「東アジア言語研究・言語教育」研究教育プログラム

熊 鶯(XIONG YING)

「東アジア言語研究・言語教育」研究教育プログラム・招聘研究者

1997年南昌大学外国語学部日本語学科卒業
2004年埼玉大学大学院文化科学研究科修士課程
日本アジア研究専攻修了
2008年学習院大学大学院人文科学研究科
博士後期課程日本語日本文学専攻修了
博士(日本語日本文学)学位取得
2008〜現在北京郵電大学外国語学部日本語学科講師


研究テーマ
「無生物主語他動詞文に関する日中対照研究」




無生物主語他動詞文


それは主語が無生物で、
動詞が他動詞
の文のことである。


これは日本語と中国語で異なる部分がある。


例を挙げよう。


@ カーテンが 太陽の光を 遮った。

A 風が ドアを 開けた。


@が情景を描写する文として違和感なく成立するのに対し、

Aは比喩的な表現として文学作品に用いられることはあっても、
日常生活においてはやや不自然な文に思われる。


しかし、

これらの文は中国語ではどちらも成立し、
会話文でも日常的に用いられる。



中国人日本語学習者が日本語を使用する際の誤用例として、
このような表現の相違に起因するものがある。


Aのみならず、Bのような
日本語では明らかに不自然な文も観察される。


B カッターが 手を 切った。


(1)〜(3)に対応する中国語の表現では、
いずれも無生物名詞である「カーテン」「風」「カッター」が
他動詞文の主語となりうる。


したがって、
学習者の母語の干渉が
こういった誤用を招いていると考えられる。


本研究では、
両言語の無生物主語他動詞文の特徴を考察し、
両者の相違を探りたい。


方法に関しては、

日本語の文学作品とその中国語訳本、
および
中国語の文学作品とその日本語訳本から、


無生物主語他動詞文の用例を収集する。


そのうえで、
両言語の間にどのような違いが見られるか考察したい。


収集した用例には自然な文と、
不自然に思われる文が混在していると思われるため、
アンケート調査を実施して分類を試みたい。


本研究により、
両言語の「主語」のとらえ方に関する本質的な相違点が
明らかになるだろう。


また、
中国語を学ぶ日本人、
日本語を学ぶ中国人の
言語習得にも貢献すると考える。


以上