東アジア比較私法学 プログラム
招聘研究者

Tahir Musa Luthfi Yazid

教育歴
2001-2003University of Warwick, United Kingdom (LL.M)
2001-2002Open Studies, Coventry, United Kingdom
1987-1993Universitas Gadjah Mada, Fakultas Hukum (SH)
1987-1989IAIN Sunan Kalijaga, Yogyakarta
職歴
- 2008A member of Selection Committee of the Constitutional court fit and proper test (from the Council of Presidential Advisor)
2006-2009A member of Working Group for revising the Supreme Court Regulation at the Supreme Court of the Republic of Indonesia
Lecturer at Faculty of Law & Economics, for some Universities in Jakarta
April 2005 - PresentManaging Partner of Luthfi Yazid & Partners Law Firm
December 2003 - April 2005Managing Partner of John & Luthfi Law Firm
2001 Maret 2003Founder and Partner at Yusril Ihza Mahendra & Partners
Lawyer at Warens & Achyar Law Firm
Lawyer at Indonesian Center for Environmental Law (ICEL);Assistant to Dr (jur) Adnan Buyung Nasution.

研究テーマ
日本における紛争解決としての「和解」のメカニズム

この研究は、もともと日本で発達した紛争解決システムで、
インドネシアでも導入されつつある「和解」のシステムをより深く研究し、
インドネシアにおいてより発展させることを目的としている。
インドネシアにおいては、JICAの協力によって2008年より
メディエーション(調停)システムに日本の「和解」のシステムが導入されている。

現時点では、「和解」のシステムが効率的に運用されているかどうかを
見極めるのは時期尚早であるが、今回の研究により、
将来的に「和解」のシステムを改良する提案や教訓を導き出せればよいと思っている。

少なくとも、「和解」のシステムは
インドネシアにおける紛争解決方法として根付くことができるといえる。

国際的な経験からいえば、発展途上国においては法の力が弱く、
効率的な紛争解決システムが必要とされている。

そこで我々は、日本のように、「和解」のシステムが裁判のシステムと
統合されて発展することを希望している。

それだけでなく、
「和解」システムが最も重要な紛争解決手段になることも期待している。

中長期的な効果として、「和解」システムは、
国際的なビジネスや投資分野において日本とインドネシア間の信用を構築し、
貿易や投資関係の強化につながることが考えられる。
全体の目的としては、日本において「和解」というシステムが
効率的に運用されていることを証明することである。
本研究によって書籍を出版し、インドネシアに「和解」システムを
導入したメディエーションシステム(最高裁判所規則2008年第1号)
の改良を提案するつもりでいる。
インドネシアにおいては、長年、未処理の訴訟事件が
非常に多いことへの批判があった。
そこでこれを減らす努力がなされたが、まだ十分とはいえず、問題となっている。

そこで特にビジネス界からの強い要望を受けて、
インドネシアにおいてもシンプルでコストの低い紛争解決システムが求められ、
1999年に法律第30号(Law No.30) が制定された。
さらに、最高裁判所規則2008年1号(Supreme Court Regulation no1 year 2008) も制定された。

この未済事件を減らし、
裁判所の能力アップを狙ったPerma(Peraturan Mahkamah Agung)(最高裁規則)は
JICAの援助の下で進められた。

最高裁判所規則2008年第1号は、未済事件処理の努力の一部として、
実験として価値あるものである。

いく人かのオブザーバーたちは、インドネシアにおいては特に、
紛争当事者が責任を持つ紛争解決のシステムが適合していると信じている。

その理由として、紛争解決における決定は、
勝者・敗者、どちらの側の面目も立つように配慮されており、
そのためインドネシアのmusyawarah(全員一致)の概念に近いことがある。

また、裁判所の判決はめったに公平中立とは認められず、
しばしば買収されたに違いないという疑惑に直面するが、決定権を持たないメディエーターは、
買収される動機を持たないことも理由である。

HIR(Herziene Rechtsreglment Buitengewesten, インドネシアの民事訴訟法)第130条に定める
現在の裁判手続きでは、裁判官は、裁判の手続きに入る前に、
当事者間で円満な合意をするための機会を与えるよう規定されている。

しかし、長年、実際に適用された例はほとんどない。
そのため、メディエーションシステムを促進するために最高裁判所規則2008年1号が制定された。

この規則の下では、メディエーター(裁判官のメディエーターないし裁判官でないメディエーター)は
訴訟手続きを進める前に、紛争を解決しようとしなければならない。

しかし、メディエーションのプロセスや技術の知識が不足しているために、
この規則は効率的に運用されてはいない。
多面的な効果
インドネシアは仲裁、交渉、メディエーションといった裁判以外の紛争解決(ADR)の
必要性については認識している。インドネシアはアジア文化圏にあるが、
ADRといったシステムは比較的新手の分野である。
インドネシアの法的なメディエーションシステムの枠組みの中では、
HIR130条及びPerma2009年第1号が今後の発展の基礎となる。
中長期的な効果
メディエーションシステムの有効性が司法のシステムの内外に認識されるようになるにつれて、
メディエーションを利用する例も増える。
最高裁判所も、メディエーションの規定を盛り込んだ新民事訴訟法を国会に提案することにより、
さらにメディエーションシステムを強化しようとしている。