「東アジア環境史・民族史・社会史」
研究教育プログラム

David John BROPHY

「東アジア環境史・民族史・社会史」
研究教育プログラム
招聘研究者

2001年メルボルン大学卒業(中国語・哲学)
2005年ハーバード大学大学院修士課程修了(地域研究・東アジア)
現在ハーバード大学博士候補生


研究テーマ
「清代新疆におけるイスラームと政治
:写本史料の歴史学的分析を中心に」



18世紀中葉、中国


清王朝は中央アジア東半(東トルキスタン)を征服し、
現地のトルコ系のイスラーム教徒を統治下に置いた。


この地域は、のちに「新疆(=新たな領域)」
と呼ばれるようになり、
それは現代中国の最西部を構成する
新疆ウイグル自治区へと受け継がれる。


清朝統治下の新疆社会における
一つの文化的特徴として、
特に19世紀中葉以降、
現地ムスリムの手によって、
ペルシア語・チャガタイ語(アラビア文字テュルク語)
を用いた歴史叙述が生み出されたことが挙げられる。



それらは世界各国の研究機関に分散して所蔵されているが、
「写本」という性格上、
同名の史料でも内容・構成に大きな相違がある。


これまでの研究は、
各ヴァージョンの比較検討や校訂テキストの作成
という文献学的な分析が主流を占めてきた。


今後は、それを基礎としつつ、
写本史料に歴史学的な分析を加え、
当該時期の現地社会における
政治・社会構造や、執筆者(あるいはコピースト)の思想的背景
に踏み込んでいくことが求められる。


そこで私は、

「異教徒」たる清朝政権と結びつく現地支配者層が、
現地イスラーム社会のなかで
どのような位相で描かれるのか。

また彼ら現地支配者層がイスラームと
どのように向かい合っていたのか。

このような課題を設定し、
これをペルシア語・チャガタイ語写本史料の
歴史学的研究の第一歩としたい。


現在私は欧米・中央アジア各国の研究機関に
赴いて写本史料の収集・読解・分析を行っており、
上記課題に取り組むための基礎的な作業を進めている。


これに加えて、
日本の研究機関に所蔵される写本史料の調査を行い、
また当該分野で世界をリードする日本人研究者と
交流することによって、
相互の情報交換と自己の研究の充実を図りたい。


そして、その成果を反映させた学術論文を執筆し、
かつ博士論文を完成させたいと考えている。



以上