茶色の文字で書いてある部分は、相当に細かい仕事の話なので、ふつうの読者の方は読み飛ばしてください。
昨晩、寝床に入ってから、化学ポテンシャルの「非破壊測定」の問題点がようやくありありと見えてきた。 佐々さんが再三言っていたことの意味がようやく具体的にわかった、ということか。 平衡ではうまく行ったことが、ひとたび非平衡に行くとことごとくうち砕かれる。
またしても、平衡統計力学が恐ろしいほどに巧妙にできていることを、思い知らされたのであった。
そのまま統計力学の講義に行ったので、ついつい、
平衡統計力学ってのは、むちゃくちゃ、よくできてるんだ!と力説。
まだ準備で確率論をやってるところなのに、そんなこと言われてもねえ・・
ううむ。
ここんとこ、ずっと、五里霧中の藪のなかを切れないナイフ一本で切り開こうとあがきながら、なんか道に迷って同じ所をぐるぐるまわってる感じで、だんだん楽しくなくなりかかってたのだけど(って、非平衡系の研究のことでっせ)、なんか、ちょっとだけ、目新しい風景の見えそうな少しだけ見晴らしのあるところに出たかなっていう気が昨日くらいからしている。
いや、単に、ポテンシャル中の1次元 driven random walk の非平衡定常状態を具体的にみるというせこい計算をして、平衡分布とはまったく異なった(流れに支配された)状態の決まり方になっているのだなあという認識を得たというだけの話。 たぶん、知ってる人はよくよく知ってるような話だし、考えてみると、とても当たり前。 (でも線型応答理論が破綻する例にはなっているのだなあ。)
だけど、妙にうれしい気がするのは、自分なりにあっちこっち歩き回った結果、ぜんぜん予期していなかったものに偶然出会えたからかも。 自明な話とはいえ、非平衡(の一つのあり方)はこういうものか、と具体的に実感できたのも少しうれしい。
というわけで、もう少し、この周辺で考えたくなったことを考えてみようと思うのであった。 目指している SST との関連は完璧に霧のなかだけど。
あと、二次元以上の driven lattice gas で drive が大きい極限からの展開というのを考えると、おもしろい物理を見ながら、しかも厳密なことができるのでは、という着想も得たぞ。
ようやく、体がこの手の問題に慣れてきて直観が働くようになってきた気がしてちょっとハイになっている今日この頃ですが、明日くらいにはまたまた落ち込んでいるのかも知れませんなあ。
あと、ゼミの発表者が「その場で辞書をひく」というのが当たり前になっているようだというのが気になる。 (中略) 何かいい方法はないかな?とのことですが、とっても平和で効果的でナイスな方法がありますよ。
なんで、今んなって英語読んでんだよ? なんか勘違いしてんじゃないのか。 ゼミってのはそういうもんじゃないだろ。 そっちが一生懸命準備してくればこっちも何時間でも付き合うけど、そんなことをこの場でもたもたやってんのに付き合う時間はないんだよ。と言って机をばんと叩いて席を立って研究に戻ればいいのだ。
いや、ぼくは 今年はまだ やってませんよ。
(真面目な話、今年の田崎ゼミメンバーは割とよく準備していると思う。)
やれやれ。
連休のあいだは、ずっと肉体労働。 眠いのでこんなものを書いていないでお風呂に入って、ビールを飲もう。 (そうすると計算用紙を出して計算の続きをやることになるであろう。)
あまり読んでないけど、やっぱ、これでは物理はわからないかも。 (当然か。)
いえ、仮に雰囲気を伝えるだけだとしても、やっぱり、企画とか構成を根本的に考え直さないといけないと思うなあ。 装丁とかは悪くないと思うから。
あとですね。 「高校に入りたてくらいの読者」を想定して書けという指示を真摯に守ったぼくの文体はまわりから浮きまくってるみたい。
ふう。
(↑いかんな、最近の書き出しは「やれやれ」とか「ううむ」とか、そんなのばっかしで、如何にも疲れが出ている。)
またしても、個人的な理由での忙しさが増大していて、やりたいことがほとんどできなくなってきた。 とはいえ、忙しさは、これから二ヶ月くらいがピークで、それを乗り切ればずっと(何年も(何十年もかな?))平穏な日々がつづくはずなので、がんばります。
そんなわけで、「雑感」も、当分は短い上に「ふう」とか「ひい」とか情けない書き出しが続きそう。
聞いてくれている学生さんにほどよい緊張感があって快感。 「ほお」という顔をしたりうなずいたりしながら聞いてくれると、疲れていても、すごくハイになれる。
慣性モーメントの例として回転楕円体を取りあげるかどうか、秘かに講義中にいっしゅん悩む。 なぜかというと、剛体力学の例として、例のゆで卵が立ち上がる現象を取りあげられるかどうか、悩んでいるからなのだ。 完全な扱いは苦しいけれど、最低限、回転エネルギーについての考察くらいはできるかもしれないなあと検討中。 (実験だけならゆで卵さえ用意すればできるけど。)
ほよよ〜
いよいよ書く暇がなくなってきた。
「雑感」の趣旨(って何だよ?)とは違うけど、Johon Klauder 先生の公開の講演会があるので、その宣伝をしておきましょう。
学習院大学物理学科教室談話会
日時:5/16(木)17:00〜John Klauder 氏は偉大な数理物理学者ですが、今回の話は、学生さんにもわかりやすいものにしてくれるはずです。 (研究室の廊下にはってあるポスターには、「1,2年生や高校生もどうぞ」と書いてある。) 英語は聞き取りやすいアメリカ英語ですね。 学習院の方も、それ以外の方も、どうぞこぞってご来聴ください。 (ぼくは実はこの午後は用事があるので5時に間に合うかどうかは微妙なのだ。間に合えば一番前でうるさく聞いているはず。)
場所:南 2-200
Professor John R. Klauder
(Department of Physics and Mathematics, University of Florida)title: A Coherence Primer
Light, by which we see the world around us, is just another example of electromanetic waves. Yet, there are certain optical phenomena that are not well described just as waves --- they are better described as a random collection of waves. Several examples of this aspect of light will be illustrated and explained in this lecture.
John Klauder 氏は、ぼくが学生時代に接した(あまり多くない)欧米の数理物理学者の一人で、そういう意味でもぼくにとっては忘れがたい人です。 Klauder (クラウダー)先生と日本の先生お二人といっしょに、原とぼくも食事に行くことになったとき、すぐさま K さんがとばした
「なに、食らうだあ?」というおやぢギャグもまた等しく忘れがたい思い出であります。
どしぇえええ。
午後からの統計力学の講義の準備をしようと、ふらふら大学へやって来たら、お天気ぽかぽかだし、学内は静かだし、3号館の一階の扉がしまっているし、おじさんたちが教室を掃除しているし、なんか超のどかで、要するに、お休みであった。 聞けば開学記念日らしいが、そんなもの、勤務してたった十年とちょっとのおいらは覚えていないのだ。
この講義はゴールデンウィークを無傷で通過して喜んでいたのに、思わぬところに伏兵がいたもんだ。
ちっ。 宇多田ヒカルって唄うまいよな。
そんだけ。
はにゃあ。
ようやく Klauder 先生と話ができた。 セミナーにも間に合ってよかった。
明日の講義では、まずトルクがないときの運動をやっておくのが正解かな。 (こうやって剛体で遊んでいると先に進まなくて困るんだけど。) これから準備しよう --- と思ったら、もうすぐセミナーではないか。
よっこらせのどっこいしょ、と。
昨日の晩は今朝の講義のために長細い形の剛体の回転運動を整理。 Landau は抽象的すぎて、原島「力学」はごちゃごちゃしすぎて、どちらもピンと来ないので、ほどほどに具体的なやり方で。
で、実際に細長いものを投げて自転と才差運動の関係を体感しようと、目の前にあったネギの切れ端、マラカス、新聞を丸めてつくった刀、などなどを次々と投げあげてまわしてみる。 深夜なのであまり激しくやるとご近所迷惑になる。 傘をバトントワラーのようにくるくるまわすという技を考えてみたが、これは、駄目であった。(持つ手のところでトルクがくわわってしまって角運動量が保存しない。) けっきょく、マラカスが一番よさそうなのだが、いかんせん、中にシャカシャカいわせるための粒が入っているから剛体とはいえない。
朝おきてみると、朝のあいだに、大きなペットボトルが一つ空になっているのを発見。 急いで食事をしたあと、しばし、これを回しながら投げ上げる練習をして、講義へ。
講義中に、計算をしつつ、何回もくるくるとまわしてみたが、だんだん上達してきて、確かに素早く(細長い軸のまわりに)自転しながら大きく首振り運動をする様子がみえてきた。 しかも、自転軸と首振り回転の軸の角度によって首振りの角速度が変化する様子も、(ぼくには)はっきり体感できるようになった。 お恥ずかしながら、この計算をやったのは今回がはじめてで、当然ながら、自転と首振りの関係を体感したのもはじめて。
おお、おもしろいものじゃ、と感動したのだが、ひょっとして、前で一人で納得して浮いてたかな??
学生さんにどれくらい理解できたか聞くのがちょっと不安だけど、雰囲気としては、けっこう楽しめたのではないかな?
あと、あの話は、あとに行けば行くほど完全に理解するのは困難になるように構成されています。 (逆に、はじめの方ほど、かなりちゃんと理解できる。) だから、途中からわからなくなる、というのは健全なことで、それぞれ、自分がわからなくなったあたりを起点に自分で考えはじめればいいのだ。
講演会のレポートが鈴木クニエさんの日記にあります。
鈴木さんとは、web と mail を通じてしかお話ししたことがなかったので、講演会のあとに
鈴木クニエですと空気の振動を通じて、話しかけられたときは、すなおにびっくりしてしまったのであった。
明日の土曜日は十時から学習院で量子重力についてのセミナーだそうです。
ぼくは、明日のセミナーにはどうしても出られないので、月曜日に駒場の清水さんのところで開かれるセミナーに(都合がつけば)出ようと思っています。 こちらは Coherent State Path Integrals without Resolution of Unity というタイトルで、清水研のセミナー案内にアブストラクトも載っています。 興味をもたれた方は是非とも出席してみてください。
と勝手に宣伝する私であったのですが、よく見ると、セミナー案内には部屋も時刻も載っていないですね。(←17 日 6:50 の時点で。) (実は、昨日ご本人に聞いても、詳しい予定を知らない、と言っていた。) これは、さすがに、厳しいので、案内を載せてもらうように清水さんに頼んだところです。 はやく書いてくれ〜。(6:55 に見たらちゃんと載っていた。)
と、いってたら、セミナー案内を送ってもらえました。(どうも。)
5月20日(月)14:00-15:00だそうです。 ご都合のつく方はふるってご参加ください。
駒場16号館4階ゼミ室(410)
(以上、変化する状況のなかでリアルタイムに書いたので、あとから読むと、あほみたいかも。)
ぷしゅるるるるる。
月曜は、午前中にいっぱい仕事をして、午後から John Klauder 先生のセミナーを目指す。 余裕をもって1時過ぎに目白駅のホームに立っていたのだが、なんと、秋葉原で人身事故のため電車が猛烈の遅れ、けっきょく10分ほど遅刻してセミナーに到着。 しばらく聞いていたが、イントロで聞き逃した本質的なことはおそらく一つだけだろうと判断し、たまたまとなりにいた佐々さんに「Q > 0 になるような系をやっているわけ?」とささやき声で確認。 そのとおりとわかったので、適応して、聞いた。
なぜ彼があんな不便な量子化をするのか? 数学としては、あらゆる可能性をみたいし、新しいタイプの(より野生の(?))表現を研究するのは意義のあることだ。 でも、物理的な(そして、本質的な)動機は、セミナーの最後にでてきた Klauder 流の量子重力の量子化のための必然的な道具ということだろう。 (普通の量子力学にあの表現を使っても、さして御利益はないと思う。)
セミナーのあと、前の方で聞いていた人が、お茶大の森川さんだと気付く。 本当に久しぶりであった。 あと、かつての卒業研究生の T さんにも会った。 こちらもお久しぶり。
清水さんの研究室で少し話をしたあと、John と T さんと三人で、(娘さんへのハイテクなおみやげをさがすため)池袋のビックカメラへ。 けっきょく OS の壁に阻まれて何も買えなかったので、ついでに、三人で食事。 何を食らうだあ(←おお、おもしろいシャレを今思いついた!)とビルの上の階をさまよい、わけのわからない無国籍な料理を食べる。 期せずして、大学院生のころ以来二度目の John との食事となったので、研究者としての、ぼくの生き方・選択などなどについて John に率直に話した。 理解もしてもらえたし、励ましてももらえたと思う。
John に、最後のさようならを言って握手をしたのが火曜日の教授会開催中だったことは、秘密です。
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。がしょっ。
しまった。
講義中にゆで卵をいっしょうけんめい回していたら手が滑ってひび割れてしまった。しくしく。 (いちおう、一回はかろうじて立ったのだが、拍手が少なかったので、もう一回試みていたのだ。) もちろん、この卵はこれからお昼ご飯で食べます。
講義のあと、I 君が前に来て、卵をまわしてくれた。 なんと、彼がやると、実にうまく立つではないか! I 君に教わった S 君がやっても、やっぱりうまく立つではないか!! そのとおりに、ぼくがやってみても立たないではないか!!! (ま、いいか。)
来年の講義のときは I 君にやってもらおう。
1時間くらい練習を積んだという I 君伝授のこつは
あと、適度な滑り摩擦を供給してくれるような板の上でまわすのがいいです。 ぼくは、今朝、家ではじめて実験をしてみたら、全然うまくいかず、講義では、
やはり田崎は理論屋であったというオチにしようと思って、ともかくゆで卵をもって大学にきたのでした。 でも、大学の部屋の、つるつるしているけれど少しざらざらのついた(←説明になってない)机の上でまわしたら、本当に見事に水平から立ち上がって感動したのであった。
肝心の理論的説明のほうは、けっきょく、昨日の深夜までビールで覚醒しつつ試行錯誤してしまった。 Nature 論文はいまいち詳細を追う根性がでないので、勝手に自己流でやっているのだが。
近似的保存則があるといった点はおもしろいけれど、卵が立ち上がるか立ち上がらないかを決める決定的な要因は、接触点でのすべり速度の向きだと思います。 さらに、立ち上がりがおこるためには、慣性モーメントが異方的である(特に長軸まわりのモーメントが小さい)必要もないようです。 たとえば、とても軽い卵形の容器の中央に思い球体をはめこんだような剛体の方が、一様な卵よりも、よく立つということになるみたい。 (あるいは、卵形の容器の長軸の中心をとおって長軸に垂直な円盤状の面のところだけに重い円盤を置いたものだと、さらに、よく立つ。)
とはいえ、剛体を深くやったことはないし、なにせ深夜のビール駆動考察だったから、ひょっとして、どこかまちがっているかもしれませんなあ。 だったら、ごめんね。>講義にでていたみなさん。
あぴよ〜ん
先日、某大手新聞(公称八百万部発行)にて書評委員をつとめられる評論家の某先生と以下のような興味深いメールのやりとりをしたので、後世のための記録としてここに残そう。
某書評員さん:と、ところで椎名林檎が離婚したそうですが、田崎せんせぇ、日本物理学会を代表してコメントを!
田崎:××さんは何か勘違いをされているのかもしれませんが、われわれ物理学者というのは絶対的に確立された物理法則で記述される世界のみに関心をもつのです。 籍をどうこうするといったことは、物理学者の目からは、単にお役所のコンピューターのビットの変化にしか見えないことで、なんら興味をひく問題ではありません。 強いて言えば、いかなる物理法則にも反しない、とでもコメントしておきましょうか。 むしろ問題なのは今度の椎名林檎のカバーアルバムがでて、そのなかの宇多田ヒカルとのデュエットを聴いた人たちが「やっぱり歌唱力がちがう」とかどーでもいいことをいいまくるだろなあ、ということなのじゃ。(本当に宇多田は唄うまいし、英語の発音もいいけどさ。)ちなみに「木綿のハンカチーフ」のカバーは品なく歌っているのでオリジナルを知る人には楽しめるだろうとおもうけんど。なお、上記のやりとりに関し、某シンクタンクに勤務し世界を跳び回る傍ら翻訳・執筆活動をも積極的にてがけている売れっ子の某知人から
このような見識と節度と慎みを欠いた不埒なる人物が、天下の公器にして真実の報道という厳粛なる使命を帯びた大新聞の紙上にいささかなりとも文を弄するとは、青少年に与える悪影響たるや想像に絶するものがあり、嘆かわしいこと至極であるとのコメントを付することを助言されたこともここに記録しておこう。
読者層が把握できないので、上記のやりとりは、特定の書評委員会、学会、シンクタンク、あーるいは個人の真の見解とはかならずしも一致しないことを念のため書いておきますが、ぼくが「木綿のハンカチーフ」にもっとも期待しているのは真実です。
ふううううううううううううう。
個人的に多忙なため、過労と睡眠不足でほとんどまっすぐ歩けない感じなのだけど、講義がはじまってみると、なんか滅茶苦茶ハイになるんで、自分でもびっくりしてしまう。 (途中、体温調整がまずくなって秘かにあせったけど。) ぼくにとって、講義って覚醒剤っぽいところがあるのかもしれない。
今日は、午後から、覚醒剤をもう一本!
卵とある。 回し方やら生卵の場合のことなどが色々書いてある(数式はないけど、でも、この問題ならそれが健全と思う)ようなので、ぼちぼち読ませてもらいます。