で、この化学会会長・岩澤氏は私とは本当に違う世界に生きているんだと痛感する。 物理学会会長・永宮氏は(もちろん、様々な意味で遠く離れているわけではあるけど)辛うじて同じ世界を生きているんだと分かった。ま、いいか。本当に終了。本当に忘れた。
十分に広い平面に放射性物質が一様に付着している。 このとき、平面から一定の高さでの放射線の強さを水の吸収線量率で表現せよ。 とくに、放射性物質の密度をキロベクトル毎平米、吸収線量率をマイクロシーベルト毎時で表わしたときの高さ 1 メートルでの換算係数を評価せよ。などという物理の問題が「実用的」になってしまった。 なんということか。
牧野さんは、もうずっと前から(たとえば、2011/4/29 の日記)こういう計算について事も無げに言及しながら、鋭い分析を展開している(というより、牧野さんは、ほとんど何についても事も無げに鋭くやってしまうわけだけど)。 ぼくだって、さすがに牧野さんのやっている積分くらいは理解できるけれど、そもそも、(まあ,ベクレルはいいとして)シーベルトとか何なんだか分からないし、(たとえ後追いであっても)自分で同じような議論ができる気がしない。 web 上の解説なんかをみると、シーベルトはグレイに係数をかけたもので、グレイ (Gy) は J/kg のことだって書いてあるけど、なんでそれが放射線の強さの目安になるんじゃ? 物質の種類は? 形状は? 説明もないしわからん。
とまあ、そういう状態が続いていたわけだけど、やっぱりこれは自分でも最低限の理解はしておきたいと思った。
最近買って読んでいる放射線物理の本を見ても分かる気はしなかったのだが、ラッキーなことに、江沢洋先生が「東京物理サークル」のメンバーに回覧した「放射線はどう測るか?」というミニ解説があった(これは、出たばかりの「物理なぜなぜ事典 2」に収録されているぞ! 他にも読むべき記事が満載なので、1 巻もあわせてどうぞ!!)。 講義をやって疲れ切ったところで「学習モード」に切り替えて、メールから保存したファイルを(SugarSync 経由で!(5/17 の日記)) iPad にいれて読み始めた。 これが先週の水曜日か。
解説はさすがの江沢節。いつもながら、数学と物理のバランスが絶妙で、わかりやすい。 ようやくグレイが単位になりうる理由をなっとくした。 いくつになっても江沢先生にお世話になっていることよのお。
概念を理解したところで、牧野さんのやっていたような計算に挑戦。 数式をいじるのはまあ大丈夫なわけだが、いくつかのパラメターの数値がわからないのは苦しい。 江沢先生の解説にあったデータから外挿したり、前にダウンロードして iPad にいれてある IAEA の資料をひっくり返したりして、なんだかんだと評価を進めていくと、最後は、IAEA 推奨の換算係数にかなり近い値がでてきた。 これはめでたし。
どうせ学んだからには他の人にも読める解説を書いておこうと思い立ったのが木曜日? まあ、講義とか、ゼミとか、けっこう重要な会合とか色々あったのだけど、土曜か日曜には書き終えて、何人かの人に草稿(を置いた URL を)送った。 で、まあ、その後の話は簡潔に書けば、極座標の積分のところで \(2\pi r\,dr\) とすべきところが何故か \(\pi r\,dr\) になっているミスが発見されたのは知った人の身に危険が迫るほどの極秘の事実だが、そうなると結果が二倍近くあわなくなって、実は質量吸収係数と質量エネルギー吸収係数をいっしょくたにしていることがわかったり、新しいデータの入っている文献をネットでゲットしたりといろいろあって、月もかわった 6 月 1 日の夜に公開版の解説を脱稿。 ネットにあげて、日記で告知しようと思ったけど、なんせ月が変わるときは色々と作業が面倒なので、日記だけの読者を裏切って Twitter 上で告知。 次の朝おきたらけっこう広まっていた。
まあ、これも趣味的なもので、本気で「実用的」というわけではない。 でも、いろいろと考えるきっかけにはなるし、線量率の測定についても理屈で分かる部分は分かるようにまとめておく意義はゼロではなかろう。
あ、リンクを忘れていた。
ベクレルからシーベルトへです。
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/docs/BqToSv.pdf
む。 この URL? 田崎は何かたくらんでいるのか??
ひゃあ。一気に 2 週間近く経ってしまった。たいへんだ。
今学期は通常業務だけでもけっこう忙しいところに、ちょっとイレギュラーなことで定期的に時間をとられていて、おまけに、やっぱり昔のように仕事をし続ける体力はなくて、けっこう忙しくなってしまっている。 とくに、これから 7 月の前半くらいまでは、土日も含めてほとんど休む間もない感じで、いろいろとある気がする。 ていうか、明日の日曜日に、あれとあれとあれをすまさなければ、来週はちゃんと過ごせないのだぞっ!
ちゃんとご飯を食べ、できれば週一回くらいはプールに行って、体調を整えてがんばろう。
放射線と原子力発電所事故についてのできるだけ短くてわかりやすくて正確な解説というのを書いた。本日公開です。 内容を簡潔に書くと、放射線と原子力発電所事故についてのできるだけ短くてわかりやすくて正確な解説というところか。 タイトルそのまんまやがな。
なんでこういうのを書いたかとかそういったことは、解説の最初に書いてあるので、もし興味がある方がいらっしゃればご覧ください。 考えてみると、「ベクレルからシーベルトへ」が一段落したところで、いろいろと合間を縫ってこれを書き出したんだから、約二週間か。 まあ、時間が足りなくなるわけだよなあ。
さあて、明日と明後日は理論物理学研究室の卒業研究生による集中ゼミ。かつての合宿に代えて、大学に居ながらにして朝から夕方までセミナー室にこもって 4 年生全員にみっちりと発表してもらう非日常の世界を演出する緊張感高まるイベントなのである。 ぐおおおおおお(←緊張感が高まっている)。
というわけで、この週末は完璧につぶれる。加えて日曜の夜は飲み会なので仕事は不可能。
ということは、月曜の朝の駒場の講義の準備をする暇はこの先はない。 とうぜんの論理的な結論として、今、すませておかなくてはいけない。
さらに、月曜は駒場のあと色々とあって、夜遅くまでイレギュラーな用事が入ってしまっている。 おそらくは終わったあとは遅い食事に行ってビールを飲む。 ということは、火曜日の重要会議のための宿題三つをやる暇はこの先はない。これも、今、すませておかなくてはいけない。
火曜日はずっと会議。学内にいたまま三つ連続で会議。でもこれは実質的だし夏休みの出勤を最小にするためここに圧縮したわけっだ。賢いと思う。しんどいけど。 なので、火曜日が終わった段階で(前日までの疲れもたまっていて)精根尽き果てて家に帰るであろう。 ということは、水曜の朝の量子力学の講義の準備をする暇はこの先はない。これもまた、今、すませておかなくてはいけない。
これら多くのことのなかでも、火曜の会議のための宿題はマジ大変。時間がかかる。 なので、ここのところ講義や色々な用事の合間をぬって、この大きな宿題だけはぼそぼそとやってきた。
で、今日が、この(田崎晴明的に言えば)前代未聞の長期国家計画を遂行する最終日だ。
午前の講義のあと、暑くてばてているのに、つい早稲田方面にラーメンを食べに行って更にばててしまったのは、まあ仕方がない。 一休みした後、順番に着々と作業を進めていく。 会議の用意も終え、月曜のノートも作り、そして、水曜のノートの見直しも終了。
おお。ぜんぶ終わってしまったではないか。 意外。
昨日、今日のことを考えたときは、仕事が終わるかどうかかなり悲観的だったんだよな。 なんでだろ? あ、そうか。明日からの集中ゼミに備えて、ぼくと卒業研究をやっている二人と発表について議論したりスライドをチェックしたりして時間を大幅にとられると思ってたからじゃないか。
でも二人ともいないぞ・・ スライドどころか顔も見てない。
お〜い、おまいら大丈夫か〜?(発表は日曜だから明日の夜が修羅場??)
さて、昨夜 9 話を見たので、立場上(←??)少し感想など(注意:5/22 の続きどす。分かる人にしか分かりません)。
Incubator 君のエントロピー理解はけっこうまとも。 もちろん、最初の「焚き火から得られる熱」の例はまったくダメで、ここはちょっと救いようがない(別に救う義理もないが)。 どうしたって「燃料を燃やして得られる電力」とかにしないと。 その後の説明も字義通りに受け取るとエネルギー保存則に反するのでダメなのだが、実は、「エネルギー」と言っているところをすべて「自由エネルギー(=利用可能なエネルギー)」に置き換えて聞いてやれば完璧に意味が通る。 あれ? 同じようなつっこみをどこかでしたような気がするわけだが、
Shoichi Toyabe, Takahiro Sagawa, Masahito Ueda, Eiro Muneyuki, Masaki Sanoに対して、であった。 Nature Physics 掲載論文の著者らでもこういう誤用(というか、「ちょい書き過ぎ」)をするのだから、地球の科学用語に不慣れなかれが間違ってもとがめられるものではなかろう(誤解を与えるといけいないので書いておくけど、これは(タイトルが派手なだけで)非凡な素晴らしい論文)。
Information heat engine: converting information to energy by feedback control
「より高い知性と文明をもちながらも一線を越える能力をもたない知性が(能力を有する)人類を見守る」というテーマも「幼年期の終わり」から「ハルヒ」にいたるまでくり返される王道だが、熱力学第二法則に焦点を絞ったうえに「少女」に意味を与えているところは評価高し。 いくつかの解説で書いたように、「この世ならぬ場所の無尽蔵の情報メモリー」にアクセスする能力をもった存在(デーモン)が存在すれば第二種永久機関を実現し熱力学第二法則を覆すことができる(「あの世」とは情報のやりとりだけをするので、この世のエネルギー保存則は破れない)。 Incubator は文字通り Incubator であってデーモンではない。 デーモンの役割を果たすのは他ならぬ感情をもった人間。これは「青い鳥は家にいた」的な発想で愉快だし、「あの世の無限の情報論的リソース」を利用可能にするのは知性でなく感情だという「ひねり」が入るのはナイス。 個人的には、こういう設定は(SF 的には)好きなのである。
しかし、宇宙文明が何をおそれて回避しようとしているのかは不明。今さら「宇宙の熱的死」でもあるまいし。 で、お約束の結末予想だが、ハッピーエンドを目指すなら、人間が「あの世の無限情報リソース」へのアクセス能力をもっている以上、それを従来の「破壊的」手法を用いず効率的かつ永続的におこなう道を見出してみんながハッピーというところかな? 気になるのはほむらちゃんの正体だが、普通に(9 話までの)伏線を考えれば未来から来たマドカの娘とか、なんらかの中二っぽい設定でやってきたマドカの母親(←こっちのほうがありがち)とかそういうことになるが、どうせ中二全開ならというので「マドカのパパ」という案を出してみよう。 ふふふ。どうだ、あたっただろ(←んなわけはないか(付記:10 話見た。こんなのかわいそ過ぎで思いつかない))。
自分でも「解説」を書いて加筆・修正中ということもあって、
放射能を正しく理解するために 文部科学省、平成23年6月24日というのを見てしまったのだが、なんか脱力する。 まあ、立場を考えれば安全よりなのは、あれなのかもしれないが、お役所がお金をかけて本気を出した情報発信がこのレベルなのか?
パラパラ見た範囲で、適当に文句を並べる。