茶色の文字で書いてある部分は、相当に細かい仕事の話なので、ふつうの読者の方は読み飛ばしてください。
宣言通り、昨日で「夏休み」は終了。
というわけで、今日は、しっかりと雑用をしたぞ。
午前中から、長い作文を含む日本語の書類を作成。思いの外早く終わったので、別の日本語の作文。 それも終わって提出先からオッケーも出たので、夜はたまっていたレフェリーレポートを手がける。これも二つ終了。
多分、懸案事項はこれくらいか? これだけ働いたから、少し論文でも読もうかな。
こっちが「夏休み」終了を宣言したのだから、少し涼しくしてくれてもよさそうなものなのに。
(夜になって少し涼しくなりましたね。)
この小説は、『ジュスティーヌ』、『バルタザール』、『マウントオリーヴ』、『クレア』の四部作からなっている。 ま、だから Quartet という題なんだけど。
ぼくは、ゆっくりと読み進んで、『マウントオリーヴ』まで読み終えたところ。
とうぜん、この「先」の展開を知りたいし、四つ目の『クレア』を読み始めたくてうずうずしているわけだけれど、だが、しかし、でも、待て、ここでぐっとガマンして、もう一度、『ジュスティーヌ』、『バルタザール』、『マウントオリーヴ』をじっくりと読み返すと、たぶん、最後に『クレア』を読むときに(このまま読み進めるのに比べて)数倍は豊かで楽しい読書ができるはずだ。 詳しく書くとネタバレっぽいから書かないけど、読んだ人は、きっと同意してくれると思う。
でも、まあ、普通はこういうのってガマンできずに、ついつい読んでいない『クレア』に手をつけてしまうんだけど、多分、ガマンできそうな感じ。偉いぞ、おれ。今、また(実は、この冒頭部を読むのは四回目くらいなんだけど)『ジュスティーヌ』の冒頭部分をゆっくりと読んでいる。素晴らしい。三冊目まで読んでから戻ってくると、最初に読んだときとは本質的に違う味わいだ。へへへへへ。
さらに言えば、この読み返しでは原書の英語で読めれば、なお、うれしい(し、かっちょいい)。
というわけで、実は、手元には英語版の大部のペーパーバックも置いてあって、最初のほうに栞がはさんであるのだった! もちろん、ぼくの(物理、数学、哲学などに激しく限定された)英語力では、これをすらすらと読んで愉しむというわけにはなかなかいかないのが悲しいところ。いや、すみません、かっこつけてウソ書きました。これをモタモタと読んで多少でも愉しむというレベルからもかなり遠いのです。 というわけで、まあ、やっぱり主に読むのは日本語訳で、英語のほうは平行してきわめてゆっくりと読み進めるか、あるいは、気に入ったところを拾い読みするとかいう感じになりそう。 でも、うれしいよね。 プルーストを読むとき、ボルヘスを読むときには、どうあがいたって、フランス語やスペイン語の原書を読める日が(少なくとも今回の人生のあいだには)来ないとあきらめている。 でも、Durrell なら、ちょっとは読めるし、暗唱だってできる。もっと英語がわかるようになれば、英語のほうを読み返して愉しめるようになるかもしれないんだから。 (英語の小説と言えば、Salinger の未発表作が順次出版されるという衝撃のニュースが飛び交っていますね。さて、どうなるのか。)
どわあ。9 月がおわる。
イベントの多い月だった気がする。 9 月ほどではないが、10 月もイベントの多い月になる気がする。 ぎゃんばろう。
日記を書いて昨日を記録する暇があったら明日からのために今日できることを最大限やるべきなんだろうけど、とりあえず二つの旅行のときに撮った写真をはりつけてメモでも書いておこう(他にも色々とあった気がするけど)。
基礎物理学研究所 創立60周年記念シンポジウム
2013 年 9 月 18 日、19 日 パナソニック国際交流ホール
創立60周年記念行事の一部(18 日は益川さんの記念講演もある)の物々しいシンポジウムですが、ぼくも話します。記念討論会にも出ます。いいのかな?
別に「分野を代表して・・」といった気負いはない。 というか、そもそも、そういう精神性とは無縁の人なのである。 それでも、せっかく色々な分野の人に聴いてもらうよいチャンスだ。 かなり前から構想を練り、(今回、新たに書き下ろしの)スライドも前々から準備して、何回も練習をした(念のために書いておくけれど、「練習」というのは、単にスライドを見ながらぶつぶつ言うことではないよ。立って、大きな声を出して、身振り手振りもしながら、ちゃんとプレゼンテーションすることだよ。もちろん、時計も見て、時間配分も練習する)。
幸い、講演には多くの人が来てくれて、ぼくも、ほぼイメージ通りに話すことができたと思う。 色々と質問もでたし、終わった後も、みなさん大変おもしろがってくださった。 よかったよかった。 ここから、さらに広がりが生まれるとうれしいのだけれど、まあ、急ぎすぎてはいけない。
どんな研究会でも、ばんばんと質問・コメントしまくるぼくが、今回は一回も質問しなかったのは、実は、自分でも意外だった(去年の 2012/2/6 の日記 に出てくる Perspectives in Theoretical Physics という物理全分野の会議でも、ばんばん質問してたわけだし)。 でも、なんというのかな、質問するときは「その質問をして、その反応を得ることで、自分が満足するだけでなく、講演を聴いている他の人にとっても有益だ」と確信して質問しているわけで(←もちろん失敗することもあるが、年期が入ってきて、成功率は高くなっている)、今回は、そういう境地に至らなかったということ。 やっぱり、みなさんテーマが広すぎて、そういう上手な突っ込みどころがなかったということなのだと思う(とはいえ、ぼくがお手上げだった宇宙物理のレビューに、福山さんが的確でたいへん意義のある質問をしていたので、さすがだなあと素直に思った)。
KEK の岡田さんの、素粒子実験の現状についてのレビューは、個人的には面白かった。 ヒッグス粒子がみつかったとき、ぼくが勝手に考えていたことが、基本的には正しかったこともよくわかったし。 ついでに、ILC の必要性についても、かなり納得しましたね。
で、最後は、基研の将来のビジョン等々についての討論会。 パネリストとして、遠山(司会、基研)、大栗(IPMU)、上田(東大物性研)、田崎、大野木(阪大)、大西(基研)、佐々木(基研所長)が前に出て、最初は、ぼくらから話し、その後、会場の参加者も交えて議論。
論点はいろいろとあるのでここには書かないけれど、ぼくも含めて、みなさん基研に深く純粋な愛着を持っていて、なんとか将来的にも基研のよさを維持していきたいと真剣に思っているということは痛感した。 理論物理学者の広いコミュニティーの中で、こういう「純粋な愛着」を維持していくことこそが、長期的に見た最大の問題点なのかもしれない。
終わったあとは、早川さんたちとしばらく色々な相談をして、基研を後にする。
疲れてはいたが、やはり川沿いを歩いて帰ることにした。 少し前に記録的な大雨が降ったばかりで、川の水が増えていて、川を渡る飛び石もほとんど水に沈んでしまっている。こんなのはじめてだ。
夕暮れの低く強い陽射しが川の東側の岸をぎらぎらと照らしているが、川の西側は土手で陽がさえぎられて涼しい。
こちら岸の日陰と、対岸のまぶしさのコントラストが素晴らしく美しい。
まず、特筆すべきは、徳島市内での学会なのに、鳴門グランドホテルというところに泊まったということだよな。
いえ、別に観光目的で、遠くに泊まったわけじゃないぞ。 徳島市内の某ホテルを予約し、決済もすんでいた。 それが、旅行の前日の 24 日に、宿泊するはずだったホテルのおじさんから電話がかかってきて、ミスでオーバーブッキングしてしまったから、鳴門に泊まってほしいと連絡が来たのだ。 徳島市内のホテルは、物理学会関係者でパンク状態で、鳴門まで出ていく必要があったというわけだ。 ひどい話だと思うけれど、怒ってどうなるものではないので、仕方なく受け入れたのだった。
25 日の夜、空港からタクシーでホテルに向かったわけだけれど、さっそく運転手さんから「明日は、どちらへ観光ですか?」と聞かれてしまった。普通、聞くよね。
ホテルからの景色はこんな感じ。 左上は着いた翌日の朝で、たぶん、台風の余波でまだ雲が多い。 右は最後の日に撮った写真。 こんな風に、ほとんど何もなくて、海の風景が素晴らしい。 特に、屋上の露天風呂からは、淡路島にかかる橋なんかまでを一望に見渡すことができるのだ。
た だ し、ぼくは、昼間はいない!
ホテルには、寝るために帰るだけ。おまけに、会場のある徳島市とは車で片道 1 時間弱!!
学会に行くため、毎朝、8 時過ぎのシャトルバス(←ミスをしたホテルが責任を持って出してくれるのだ)に乗らなくてはいけないのだ。
それを逃せば、数千円を払ってタクシーで会場に行くしかない!
昼の露天風呂は無理だし、夜に入っても何も見えない(まあ、気持はいい)。
けっきょく、三泊したあいだ、二回、6 時頃におきて、早朝の露天風呂を意地で満喫したのであった。けっこう、根性ある。
徳島は川の多い土地だ。
左は、朝のシャトルバスで鳴門から徳島に移動する間に撮った。いい感じ。 たぶん、河口も遠くない。
右は徳島市内。 大学から歩いて、(本来泊まるはずだった)ホテルに向かう途中。 ヨットが停泊していて、日本じゃないみたいな雰囲気。 こちら方面に泊まるはずだったんだよな・・・
領域11シンポジウムなんとまあ、統計力学の基礎を扱った、しかも、孤立量子系によるアプローチを中心にしたシンポジウムが成立するというのは、さすがに、驚きである(このテーマとぼくの関わりについては、たとえば、2010/3/31 の日記なんかに書いてありますね)。 おまけに、杉浦さんと池田さんはどちらも博士課程の 2 年生という、大胆なプログラムになっている。
主題:孤立量子系の時間発展と熱統計力学の基礎はじめに
京大基研 早川尚男熱統計力学の基礎と量子力学
学習院大理 田崎晴明典型的な量子状態を使った統計力学の基礎付け
大阪市大工 杉田歩熱的な量子純粋状態を用いた統計力学の新たな定式化
東大総文 杉浦祥休憩 (15:15〜15:30)
光格子中の冷却原子実験
京大理 高橋義朗純粋状態の熱力学第二法則
東大理 池田達彦可解量子系の非平衡ダイナミクスと統計力学の基礎
お茶大人間 出口哲生
ぼくは全体のイントロも兼ねて 40 分の時間をもらっていた。基研の講演をベースにしつつ、それでも後半は随分と書き直して、話した。 かなりの時間を、入門的なレビューに割いたのだが、まさに、基研や学会での講演の準備を進めている真っ最中に、原が新しい定理の証明を(ほぼ)完成させてしまったので、最後には最新の「ほぼ定理」まで紹介した。 こういうのは、学会講演のいいところだと個人的には思っている。 他の人たちの話からも、色々と学ぶところがあり,個人的にも有益だった。
シンポジウムは、大きな教室がほぼ一杯になり、立ち見まで出るほどの大盛況だった。 みなさん、熱心に聴いてくれていたし、主催者側の判断だけど、成功だったと言っていいと思う。
みなさま、どうも、ありがとうございました。
だんだん疲れてきたから簡単に。
28 日の午後には、またしてもバスに揺られて、神山温泉というところに移動。 ここで、久保健さんの退職を記念して、物性理論研究会というのが開かれたのだ。
ぼくは、今年の前半に二つの論文が出た f=1 boson 系の話をした。 考えたら、これを学会に出して、領域 1 で発表すればよかったのに、すっかり忘れてしまった。
研究会には、久保健さんの人徳を反映して、魅力的な人たちが集まっていた。 ちょっと講演が多すぎて議論の時間(そして、入浴の時間!!)が足りなかったのが辛かったが、普段、聴かない話を色々と聴けて、(お世辞抜きで)勉強になってとても楽しかった。 帰りのバスまで、次々と人をつかまえては、知りたいことを片っ端から質問し続けて、多体交換系やらトポロジカル秩序やら弾性体の摩擦やらについての耳学問を一気に更新したぞ。 久保さんから、Kubo-Kishi の仕事の背景なんかも聞けたのも、たいへん有益。
しかし、まあ、宿のトラブルもあり、たいへん、疲れる徳島出張だった。
それを、橋の上から拡大して撮ったのが、この左の写真だ。
なあんだ、不思議な「生き物」と思ったものの正体は、・・・・、ええと、・・・・、ええと、・・・