日々の雑感的なもの ― 田崎晴明

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茶色の文字で書いてある部分は、相当に細かい仕事の話なので、ふつうの読者の方は読み飛ばしてください。


5/2/2004(日)

少し前(2/11)の雑感に(←と書き出したものの月日がたってしまい、「少し前」でもなくなってしまった)

それが本当の基礎研究というものだと思う。
などと、いかにもありがちなことを書いてしまった私であったが、別に「基礎研究」という言葉がそんなに好きなわけでもないし、こういう言葉にこだわるつもりも毛頭ない。

とはいえ、考えを刺激する言葉ではあるので、「本当の基礎研究」という言葉に関連して思うところを書いておこう。


かつて、ある応用物理の大家が、並み居る「自称・基礎研究をしている研究者たち」を前に、
「基礎」というのは、その上に何かが建つから「基礎」というのです。 みなさんのやっていらっしゃるのは、ただの「末梢」研究にすぎません。
と喝破した、という話を聞いたことがある。

ぱちぱちぱち。

自戒と大きなプレッシャーを感じつつも、ぱちぱちぱちぱち。 いい話です。

だいたい、「応用がない」とか「役に立たない」とかいう否定的な特徴付けしかないなら、「非応用研究」とか「無用研究」とか呼べばいいのだ。 積極的でポジティヴな特徴付けとして「基礎」を打ち出すなら、それなりの覚悟がいるじゃろう。

別に建築物の「基礎」の比喩を文字通りに取って「その上に何かが建つ」と杓子定規に考える必要はないだろう。 けれど、「その上に何かが建ちうる」というのは、なかなかによい特徴付けだと思う。 あるいは、少し広くして、

そこを出発点(あるいは基盤)にすることで、意味深い科学の風景が新たに展開していくような研究
が、正しい意味での「基礎研究」なのだと言うのは、なかなか、よいと思う。

そして、そういう志のない「非応用研究」は、今後、積極的に「末梢研究」と呼んでいこうではないか。


もちろん、そういう意味の「基礎研究」の幅も広い。

別に抽象的で如何にも基礎的ですよという理論研究だけが「基礎研究」というわけじゃない。 たとえば、計測標準の改良みたいな、地味だが堅実な仕事なんかは代表的な「基礎研究」だと思う。

で、もちろんだけど、何が「基礎研究」で何が「末梢研究」かの区別は簡単じゃない。

見た目は立派そうでも分かる人が見れば「末梢」に過ぎない研究も多いだろう。 逆に、ちょっと見には些末なところから真の「基礎」が広がっていく可能性だってあろう。 本気で「基礎」を目指していても、けっきょくは本質的な成果は出ずに「末梢」論文を書いて終わりということも多い、というか、ほとんどの場合、そうだろう。ぼくは、そうだ。

そういう話をダラダラしていると、けっきょくは、「どんな研究だって基礎研究さ」という、ぼくの大嫌いな似非(えせ)平等主義(「音楽に善し悪しなどない。どんな曲でも、心動かされる人がいれば名曲だ。」とか「どんな本もじっくりと読めばよい本になる。」とかいうシリーズのこと)に行き着いてしまうというオチになりそう。 でも、それだけは嫌なので、これはいつも言っていることの繰り返しになるかもしれないけれど、あえて言っておきましょう。

失敗してもいいから「基礎研究」をやるぞという強い強い志がなければ、「基礎研究」をすることは、ほとんど不可能だ。 そして、「末梢研究」っぽくなってしまっても仕方ないという気持ちが少しでもあれば、「基礎研究」など決してできない。

5/3/2004(月)

電車に乗りながら、

  1. Boltzmann 方程式の熱伝導解を利用して SST 熱力学関数をつくる懸案の評価
  2. driven lattice gas の摂動展開で二点関数に長距離相関が見える条件
を検討。

1 について、大まかな方針が見えたと思い、2 を考え、大ざっぱな計算をするうちに眠ってしまう。 日記に書きたいなあと思うような変な夢をみたのだが、すべて忘れてしまった。

1 について、帰宅後に佐々さんと素早くメールをやりとして、正しいと思われる方針が見える。 さて、実際の計算はどこまで大変になるかは、まだちょっと不明。

2 については、帰宅後も混乱がつづく。

前から試そうと思っていたのだが、Metropolis 法で摂動展開を構成してみる。 ううむ、対称法ではキャンセルしたところから、ぼろぼろと消えない項が出てくるわい。 これは、長距離相関も大きいぞ。

非平衡系での物理のダイナミクス依存性は、思っていた以上に重症のようだ。 その意味するところは??  とりあえずは、論評抜きで、この事実を記しておくしかない。


入浴。

二点相関関数の長距離相関について、一次元では何が特殊かを理解。 そうか、簡単なことだ。

しかし、d>1 での 1 / r^d の減衰は、まだミステリー。

少しのぼせた。


今日のは、ぜんぶ茶色だったかな?
5/5/2004(水)

講義がないと、曜日感覚が狂うよね。

明日は、不燃ゴミの日だ。忘れないようにしなくちゃ。


休みのあいだの唯一の必須の宿題は、めんどうな書類つくり。 MSWord を使って、既存の書式を壊さないように、必要事項を埋めていかねばならない。 表の大きさや、ページの変わり目の位置を、(表のコマンドや強制改ページを使わず)リターンを適度な回数だけ押しまくることで作ってあるので、こわれもの注意の神経が要求されます。

この年齢の大学教員ともなれば、こういう書類の作成には慣れきっているのが普通なのですが、さいわいにも、学習院にずっといるおかげで、まったく不慣れな私です。

それでも、今日、大学に行ってすべてを出力し、幸いにも休日出勤して下さっていた事務職員の方に手渡すことができたので、一つ肩の荷がおりた。


リンクに依存した記事は避けると言っていましたが、これはちょっと特別なので、リンクしよう。
オートメーションの時代 --- 50年後の夢 高橋秀俊
ロゲルギスト T としても知られる高橋秀俊先生が 1956 年に書かれた「未来予測」物です。

前にも書いたかも知れませんが、ぼくは高橋秀俊先生のことを --- 残念ながら、お会いしたこともないのですが --- 勝手に尊敬しているのです。 ぼくの熱力学の本をお読みになった方は、本でくり返し語られる「把っ手のついたブラックボックス」の思想を、ぼくが高橋先生から学んだという記述があったことを覚えていらっしゃるかも知れません。 あれはお世辞でも何でもない。 あの表現に出会ったときは、本当に目から鱗でした。 ロゲルギストエッセイでも、高橋先生の筆になる部分は、すてきに頭がよくて、とりわけ好きなのです。


しかし、さすがは日本の計算機科学の黎明期に指導的役割を果たした高橋先生だけあります。

先生の世代としては驚くべきことですが、さっそく blog を書かれているのですね。





というのは、おいといて(高橋先生が、物理で活躍されたあと、計算機科学のリーダーになられたのは事実です)、先生の書かれた未来予測をざっと見てみましょうか。


家庭での「電話」の役割が楽しく語られていますが、これは、要するに各家庭の通信端末と種々のサービスの供給者のコンピューターがネットワークで結ばれたものですから、インターネット社会の異様なまでに正確な描写です。 しかも、インターネットの爆発的な普及がおきているのが、まさに今なのだから、この「五十年後」というのは不気味なほど正確な予言になっています。 晩年の高橋先生とて、まさか、ここまでこの予想が的中するとは思っていらしゃらなかったでしょう。

コンピューターの中身を見るところがでてきますが、ここは昔の空想科学小説のようで愉しい。 この描写は、パラメトロン計算機の発展形かな?

完璧に大はずれの予言も、あります。

このように通信が発達したための興味ある現象は一時危機を叫ばれていた交通地獄が、忘れたように消失したことだ。つまり、電話で何でも用が足りるので、誰もあまり出歩かなくなつたからである。また官庁や商社などもわざわざ都心地に集まる必要もなくなつたので、それらは東京周辺一帯にひろがつて、みな、その周囲に職員住宅をもつているから、通勤者は昔の三分の一ぐらいしかいない。
そんな、56年の「交通地獄」なんて、今から見たら天国でしょう。 (付記:これは、大間違いだったことを、(何でも知っている)早川さんから教えていただきました。 交通地獄が最悪だったのは、乗車率 300 パーセントを越えた昭和三十年代だったそうです。 テレビなんかでひどい混雑ぶりが放送されていて印象に残っている昭和五十年代でも、乗車率は 250 パーセントまで改善されていたそうで、今はもっとずっとましとのことです。 アメリカらから戻って、一時期、埼京線で学習院に通っていたことがあり、あの混雑はつらかった地獄だったと思っていたのですが、まだまだ甘かったようです。 とはいえ、高橋先生の「交通地獄消失」の根拠は、みんなが電話などの通信を利用して在宅で仕事をするようになるから、ということだったわけで、それはあんまり当たっていないですよね。)

もっと笑ってしまったのは、

今では仕事といえば教育者、科学技術者、芸術家が数の上では大部分である。
けっきょく、社会の基本構造というのは、そうおいそれとは変わらないということか。

笑ってばかりではいけないのかも知れませんが。


5/8/2004(土)

あー、あきらめないで、計算してよかった。 土曜の夜は、(家族とナンクロ勝負(←同じナンクロの問題をコピーして、競って解く。うちの家族の中では、ぼくは今のところ無敵なのら)をしてから)ねじくれた Laplace 方程式もどきを睨みながらうなっていたのだが、ちょっとお利口な逃げ道を思いついて、ようやく納得。 ナンクロに続いて、二連勝。

熱浴法やメトロポリス法で動かす driven lattice gas では、なんと、たった二体の問題を考えれば、1/r^d で落ちる長距離相関が、ありありと、みえることがわかった。 しかし、対称法でやると、この単純な長距離相関は消え、三体からの、よりゆっくりと減衰する長距離相関だけが見える。 こちらを、Raphael とぼくがつかまえていたわけだ。

Raphael との仕事がうまくいって以来、ずっと、この二つの差が理解できず悶々としていたのだ。 まさか、時間発展ルールの選択がこんなところにまで効いてくるとは思いもしなかった。 その思いこみがあったから、こんな初歩的な計算を今までやらなかったのだろう。

これら二つのふるまいの違いは、本質的に重要である。 いや、それ以上だな。 根本的に重要。 いや、それ以上かも。 歴史的に重要かもしれない

つまり、これで、熱浴法やメトロポリス法でつくった定常状態測度が Gibbs たり得ないことは確定。 しかし、対称法でつくった定常状態測度は、未だ Gibbs である可能性を残しているわけだ。 前者が物理的なのであれば、非平衡定常統計力学は存在しないか、存在しても、めっちゃ使いにくい。 もし後者が物理的なら、(平衡統計力学に類似した)非平衡統計力学を構築するという希望がまだ残る。

さあて、どう攻めるか。

非平衡定常の確率過程を本気でいじりはじめてから随分たつけれど、ようやく下界の風景を少しだけ見下ろすことのできる地点まで昇ってきた気がする。 景色が見えてきたときこそが、考えどころなのだ。

明日は、月曜のくりこみ群の講義の準備だけど、このおかげで、愉しく準備に集中できるぞ。


5/12/2004(水)

力学の講義は、剛体力学の上級編に。

  1. コマの才差運動
  2. いわゆるジャイロ効果
  3. (ラグビーボールみたいな)異方的な剛体の角運動量一定の(だけど、ぐりんぐりんとした)運動
  4. 二年前に一度考えた(2002/5/24)立ち上がるゆで卵。

と盛りだくさん。

なんか、夏ばて気味だし、久々に緊張した。

いや、計算の方は、基本的には、頭に入っているし、別にその場でもなんとかなる。 ただ、計算やトークの合間に、

  1. 地球ゴマ(その1)をまわして、才差運動をみせる。
  2. 地球ゴマ(その2)をまわして、ジャイロ効果や、角運動量が外力に「非直感的に」応答することを実演。(懐かしの「Jを感じろ」である(2000/5/26)。)
  3. 棒の両端にテニスボールのついた物体(犬のおもちゃ)を投げて、「ぐりんぐりんとした」運動の実演。
  4. (とても難しい)回転ゆで卵立ての実演。(今日はお弁当なので、妻にかたゆでの卵をつくってもらった。一つでは割れるかも知れないと二ついれてくれたのだけれど、本当に、一つは登校中に割れてしまった。)
の四つのデモをはさんだのである。 われながら、なかなかのチャレンジであった。

卵立ては、二年前に I 君に教わったこつを思い出して、一生懸命やってみた。 何度か失敗したが、最後に、短い間だけれど、きちんと立ち上がった。 「あっ、立った、立った。な? 今、立ったよな、見えたよな、な??」と前の方の学生さんに聞いたら、うなずいてくれていたので、少なくとも彼には見えたんだと思う。

がんばってじゅぎょうをしたら、おなかがへったので、たまごをふたつとも食べました。


5/13/2004(木)

月曜は駒場。講義がおわると、佐々さんに会い、(土曜に書いた)長距離相関のルール依存性について、さっそく議論。 連続空間の周期ポテンシャル中の二体系で検討すべきだということに。 そこで、格子系でも周期ポテンシャルを足したものを吟味すればいいのだと気づく。

時間節約のため一人で学食に行き、速攻の食事の間(先週は、清水さんといっしょに、学外にのんびり食べに行ったのだけどなあ)に解決できないかと、宙を睨みながら、食べるが、時間切れ。

佐々研に戻り、さらに議論。まず、小松さんの実験に関係した数値実験についても話し、それから、長距離相関を導くやり方を説明。 ううむと種々の可能性を議論するが、またも、時間切れ。

教務委員会にでるべく、学習院に戻る。


このところ、佐々さんもぼくも、気候のせいか、ばて気味。

それでも、佐々さんからは、連続空間の周期ポテンシャル中の二体の定常状態は長距離相関をもつだろうとのメールが。 どういう解析になっているのか、最初は、混乱したが、よく考えれば、ぼくが格子でやっているのと基本的には同じ計算である。 たしかに、やっぱり長距離相関が残る方が普通だろうか、という気になってくる。

少し混乱もあったのだが、落ち着いて、周期ポテンシャルのある格子上の二体問題をいじりはじめる。 最小は長距離相関がでないという希望的観測をもちつつ解析してわけがわからなくなっていたのだが、虚心坦懐に解析すれば、やっぱ長距離相関がありそうだわ。


今朝の佐々さんからのメールで、連続系では二体で 1/r^d の長距離相関が出ることが確定。

ぼくも、風があまりに強いのでお外に行かず、最後の計算をして、やっぱり格子系でも周期ポテンシャルを足せば 1/r^d の長距離相関がでることを確認。

白黒は、ついた。 (←久々の田口トモロヲ) 1 / r^d の長距離相関が、この世界の掟だ。


さてと。

最近の計算と考察で、長距離相関がミクロから出てくる雰囲気はたいへんよくわかった。

また、Raphael とぼくの展開が、これまでの常識と矛盾しないこともはっきりした。 一般の時間発展則について展開を書き下し、ルールに応じて、長距離相関の様子が違うことがはっきりと示せる。

見通しはたいへんよくなった。

しかし、土曜にも書いたが、 1 / r^d の相関が普遍的なら、非平衡定常状態を Gibbs として表現する可能性は捨てなくてはならない。 SST のゆらぎの式も driven lattice gas では(論文で証明した弱接合を除けば)厳密には成立しない可能性がある。

これは、辛い。

辛くても、事実なら仕方がない。

仕方がないけど、辛い・・・


というわけで、風は強いが、散歩に出る。

並進対称な対称法 DLG が Gibbs 的な定常状態をもっている(らしい)ことに何か意味があるのか? 単なるルールの特殊性なのか?? 仮に、非 Gibbs こそが標準だとして、そこで、統計力学をつくる可能性は??? Raphael が博士論文で使っていた弱 Gibbs 状態????

近所だけれど、歩いたことのないところを歩く。

ふと、住宅街の小さな道の行き止まりが階段になっているところをみつけて、そちらに歩き出す。 どこかの家の階段じゃなくて、公共の道なんだけど、階段になっているやつ。 ぼくは、住宅街のなかのこういう階段が無性に好きなのだ。 なんでだろ?  ひょっとすると、前世で暮らしていた街には、階段がたくさんあって古いお醤油屋さんとかあってわたしお醤油のにおいって好きよ、とかいうようなことはないですね、ごめんなさい。 ええと、何の話だっけ、そうそう、で、階段をひとつ下り、ひとつのぼり、ぐるっと散歩して、安い CD を一つ買って家に帰ってきたんだけど、さすがに、なにもいい考えは浮かばなかったって話だった。


5/14/2004(金)

あ゛ー。じま゛っだあ。ごめんなさい。

今、研究室のお茶部屋に、ペーパーフィルターやコーヒー豆の粉の残りをそのままにしたコーヒーメーカーが放置してあるとしたら、それは、私のせいです。

普段は、いれおわったところで洗うようにしているのだが、今日は、ついついゼミから卒検の議論に直行して、片づけを忘れてしまった。 今、まだ研究室にいるみなさん、ごめんなさい。

それ以外のみなさん、ローカルな(つまらない)話題で、ごめんなさい。

(付記:土曜日にちゃんと片づけました。)


あ、ちょっとは、まともなことも書いておこう。

佐々さんがやった Focker-Planck の定常状態で長距離相関を出す計算を、ぼくも、やってみる。

方程式の形を思い出し、あとは、ぼくがやった計算とまったく同じ思想で進めばよい。 できるとわかっている計算をやり直すほど楽なことはない。 おまけに、さすが連続理論、摂動の最低次を求める式は、とても見通しよく、きれいにまとまる。 たしかに、長距離相関こそがこの世界の掟だ。 田口トモロヲに言ってもらうまでもないわ。

自分がやっていることを反省してみると、これは、Raphael と開発した DLG の摂動計算のテクとほとんど同じだよな。 要するに、こうやっていけば、多体 Focker-Planck の摂動計算もつくることができるのだ。 それで非平衡統計力学に近づくのかどうかはわからないけどね。


5/15/2004(土)

先を焦らず、今、自分にできること見えることを地道にやるのじゃ --- と、ぼくが学生さんに言いそうな台詞を自らに言い聞かせつつ、めんどうだが、ひたすら地道な摂動やフーリエ変換の計算。

あり? べきで減衰するつもりのところが、指数減衰?? トモロヲさんを呼ぶのは早まったかな?

いや、計算がとちゅうからぐちゃぐちゃだし、信用ならん。明日、また、やるべし。


5/16/2004(日)

へへへ。 「白黒はついた(13 日)」なんて、堂々と太字で言ってくれて、おい、トモロヲさんよお、あんた、早まったんじゃねえのかい? ほんとうに、相関関数の漸近評価まで見てから白黒つけたのかい? どうなんだよっ?

いや、すみません。つい。

実在や空想や妄想の田口トモロヲさんには、もちろん、なんの落ち度もありませぬ。 2d 次元空間の電荷分布を、勝手に思い描いたつもりになり、その d 次元スライスをみるとダイポールがふたつ逆向きに並んでいるから四重極場ができるんだ、と納得していた私が悪うござんした。 同じ趣旨の計算を別の方法で(先行して)やっていた佐々さんも、基本的には、同じ「直感的まちがい」をおかしていたのだから、研究というのは、おもしろい。

けっきょく連続空間内の周期ポテンシャル中の二粒子系の非平衡定常状態には、べきの長距離相関なんてなさそうだぞ。(付記:これは、最低次の摂動の範囲では、という条件付きで。)

もし、そうだとすると・・・

一筋の、希望の、光だった。(←おいおい、今度は、大丈夫だろうな、トモロヲさんよお。)


酔っているので、茶色で書こう。

1 / r^d の長距離相関というのは、もちろん、まともなアイディアだと思う。 そして、通常の現象論的導出というのは、やはり、流体的なマクロレベルでのストーリーのはずだ。 DLG でモデルされるような物理系が 1 / r^d の相関をもつということもあるかもしれない。 しかし、それは、あくまでマクロな流体レベルで散逸揺動関係が破れた結果として、でてくるもののはずだ。 先週の土曜日にぼくが気づいたのは、Metropolis dynamics などを使った DLG では、なんと二体の相互作用という、思いっきりミクロのレベルに、1 / r^d 相関を生み出す「種」(散逸揺動関係の破れ)が、こっそりと、「密輸入」されてしまっている、ということだ。 これは、マクロに出現してくるかも知れない長距離相関とは別物だと思うべきだ。 そんな系を調べて、長距離相関がどうのこうのというのはやっぱりまずい。 物理としてまずい。

酔っているので、まとまらないが、明日は講義だから、そろそろ終わりにしなくては。


5/17/2004(月)

駒場。

講義をして、清水さんと新しくできたレストランで食事し、佐々研で、伏木さん、佐々さん、林さんと議論。

他人にうけるか微妙だと思っていた田口トモロヲねたが、少なくとも伏木さんにはうけていたようなので、ちょっと安心した。 いや、それは、今日のできごとの中で、もっとも、どうでもいいことか・・  しかし、まともなことを書く気力はないのである。


「白黒がついた」と思っていた状況で書いたメールに、Spohn から返事が来た。

じつは、ストーリーはちがう方向に進行していることを伝えなくては。 これ以上は撤回がないよう、慎重に行こう。


5/20/2004(木)

ばたばたと忙しく、日記がとだえ気味ですね。

いったい自分の立場はどうなっているのか不安である --- との声が田口トモロヲさんからも届いています。 もちろん嘘ですが。

たかが、二体

されど、二体 のくせしやがって、なんでこんなに、こみいいっとるんじゃ!

の標語を掲げて進んでいる
外力駆動の二体の確率過程の定常分布に長距離相関があるか??
プロジェクトですが、なかなか愉快な展開をみせています。

まず、並進対称な格子模型については、最初の結果(対称法では長距離相関なし、それ以外では 1/r^d の相関がでる)が生き残っています。 これは、Rapahel とぼくが開発している多体系の摂動展開の方法とも整合していて、けっこうナイスです。 来週には Raphael が来ますので、このあたりも含めて、まとめていこうと思っています。

これに関連し、いったい、対称法とそれ以外のどちらが「自然」かという問いが出てきます。 それについてヒントを得るべく、連続空間の周期ポテンシャル中の二粒子の問題を調べることになったわけでした。 これについては、周期ポテンシャル、外力、相互作用ポテンシャルの大きさの積に相当するパラメターでの摂動展開で調べていくのが自然で、佐々さんが計算をはじめ、ぼくも追随しました。

その「結果」は、

  1. 実効的な Poisson 方程式を書き下すと、ダイポール状の「電荷」がずらりと並んででてくる。 これは、格子での対称法以外の状況と似ている。
  2. うまく並進対称性を使えば、これは d 次元空間の原点に電荷の四重極があるのと同じ状況なので、Poisson 方程式の解(つまり、相関への非平衡補正)は 1/r^d の減衰を示すだろう、と佐々さんが、ついで、ぼくが、結論。 「白黒はついた」との宣言さえ出してしまった。 (←しかし、これは、まちがいであった。)
  3. 1/r^d の減衰をきちんと示すべく、フーリエ変換の計算を真面目にやってみると、ずらりと並んだ「電荷」は、周期性のために巧みにスクリーンされ、けっきょく、Poisson 方程式の解は指数減衰することがわかってしまった!(「電荷」の配列についての直観が間違っていた。)つまり、摂動の最低次では、長距離相関はでない。
  4. この結果をみて、ぼくは、この問題では長距離相関はでないと信じる。 摂動の高次をも押さえ込むような評価をつくろうと思って計算をはじめるのだが、あれ、なんか難しい。
  5. そのころ、佐々さんは上のスクリーニングの「脆弱さ」をつく攻撃方法(モデルをちょびっとだけ変更して、ばんばんと長距離相関をだしてしまう)を次々と提案。 指数減衰が「もろい」ことは、ぼくも重々感じていた。
  6. さらに佐々さんは、モデルを変更せずとも、摂動の二次を計算すると、実はスクリーニングが破れて長距離相関がでるのではないかと指摘。ぐはっ。
  7. ぼくも二次摂動の効果を真面目に調べる。 かなり、ややこしい。 たしかに明らかに危険な項があり、べき減衰の可能性がある。 おまけに長い会議とかがあっていやになる。 二次摂動はこみいっていて、このままやっても、実際にべきであることを示すのは苦しそうだ。
  8. 佐々さんは、数値計算も開始。 メールが届くたびにサイズが大きくなり、そして、相関も大きく・・・
という感じで、けっこう目まぐるしく移り変わっているのでした。

今のところ、摂動の二次以上の効果により長距離相関がでてくるというシナリオが優勢ですが、だとして、それが 1/r^d なのか、格子メトロポリス二体などで出てくる長距離相関と「同質」のものなのか、など、謎は謎を呼んでいるのでありました。 その他にも、佐々さんの脆弱性アタックにより、相互作用ポテンシャルに周期性を入れるなど、物理的に自然な方法で、やたらとでかい長距離相関を生み出す悪魔のテクニックも生まれてしまいました。 これが物理的に何を意味しているのか、ちっとも、わからない。

たかが、二体

されど、二体

その先の風景がみえるようになることを信じて、ここから学び取れるだけのものを学び取っていくのが正しい道だろう。

落ち着いて、ねらいをつけて、脆弱性につけこむ次の摂動の項を評価してみよう。


ちょっと気をゆるめていたら、レフェリーをいっぱいやることになってしまった。

昨日と今日で、一つずつ終わらせました。ひとつは落として、ひとつは通す。

さらに、このあと一通り読んであってレポートを書くべきなのが、もう二つ。ひとつは落として、ひとつは通す。


大きな台風の接近で、夜中は雨。

レフェリーレポートを、もう一つ、仕上げる。 あと、ひとつ。


5/22/2004(土)

先日、家で使わなくなったソファを大学の部屋に運び込んで以来、夕方にコーヒーをいれたときには、ソファの前のコーヒーテーブル(←前任のロゲルギスト O 先生が残していかれた年代物。おそらく、O 家で古くて使わなくなったものであろう)にカップをおいて、(使い古しの家具に囲まれて)一人ティータイムをやるようになっています。 そうすると、なんとなく雰囲気がかわるせいか、論文とかじゃなくて、(アメリカ物理学界から送ってくる)Physics Today のコラムとか、APS News の記事なんかを読んだりするようになるから、おもしろい。

で、APS News (March 2004 3) を見ていたら、

Renormalization Tribute Shocks Conferees

くりこみ賛歌に参加者びっくりこみ

(↑すんまへん、最悪の意訳ですね。「くりこみ賛歌が、会議参加者にショックを与える」が直訳。)

という記事があったので、「お、こりは、ひょっとして駒場のくりこみの講義のネタに使えるんでは」などと思いながら、読んでみたのだった。
舞台は「場の理論の五十年」という大会議のバンケット会場。 多くのノーベル賞物理学者を含む、千人以上の人々が集まっていた。

そこで、なんとノーベル賞学者の一人が卒倒してしまうことになる、おそるべき事件がおきたのだ。

バンケットでは、余興としてミュージカルが上演された。 場の理論の会議ということで、特別に、「くりこみ」が「積分の発散の困難」に打ち勝つ様子を歌いあげたミュージカルがつくられた。

そのクライマックスは、発散の源だった「bare mass(裸の質量)」に高次の補正を加えて、「dressed mass(着物を着た質量)」にするところ。 リハーサルまでは普通にやっていたけれど、本番になって、担当のダンサー(←記事には男女の別は書いていないみたい。いや、別に興味はないですが(←嘘ですが))がサービス精神を発揮したのか、言葉を文字通りにとって、まさに、そのまんまに演じてしまったのだ!

つかの間とはいえ、本当に bare なダンサーの姿が千人の物理学者の前にさらされた。 会場は凍りつき、ノーベル賞受賞者の老人は卒倒しデザートの皿のなかにつっぷし・・・


あほくせええ。

わざわざ APS News の記事になってるから読んだわけだが、ここまでベタな話とは。 web 日記で読んだとしても時間を無駄にしたと思うほどの、あほくさい話である。 (ね、そうでしょう?)

だいたい、くりこみをダンスで表現するとかいう路線だったら、ぼくらが学生時代に物理学科の劇でやった「人間ファインマンダイアグラム」とかの方が高級だと思うぞ。

記事のさいごには、お騒がせミュージカルをつくったシュワルツ氏は、今度はクォークモデルに関する企画を練っていると書いてある。

それって、ひょっとして、三色の衣装を着たダンサー三人がひもでつながって、くるくるまわりながら踊って出てくるってやつ??

あ、シュワルツさん、それは、もう、俺たちの劇でやってるからね

けっきょく、くりこみの講義の準備は進まないじゃないか(←こんなもん書いてるからだろ)

初等電磁気学を素材にくりこみの教育的な例がつくれないかと、Feynman vol.2 で電荷の自己エネルギーのところなどを読んでみたのだが、なかなか、非自明なくりこみは出てこないんだよなあ。 やっぱ、くりこみミュージカルの話をして時間を稼ぐか・・・ (←嘘です。けっこう、書いてあることを文字通りにとる(例のダンサーのような)人がいるので、念のため。次の次のネタまでは、ちゃんと、あります。)


5/23/2004(日)

来週あたりから週末があわただしくなるようなので、少し先走って、くりこみの講義のネタをためておく。

実空間くりこみのデモンストレーションとしては定番の、三角格子 Ising 模型(ここでは、相互作用する格子期待のセッテイングだけど)の実空間くりこみの計算を、はじめて自分でやってみた。

ブロックふたつ、つまり、6個の格子点上の配置(2^6 = 64 とおり)を分類して、ブロック上の配置(4とおり)の重みを求めていく。 対称性があるので、32 とおりを数え上げて、二つの量を求めればいいのだけれど。 この重みをうまく組み合われば、2パラメターのくりこみ変換を構成できる。

頭を使うのは、ある意味で、ここまで。 (といっても、スタンダードな計算だから、頭の使い方も極小だけど。) 相互作用をどういれるか、近似的くりこみをどう設定するか、どの量を考えるべきか、といったところに主な時間を使う。 計算は、場合の数え上げをまちがえたりしながら、けっきょく、レポート用紙二枚くらい。

ここから先の計算は機械的なのだが、その分量と複雑さはかなりのものだ。

構成したくりこみ変換は、4次の多項式ふたつの比の平方根とかを含んでいて、紙に書くもおぞましい。 それを、いじくって、いくつかの部分空間での写像を求め、固定点を求め、そこでの二つの微分係数を求め、さらには、代表的な点についてのくりこみ変換を数値的に計算して、くりこみの流れを二次元のグラフに図示。

これを全部、手でやったら、一週間はかかると思う。 いや、一週間あったとしても、ややこしすぎて、固定点のまわりの展開はできないだろうなあ。 それほどの計算。

でも、素晴らしいことに、これはみな MATHEMATICA が、あっさりとやってくれる。 ごちゃごちゃの式に、特定のパラメターを代入すると、ぴたっと簡単になるところとか、対称性から予想される固定点が正しく固定点になっていることの確認とか、それぞれ半日かかる計算がぜんぶ瞬時。 これらは近似的な数値計算じゃなくて、手計算と同じ、正確な数式変形と代入ね。 数値的なところだって、かっこわるいプログラムをわざわざ書く必要もない。 数式処理でだしたくりこみ変換をもとに rgm[] とでもいう写像を定義し、NestList で、これを何回目くりかえして作った点の集まりを構成、そのまま ListPlot をかけてやれば、あっという間にくりこみ群の流れが目に見える。 夢のようだ。

別に理論家としてさぼっているという負い目はない。 (この場合は、やればできることがわかってるんで気楽なんだけど)何をどう計算して、どこをどうねらって、何をどう見るべきか、というあたりは、自分で考えているもんね。 ただ、レポート用紙に書いた式をかけてわってルートとって、値を代入して増減の様子を見て、みたいな超面倒なまさに機械的作業を、ぜんぶ機械に肩代わりしてもらっているわけだ。 (ただし、こうやって、すいすいと MATHEMATICA に命令して計算するためには、実は、似たような計算を自力で紙の上である程度やった経験が必要みたいなんだよね。 要するに、いくら乗り物の性能がよくても、土地勘がないと目的地には行けないどころか、そもそも走れない、みたいな感じか?)


ともかく、こうやって、理論家がめんどうな機械的式変形から解放されつつあるというのは、素晴らしいことだと思う。

機械的計算にとられる時間が激減すれば、いよいよ、理論物理学者は、その本来の仕事 --- 現実の世界、形式化された理論の世界、未だ形をなさない混沌とした理論の影の世界、などなどの間を行き来し、想像力と数学力を駆使して世界の新しい理解の仕方や新しい現象を見いだす --- に専念するようになるにちがいない。 こして、理論物理学のレベルもどんどんと向上していくだろう!

という風に、「現代予測」をしてみたくなるんだけれど、これのはずれ方たるや、高橋先生の「50年後の主な職業」の予測(5/5)のはずれ方よりも、悲惨かもね(計算機が進歩するほどに頭を使う人が減っていく)。 はずれてしまう原因も同根なのかも知れない。


f の一次、V の一次、U の二次のところに、つよい長距離相関の種となりそうな項あり。

↑なんとなく、エルマーが島に侵入したのに気づいた動物(ねずみだっけ?)の報告みたい。 そうやってうかうかしている隙に、エルマーは島の要点にどんどん迫っていたわけだけど。


5/27/2004(木)

Raphael が到着。

今回の訪問は、特別である。 出発の少し前に、彼がパリ大学の助教授 (associate professor) 職のオファーをもらったとの連絡があったから。 共同研究者として、これほどうれしいことはない。 (パリにも行けるしね。) 本人も本当にうれしそうである。

さらに聞いてみると、なんと(十三ある)パリ大学のうちの二つからオファーをもらっていて、どちらか好きな方を選べるという超ぜいたくな話。 どっちもいいなあ、どっちにしようかなあ、と迷っていて、どちらにも行き損なうのだけはやめような、などと軽口を叩くのであった。

しかし、そうやって、まだどちらに行きたいかも決めていない段階なんだから、すべて内々の話だと思って確かめると、なんと、そうじゃないんだって。すべては公開されていて、何一つ秘密にすることはないらしい。 web に書いてもいいよ、というから、書いているのだ。

フランスの大学(国立大学しかないらしいが)の人事というのは、徹底的に情報公開しておこなうことになっているそうだ。 誰が候補で、人事委員会はその人たちにどういう順位をつけたかとかが、完璧に公開される。 (Raphael の場合も、ふたつの大学で一位になったことは、お互いの大学が完全に承知しているということになる。) そうやってオープンにすることで、すでに決まっていた人を、なんかくだらない事情で落とすことにしたりといった、妙な話はなくなる。 あるいは、明らかにインチキくさい人選も、完全に防げるとは言わないけど、それなりにやりにくくなるだろうと思う。

さあて、日本の大学の人事は、そういう情報公開にたえられるのかな?(少なくとも、学習院の物理は絶対に大丈夫。)


Raphael には、長距離相関についての最近の話をしていなかったので、めまぐるしい状況を伝える。

二人で西坂研を訪れ、ブラウン運動や光ピンセットを見せてもらう。 しょっちゅうブラウン運動について議論してきたぼくらだったけど、この目でちゃんと見たのは二人ともはじめてだったのだ。


5/28/2004(金)

昼は Raphael といっしょに栄屋さんへ。

Rphael は学習院に来れば必ず栄屋さんで食べているので、すっかり顔なじみなのだ。 必ず、大のお気に入りの中華そばを注文する。

お勘定のときに、Raphael は九月からパリ大学の先生になるのだと話すと、お店の奥さんもとても喜んで下さった。 ひとしきり話したあと、

「じゃ、体に気をつけてがんばってね。」
と Raphael を送り出してくれた。

いいねえ。

今までパリ大学の準教授になった人で、ここまで粋(いき)な餞(はなむけ)の言葉をもらった人も、ほとんどいないんじゃないかな?


出来のいいスープに満足したあとは、1 / r^d 長距離相関に正面から向き合う二人の姿があった。

信じられている(そして展開から出てくる)長距離相関は、絶対値をとると和が発散するが、そのまま足し挙げると正負の符号がキャンセルしてゼロになる。 それゆえに、非平衡定常状態は Gibbs 状態ではあり得ないが、弱 Gibbs 状態にはなりそうだ。 大ざっぱな話はすでにわかっているので、実際に、証明をにらんだ評価を二人で検討する。 弱 Gibbs 性は確かなようだ。

さて、そうなると問題は、弱 Gibbs 性から出発して、いったいどこまで強い結果(熱力学の存在や変分原理)が導けるかということだ。 われわれの知る限り、これまで弱 Gibbs 性の概念を物理的に多少でも意味のある状況で使った仕事はひとつしかない。 にゃんと、「くりこみ群の病理」に関連する Raphael の博士論文なのだ。

ふぉっふぉっふぉっふぉっ、なんたる適材適所。

とはいえ、Raphael の説明を聞くだに、先は長いし、たいへんだ。

たいへんだけど、おもしろいぞい。


5/29/2004(土)

かつての教え子の T さんの結婚披露宴(T さんは新婦です)。

お似合いのすばらしいカップルだ。 さすが、T さん。 いい人を選んだと心から思う。 (理科大の機械工学周辺で、これを見ている人いらっしゃいますか?  新婚の先生がいらっしゃるでしょ?  彼の奥さんは優秀で素敵な人だから、思いっきりひやかしていいぞ。 俺が許す。)

おめでとうございます。 教員をやっていて本当によかったなと思える時の一つです。


披露宴は、新婦と新郎の個性のでた、すてきな会だった。 (あと、大きな結婚式会場は多いけれど、このホテルだけは、いついっても、決して料理に「はずれ」がない。そちらも満足。)

披露宴は、仲人をたてず、二人の紹介もそれぞれの友人がおこなう、という形式。 (そういうやり方があることを、はじめて知った。) 紹介にもスピーチにも、両家の紹介とかご両親がどういう方か、とか、そういった話はいっさい登場しない。 あくまで、お二人の生い立ちとキャリアを中心に話が進む。

披露宴というのは、上の世代や親戚のためにやるのだ、という見方も一面では正しいので、今日のお二人のやり方が絶対に正しいのだなどというつもりはない。 ただ、今回は、お二人とも十分に大人であり、きちんと考えた末にこういうやり方を選ばれたのだろう。 とてもよい選択だったと思います。 (だいたい、家の歴史や親戚の紹介なんてやりはじめたら、T 家の場合は、日本でも一番めんどうな部類だろうしね。)


5/30/2004(日)

梅雨の前の最後の晴天とのことで、屋上のてすりを全部きれいに拭いて、布団を干す。

ランニングいっちょうで仕事をしていた(って、もちろん、下はズボンはいてますが)ため、肩や首が赤く日焼けして、ランニングシャツの跡がくっきりと。 こういう日焼けを表現する表現は定番のものがあるが、とっさに「ランドセル焼け」という新しい表現を思いついたぞ。 上半身裸になった小学生がランドセルをしょって外で遊び回っている姿が目に浮かんで、ほほえましくないですか?


休日メニューで、お風呂の前の筋トレは、腕立て50回、腹筋50回、背筋50回。

自分で書いたのをみても、まるで嘘のようだ。

嘘のように感じられるのはもっともなことで、50回なんてのはさすがに嘘でした、と進むのが普通の正しい展開なのだが(あ、ナカムラさん、ごぶさたしてます)、本当なんだなあ、こりが。 自分でも、素直にびっくりします。

ええと、筋トレについてもっと膨らませて書く予定だったのだけど、もう遅いし、明日は講義だし、眠くなったし、もう寝ます。 なんか、盛り上がりに欠ける雑感ですみません。 おやすみなさい。

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田崎晴明
学習院大学理学部物理学教室
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